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15話
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あれからしばらくの時が経ち、ついにライトハルト殿下を私の工房にお招きする日となった。
私の工房は王立魔導研究所の敷地内にあり、基本的に関係者以外は立ち入ることができない。
例え王族貴族であっても予め申告し許可を得なければいけないので、私はこの日のために事前に許可申請を済ませておいた。
そして今朝、研究所の入り口まで来ていた殿下と合流し、私の工房へと案内した。
「おおお、ここがシェリルさんの……」
「はい。ここが私に与えられた工房です。ようこそライトハルト殿下」
自分でいうのもなんだが、私の工房は他の人のそれと比べても1ランク上だ。
そもそも一般の研究者に与えられるのは工房ではなく建物の中の一室。
つまりは研究室だ。
その中でもより優れた研究者は、もはや家と呼んでも良い大きさの建物――工房が与えられる。
必要な設備や器具もすべて研究所から与えられ、基本的にはひたすらそこに籠って己の研究を続けることになるのだ。
そして私に与えられた工房はと言うと、
「凄い立派な建物ですね」
「あはは、私には少々広すぎますがね……さあ、ご遠慮なく中に入ってください」
やや小さめだが、屋敷とも呼べるレベルの庭付きの三階建て。
しかもプールや小さな畑までついている超豪華仕様の別荘――もとい工房だ。
ちなみにプールも畑も私の魔導具で作った特別製で、畑はリリカが家庭菜園に使っている。
もちろんそれらだけではなく、この工房には私が作り出したあらゆる魔導具の試作品が配置されている。
いつかきっと、この家にある設備がどの家庭でも当たり前の光景になるようにするのが私の夢だ。(まあプールとかはやりすぎかもしれないけど……)
だからそういう意味でもこの工房は私の夢の家そのものと言える。
そんな話はさておき、玄関の扉を開けると、そこにはいつものメイド服に身を包んだリリカが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませシェリル様。そしてようこそいらっしゃいました、ライトハルト第四王子殿下」
「ただいまリリカ。お出迎えありがとう! さあ殿下、どうぞ上がってください」
「はい! 歓迎いただきありがとうございます。では、失礼します」
工房へと上がった私たちは、早速この建物の中を歩くことに。
これは殿下の希望で、一息つく前に工房を見て回りたいとの事だったので、そのまま休憩することなく移動している。
ちなみに私の工房は一階が客間と調理場、洗濯場などの生活スペース。二階が客室を含めたこの工房で働いている人たちの部屋。そして三階が私の研究室と寝室で構成されている。
本当は地下にもいろいろあるのだが、それは今回は触れなくていいかな。
先ほども言った通り、この屋敷には私が作った試作品が至る所に点在しているので、その一つ一つを説明するたびに殿下は目を輝かせながら聞き入ってくれた。
「本当に凄いですね……この照明や調理器具もどれも全て誰でも扱えるように設計されている。これが普及すればだれもが魔法の力の恩恵に与れるという訳ですね」
「ええ。実はさっき出迎えてくれたリリカも魔法が一切使えない子なんですが、彼女でもこの工房にある魔導具は全て扱えるようになっています」
「まさに夢のような魔導具ですね!」
「……ですが、この魔導具は今、最大の問題が解決できていません」
「問題?」
「ええ。それは一番シンプルで、そして解決しがたい問題です」
そう言いながら私は近くにあった筒状の魔導具を手に取った。
「この魔導具に使われている精霊炉。複雑すぎて私にしか作れないんです」
ボタンを押し、魔導具の先端に光が灯る。
これは暗い夜道でも前方を照らしてくれる魔導具。
もちろん、専用のエネルギー源である精霊炉が組み込まれているので誰でも扱うことができる。
ただしその根本となるエネルギー源は私にしか作れない。
だからこそ、今日まで私が開発した魔導具は一般的に広めることが出来ていないのだ。
私の工房は王立魔導研究所の敷地内にあり、基本的に関係者以外は立ち入ることができない。
例え王族貴族であっても予め申告し許可を得なければいけないので、私はこの日のために事前に許可申請を済ませておいた。
そして今朝、研究所の入り口まで来ていた殿下と合流し、私の工房へと案内した。
「おおお、ここがシェリルさんの……」
「はい。ここが私に与えられた工房です。ようこそライトハルト殿下」
自分でいうのもなんだが、私の工房は他の人のそれと比べても1ランク上だ。
そもそも一般の研究者に与えられるのは工房ではなく建物の中の一室。
つまりは研究室だ。
その中でもより優れた研究者は、もはや家と呼んでも良い大きさの建物――工房が与えられる。
必要な設備や器具もすべて研究所から与えられ、基本的にはひたすらそこに籠って己の研究を続けることになるのだ。
そして私に与えられた工房はと言うと、
「凄い立派な建物ですね」
「あはは、私には少々広すぎますがね……さあ、ご遠慮なく中に入ってください」
やや小さめだが、屋敷とも呼べるレベルの庭付きの三階建て。
しかもプールや小さな畑までついている超豪華仕様の別荘――もとい工房だ。
ちなみにプールも畑も私の魔導具で作った特別製で、畑はリリカが家庭菜園に使っている。
もちろんそれらだけではなく、この工房には私が作り出したあらゆる魔導具の試作品が配置されている。
いつかきっと、この家にある設備がどの家庭でも当たり前の光景になるようにするのが私の夢だ。(まあプールとかはやりすぎかもしれないけど……)
だからそういう意味でもこの工房は私の夢の家そのものと言える。
そんな話はさておき、玄関の扉を開けると、そこにはいつものメイド服に身を包んだリリカが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませシェリル様。そしてようこそいらっしゃいました、ライトハルト第四王子殿下」
「ただいまリリカ。お出迎えありがとう! さあ殿下、どうぞ上がってください」
「はい! 歓迎いただきありがとうございます。では、失礼します」
工房へと上がった私たちは、早速この建物の中を歩くことに。
これは殿下の希望で、一息つく前に工房を見て回りたいとの事だったので、そのまま休憩することなく移動している。
ちなみに私の工房は一階が客間と調理場、洗濯場などの生活スペース。二階が客室を含めたこの工房で働いている人たちの部屋。そして三階が私の研究室と寝室で構成されている。
本当は地下にもいろいろあるのだが、それは今回は触れなくていいかな。
先ほども言った通り、この屋敷には私が作った試作品が至る所に点在しているので、その一つ一つを説明するたびに殿下は目を輝かせながら聞き入ってくれた。
「本当に凄いですね……この照明や調理器具もどれも全て誰でも扱えるように設計されている。これが普及すればだれもが魔法の力の恩恵に与れるという訳ですね」
「ええ。実はさっき出迎えてくれたリリカも魔法が一切使えない子なんですが、彼女でもこの工房にある魔導具は全て扱えるようになっています」
「まさに夢のような魔導具ですね!」
「……ですが、この魔導具は今、最大の問題が解決できていません」
「問題?」
「ええ。それは一番シンプルで、そして解決しがたい問題です」
そう言いながら私は近くにあった筒状の魔導具を手に取った。
「この魔導具に使われている精霊炉。複雑すぎて私にしか作れないんです」
ボタンを押し、魔導具の先端に光が灯る。
これは暗い夜道でも前方を照らしてくれる魔導具。
もちろん、専用のエネルギー源である精霊炉が組み込まれているので誰でも扱うことができる。
ただしその根本となるエネルギー源は私にしか作れない。
だからこそ、今日まで私が開発した魔導具は一般的に広めることが出来ていないのだ。
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