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第二章 ナミディアの領主

2-28 告白

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「だからー、僕は元々この世界の人間じゃないって言ったんですよ」

「お前、マジで言ってんのか?」

 イザークは目を思いっきり見開いて驚いている。
 当惑していると言った方が良いかも知れない。

「大マジです」

「この世界にそんな存在がいたなんて誰が信じられるよ……」

「本当ですよ。神様にも会いましたし」

「創造神ソリスに会ったのかッ!?」

 イザークは西方の出身だと聞いていたが、そこで祀っているのも同じ神様なのかな?とレヴィンは疑問を感じる。

「いや、名前までは聞いてないんですけど、色々話はしましたね」

「どんな話をしたんだ?」

「転生するのに、種族と職業クラスと身分をどうするか聞かれました」

 あの説明不足で言葉足らずの神様の顔が頭に浮かぶ。

「転生? じゃあ異世界から生まれ変わってこちらの世界に来たという事か?」

「その通りです。ですから向こうにいた時の記憶もありますよ。ちなみに向こうでは二十四歳でした」

「……それでか。どうしてもお前が十二歳に見えなかった訳は」

「え? 見えませんか?」

「子供にしては何事にも動じないし、達観している面があると思っていた」

「そうなのか……気をつけないと……」

 流石に目立つのは避けたいレヴィンである。

「それで前から疑問だったんだが、無職ニートって何だ?」

無職ニートは僕の固有職業こゆうクラスですね。僕だけがなれる最強の職業クラスです」

固有職業こゆうクラスなんてものがあるのか……」

「多分ですけど、僕の他にもいるみたいですよ。異世界人」

「そうか……お前の黒髪も異世界人に関係しているのか?」

「そこまでは知りませんけど、黒髪って珍しいんですか?」

「多分そうなんじゃねーかな。少なくとも西方では見た事はなかったぜ?」

 もしかして転生者は皆、黒髪なのかなと考える。
 劇場で出会った、ローサも黒髪である。
 黒髪には特に警戒しようと心に決めるレヴィンなのであった。

「ちなみにどの職業クラスにでもなれるのか?」

「そこら辺は皆さんと同じかと。条件を満たさないとなれる職業クラスは増えていきませんね。それに他の固有職業こゆうクラスには、なれないでしょうね。あったらですけど」

「ふーん。じゃあレヴィンは職業クラスについてかなり詳しいんだな?」

「そうですね。一般人よりは詳しいかと思います」

 お前の言う一般人ってどんなヤツだよと思いながらイザークは尋ねる。

「じゃあ、死霊術士ネクロマンサーって職業クラスはあるか?」

「えーと、どうだっけな」

(ヘルプ君起動。職業クラス一覧)

「あーありますね。解放条件は暗黒騎士Lv5、召喚士Lv5、錬金術師Lv5です」

「そこまで解るのか……。能力は解るか?」

 何故か突然神妙な顔になるイザーク。

「『喚び戻す』と、『アン「喚び戻す」って何をだッ!?」

 喰い気味に話すが、表情は真剣そのものだ。

「死者の魂を喚び戻せるそうです」

「そうか……喚び戻すか……」

 気のせいか顔が喜色に染まっているように見える。
 しばらくして我に返ったのか、少し慌てて謝り出した。

「あッ! 俺ばかり聞きすぎてすまなかったな。俺の事もよかったら答えるぜ?」

 そう言われても急に質問が浮かばない。

「えーと、そうだな。んー。そうですね」

「俺に興味はないのか、お前は」

 イザークは悲しそうに突っ込む

「レヴィンの事ばかり聞いちまったからな。俺の事を話すよ」

「僕の言う事を信じるんですか?」

「あ? 信じるさ。お前には何か不思議なものを感じる」

 こんな与太話のようなものを信じてくれると言うのだ。
 レヴィンは嬉しさを隠せなかった。
 そんな彼とは関係なしに語り出すイザーク。

「俺とイーリスはシルボウス王国の出身だ。イーリスは王族、俺はそれに仕える貴族だ」

「そんな大層な身分でどうして冒険者なんかに?」

「王国で動乱が起こってな。俺達は追われるように、国を脱出したって訳だ。それで生きていくためには冒険者ってな」

「なるほど。何か目的はあるんですか?」

「いや、特にないな」

 あるとすれば、死霊術士ネクロマンサーに関する事なんだろうなとレヴィンは予想する。

 その後も、浮かばない疑問を何とか絞り出しながらレヴィンの旅路は続く。
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