【R18】夫には想い人がいるので

mokumoku

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「――――というわけだ」
「え?」フロティナはバルカンの話を聞いて、不思議な気持ちだけがただただ残った。
そんな記憶はなかったからだ。

「私はフロティナです……生まれてからずっと……あら……?」
「俺にもそれは分からん、でも間違いなくお前の背中にある鱗はおれがヴェルティナにつけたものだ」

戸惑うフロティナをなだめる様にバルカンはその背を抱く。

「……じゃ、じゃあ!この女性はなんですか?」
フロティナはバルカンから離れると、この診療所にいた女性を手で指し示して尋ねた。
この女性とはどんな関係なのだ。女性が肩をびくつかせている。

(怪しい!)
「……ははは、あーそれは……」

バルカンが非常に言いにくそうにしているのを見て、フロティナは記録機の動画を見せることにした。「なんだなんだ?」バルカンは呑気にそれに顔を寄せ、どさくさに紛れてフロティナの肩を抱いている。

(呑気にしているのも今のうちですよ!)
「バルカン様……あなたはこれから地獄に落ちますよ」

フロティナはそんな様子が非常に腹立たしかったのでじっとりとした視線を送る。
「おい!恐ろしいことを言うな!」

バルカンはこれから見せられる映像のことも知らずにいつもの調子で言った。「ふふふ……いーち、にー……」「ははは、どうした?アンガーマネジメントか?」



動画を見終えたバルカンはガックリと肩を落とした。
(もう言い逃れはできないわ)フロティナはポロポロ涙を流しながら「バ」ルカン様、と言う前に女性が「ど……どうか!罰するのは私だけにしてくださいませ!」と額を地面につける。
フロティナの頰に手を付けて涙を拭うバルカンは、それを聞いてギョッとしたような顔をした。
「……な、なぜだ?お主を罰するはずがなかろう!待てフロティナ!彼女は貧血でよろめいただけだ!」
バルカンは慌てた様子でその場で土下座をすると「す……すまんティナ!俺はお前が鱗を痛がるので脱鱗しようとしておったのだ!」と顔を真っ赤にしながら言った。

「「え?」」

「……なんとも男らしくない悩みだと……すまん、軟弱な……この町医者がここで唯一の人間医師なもんでな……相談しに来たのだ。こんなことで悩んでいるのが恥ずかしく……王宮医師には言えんかったのだ……」

バルカンは顔を真っ赤にしてそう言った。
「……え?そんな……この女性はあなたの想い人ではないのですか?幼なじみでは……」
「……?なに?俺は竜だ。お前しか番はおらん。彼女はもと生贄だ、幼なじみのわけなかろう」

バルカンは立ち上がるとフロティナを抱き寄せた。
バルカンがとても嘘をついているようには見えなくてフロティナは……目を丸くする。

「申し訳ございません……私が、私が全て悪いのでございます」町医者がそう言うと、傍に駆け寄る子を抱きながら顔を上げた。
「どういうことだ」
「私は……生贄としてこちらにやってまいりましたが……同時にこの子を身籠っておりました。その時に出産いたしましたが……竜国の力か成長が遅く、息子は今年15の年でございます」町医者がポツリポツリと話す。

彼女は一度、子どもを連れて人間界に戻ったが……その子の父親は既に他の女性と結婚していたようだ。


途方に暮れた女性は一人の男に声を掛けられた。
「どうしたんですか?」と。
その男はニカっと人好きのする笑顔を見せて、女性を見ると「おや?あなたはどこかで見たことがあるなあ」と顔を寄せた。

「私の子どもには生まれつき病気がありまして……その薬を人間界から安全に送る代わりに条件を結びました」その男は彼女の子どもを一目見て病気を言い当てると「生贄がここに来るのは…………よく思わない人もいるでしょうなあ」と顎に手をやって言った。

「……はい、それはもう」女性は生贄が生きて帰ってくるのは縁起が悪いとされていることも知識として知っていたので俯く。

あちらの世界でも薬はある。
が――――人間の薬はやはり人間が作るものが一番だ。

「私の会社の益になってくれるならば――協力いたしましょう」男はそう言ってニカっと笑った。


「私は駒になりました……」
女性はそう言って涙を流すと俯いた。
子どもは意味がよくわかっていないのか「ママ?」と不安げに指をしゃぶっている。
バルカンは「……つまりどういうことだ?お前……まさか妻になにかしたのか?」と訝し気に呟く。


今にも女性を罰してしまいそうな雰囲気を感じたフロティナは「何も……私には何もしていません、彼女は」と言った。
そして先ほどの動画を手のひらにのせて「私が勘違いをしただけです」とニッコリ笑う。

バルカンは「……本当か?」と訝し気に眉を寄せたけれどフロティナはニッコリ笑って「はい」と返事をした。「……でも、少しお話の中で気になる所があったのでこちらの女性には複数聞きたいことがあります」

フロティナはそう言って笑うとバルカンを見た。
女性はそのフロティナの様子を見て……ワッと顔を覆って泣き出してしまった。

「私は人間界から薬を手に入れるなんて容易いわ。だって王妃ですから……あなたは今後私への忠誠を誓ってくれますね?」
「……な、なんなりと……王妃様」

フロティナは涙声でそう答える女性に満足そうな笑顔を向ける。
「ただ……私、気になったことは最後まで知りたいの。協力してくれる?私はフロティナ・ドラゴンイエーガーです。あなたは?」
「私はセリナ……セリナ・マーセリンでございます」

女性はそう言うと、床に片膝をつき胸に手を当てた。王族に忠誠を誓うポーズである。

「一見不思議なことも…………知ってしまえば大したことがないものです。それに知らなければなかったも当然、一方知ってしまえば気になってしまいますよね。セリナ様、これからお世話になることも多いでしょう。なんせあなたはここで唯一の人間医師ですもの」


フロティナはニッコリ笑った。
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