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14話
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「はぁぁぁぁぁ、疲れたぁぁぁ……」
「お疲れ様です。シェリル様。こちらをどうぞ」
「ありがとうリリカ」
ライトハルト殿下とのお見合いを終え、工房へ戻った私にリリカがお茶を淹れてくれた。
始まるまではこれ以上ないってくらい緊張していたけど、実際に殿下とお会いしてみると気さくで心優しそうな方だったお陰でその緊張もある程度は和らげることができた。
話も盛り上がり、思っていた以上にお互いに楽しい時間を過ごせたとは思うけれど、それでもやっぱり終わった後は一気に疲れが押し寄せてきてしまった。
手に取ったカップを口元で傾けると、ハーブ特有の香りが鼻腔をくすぐり、喉から胃袋へじんわりと熱が伝わっていくのを感じる。
そしてもう一度大きく息を吐き出すと、頭の中がクリアになり、胸のざわめきも落ち着きを見せた。
「シェリル様。その、いかがでしたか? お見合いの方は」
「うん。多分だけど結構上手く行ったんじゃないかなって思うよ。具体的にはね――」
そう言って私は今日のことを思い返しながら、リリカに語り掛ける。
4つ年下の王子、ライトハルト殿下。
金髪碧眼の少年。
まるで物語の世界に出てくるイケメン王子様――をやや若返らせたかのような、若干幼さを残す彼は、なんというか、いい意味で王族の豪華な服があまりに会っていないような気がした。
この国で最も強い権力を持つ一族。
それが王族であり、ライトハルト殿下と私には埋めようのない身分差がある。
にも拘らず、彼は常に下手に出てくるどころか、彼は私の研究に対して憧れを抱いていたらしく、私に尊敬の眼差しを向けてくるくらいだった。
私も自分の魔導の研究の話になるとついつい盛り上がってしまい、殿下が知らないであろう専門的な話にも少し踏み込んだりしてしまったけど、殿下は興味を失うことなく私の話を真剣に聞き、自らの想いも積極的に語ってくれた。
分かったことは、私と彼の好きなこと――そして目指している方向は同じであるという事。
私の夢は、魔導具でこの国のさらなる発展に貢献すること。
殿下の夢は、偉大なる魔導王の子として、皆に認められる立派な成果を挙げること。
違いは殿下の夢にはまだ具体的な道が決まっていないこと、だろうか。
そのことについて殿下は真剣に思い悩んでいると、彼は正直に私に言った。
その姿は紛れもない本物。彼はまっすぐだ。
私はそう感じた。
ナディア王女に嵌められ、ユーリスに裏切られ、半ば人間不信に片足を突っ込んでいた私でも、彼の言葉に嘘はないと確信できるほどに。
だから私は彼に近づいてみることにした。
今の段階で、私がライトハルト殿下に抱いている感情が恋心ではないのは確かだ。
つい先日まで一人の男を慕っていた私が、すぐに別の男性を本気で好きになるのは難しい。
でも、私は彼に“興味”を抱いた。
もし今回のお見合いで相手がただの政略結婚と言う気持ちで来ていたら、私はいくら尊敬する陛下の子息だとしても拒否していたかもしれない。
でも彼なら――ライトハルト殿下なら。
もう一歩先に踏み込んでみようと、そう思った。
「だから今度、殿下をこの工房にお招きしてみようと思うんだ」
私は笑顔でリリカにそう告げた。
「お疲れ様です。シェリル様。こちらをどうぞ」
「ありがとうリリカ」
ライトハルト殿下とのお見合いを終え、工房へ戻った私にリリカがお茶を淹れてくれた。
始まるまではこれ以上ないってくらい緊張していたけど、実際に殿下とお会いしてみると気さくで心優しそうな方だったお陰でその緊張もある程度は和らげることができた。
話も盛り上がり、思っていた以上にお互いに楽しい時間を過ごせたとは思うけれど、それでもやっぱり終わった後は一気に疲れが押し寄せてきてしまった。
手に取ったカップを口元で傾けると、ハーブ特有の香りが鼻腔をくすぐり、喉から胃袋へじんわりと熱が伝わっていくのを感じる。
そしてもう一度大きく息を吐き出すと、頭の中がクリアになり、胸のざわめきも落ち着きを見せた。
「シェリル様。その、いかがでしたか? お見合いの方は」
「うん。多分だけど結構上手く行ったんじゃないかなって思うよ。具体的にはね――」
そう言って私は今日のことを思い返しながら、リリカに語り掛ける。
4つ年下の王子、ライトハルト殿下。
金髪碧眼の少年。
まるで物語の世界に出てくるイケメン王子様――をやや若返らせたかのような、若干幼さを残す彼は、なんというか、いい意味で王族の豪華な服があまりに会っていないような気がした。
この国で最も強い権力を持つ一族。
それが王族であり、ライトハルト殿下と私には埋めようのない身分差がある。
にも拘らず、彼は常に下手に出てくるどころか、彼は私の研究に対して憧れを抱いていたらしく、私に尊敬の眼差しを向けてくるくらいだった。
私も自分の魔導の研究の話になるとついつい盛り上がってしまい、殿下が知らないであろう専門的な話にも少し踏み込んだりしてしまったけど、殿下は興味を失うことなく私の話を真剣に聞き、自らの想いも積極的に語ってくれた。
分かったことは、私と彼の好きなこと――そして目指している方向は同じであるという事。
私の夢は、魔導具でこの国のさらなる発展に貢献すること。
殿下の夢は、偉大なる魔導王の子として、皆に認められる立派な成果を挙げること。
違いは殿下の夢にはまだ具体的な道が決まっていないこと、だろうか。
そのことについて殿下は真剣に思い悩んでいると、彼は正直に私に言った。
その姿は紛れもない本物。彼はまっすぐだ。
私はそう感じた。
ナディア王女に嵌められ、ユーリスに裏切られ、半ば人間不信に片足を突っ込んでいた私でも、彼の言葉に嘘はないと確信できるほどに。
だから私は彼に近づいてみることにした。
今の段階で、私がライトハルト殿下に抱いている感情が恋心ではないのは確かだ。
つい先日まで一人の男を慕っていた私が、すぐに別の男性を本気で好きになるのは難しい。
でも、私は彼に“興味”を抱いた。
もし今回のお見合いで相手がただの政略結婚と言う気持ちで来ていたら、私はいくら尊敬する陛下の子息だとしても拒否していたかもしれない。
でも彼なら――ライトハルト殿下なら。
もう一歩先に踏み込んでみようと、そう思った。
「だから今度、殿下をこの工房にお招きしてみようと思うんだ」
私は笑顔でリリカにそう告げた。
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