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第一章 皇帝の弟
二話
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「はぁ?こんな事もできないわけ?」
ため息をついて、鋭い目つきで人を見下すような言葉を発していた。
いつものことだ。義両親達がきて全てが変わった。私は当主なんかじゃない、ただの召使いだ。
「残念ながら、優秀に生まれなかったもので」
一礼をしてにっこりと微笑む。その裏ではとてつもなく嫌悪感しかうまれない。
嫌で、辛くて、仮面が取れなくなってしまった。
「は……っ!無愛想にもほどがあるわ。嫁の貰い手なんてないでしょうね。太った中年男性と結婚させようかしら」
「それを望むのなら」
「………それじゃあ、今日から三日間ご飯は無しよ?弟の分も、ね」
にっと自虐的に笑っていた。この笑みは駄目だ、本当にやる気だ。
私ならご飯抜きは我慢できる。けれど、ライにはしっかりと食べさせないといけない。
私は少し表情を崩し焦りながらも許しをこうた。
「待ってください…!ライの分はしっかり用意させてもらう約束でしょう!あの子は育ち盛りなんです!」
「約束なんてものを信じていたの?やっぱ、馬鹿でただの出来損ないね。弟なんて死ねばいいじゃない、これ以上育たないしその手で殺せば?そしたら、あんたの仕事は楽になるわ」
そんな言葉という刃が私の胸に次々と刺さっていった。笑いながら、さもわかっているように機嫌よく言ってくる。
唇をぎゅっと強く噛み、暴れまく感情を抑えようと耐える。口の中でぶわっと広がる鉄の味を感じた。
そして、沈黙の後、少し深呼吸をしてからまた作り笑いをした。
「残念ながら、断固拒否させてもらいます。私は唯一の大切な家族を失いたくありません。何もできなくても構いません、ただそこにいてくれるだけで嬉しいんです」
「あら、じゃあ叩かれる?」
「それでお怒りが収まるのならば」
* *
お仕置きという拷問を受けたあと、なんとかぼろぼろの足で自分の部屋へと戻った。
足や手は叩かれたり殴られたりした跡でいっぱいだ。確かに、嫁の貰い手はないだろう。
私の自室は本来なら使用人が使うはずの個室だ。私とライは二人でその部屋を使っている。
ドアを開けると、ベッドから体を少しだけ起きあげ窓の外を眺めていたライがいた。
こちらの存在に気づき、何か言いたげそうにしながらも口を閉じ、笑う。
「姉様………お疲れ様っ」
「ライぃぃ~!疲れた!」
ライに飛びつきたいがさすがにそれはできないので、近くに駆け寄る。
ライには言ってない。今、この状況がどんな状況か。言ったら悲しむだろう。
今はもう、私は十八歳だ。あの日から数年間の日がたち、こんなに大きくなってしまった。
あの日、義両親が来てから全てが変わった。
義両親がこの家全ての主導権を握ってしまい、仲良かった使用人は全員解雇。
いつしか私達を庇う人はいなくなった。
ライは両親の葬儀が終わったあと、義両親に言われたこの部屋にずっといたので被害はなかったと思う。
食事を運ぶのが私だったのは違和感だったと思うし、着る服が使用人の服になったが、それについては誤魔化したのであんまり深刻な事だとは思ってないはずだ。
それに、弟の服と食事はそれこそ土下座して、今まで通りのものにしてもらった。
私が成人したら、きっとこの地獄も終わる。当主というものは成人したら血筋だとか条件を満たしていたらなれる。
まだ、それまでの辛抱だ。
「姉様、また無理をしたの」
「そうなの!階段から転び落ちちゃって__」
ぱんっと手を叩き合わせ、思い出したように話しだす。
殴られたり叩かれたりした怪我のことも、誤魔化している。
___姉なんだから、頑張らないと
何よりもライに外の世界を見せてあげたかったし、外に行けない代わりにここで幸せになってほしかった。
「姉様、何か…ある?」
顔色を伺うように、おずおずと聞いてきた。何か?とは。何かあるかないかと言われれば大分ある方だとは思う。
なのに、口が勝手に動いてしまった。
「……あるわけないじゃん、このお姉ちゃんにどんと任せなさい!」
「……そっか、ありがとう」
ため息をついて、鋭い目つきで人を見下すような言葉を発していた。
いつものことだ。義両親達がきて全てが変わった。私は当主なんかじゃない、ただの召使いだ。
「残念ながら、優秀に生まれなかったもので」
一礼をしてにっこりと微笑む。その裏ではとてつもなく嫌悪感しかうまれない。
嫌で、辛くて、仮面が取れなくなってしまった。
「は……っ!無愛想にもほどがあるわ。嫁の貰い手なんてないでしょうね。太った中年男性と結婚させようかしら」
「それを望むのなら」
「………それじゃあ、今日から三日間ご飯は無しよ?弟の分も、ね」
にっと自虐的に笑っていた。この笑みは駄目だ、本当にやる気だ。
私ならご飯抜きは我慢できる。けれど、ライにはしっかりと食べさせないといけない。
私は少し表情を崩し焦りながらも許しをこうた。
「待ってください…!ライの分はしっかり用意させてもらう約束でしょう!あの子は育ち盛りなんです!」
「約束なんてものを信じていたの?やっぱ、馬鹿でただの出来損ないね。弟なんて死ねばいいじゃない、これ以上育たないしその手で殺せば?そしたら、あんたの仕事は楽になるわ」
そんな言葉という刃が私の胸に次々と刺さっていった。笑いながら、さもわかっているように機嫌よく言ってくる。
唇をぎゅっと強く噛み、暴れまく感情を抑えようと耐える。口の中でぶわっと広がる鉄の味を感じた。
そして、沈黙の後、少し深呼吸をしてからまた作り笑いをした。
「残念ながら、断固拒否させてもらいます。私は唯一の大切な家族を失いたくありません。何もできなくても構いません、ただそこにいてくれるだけで嬉しいんです」
「あら、じゃあ叩かれる?」
「それでお怒りが収まるのならば」
* *
お仕置きという拷問を受けたあと、なんとかぼろぼろの足で自分の部屋へと戻った。
足や手は叩かれたり殴られたりした跡でいっぱいだ。確かに、嫁の貰い手はないだろう。
私の自室は本来なら使用人が使うはずの個室だ。私とライは二人でその部屋を使っている。
ドアを開けると、ベッドから体を少しだけ起きあげ窓の外を眺めていたライがいた。
こちらの存在に気づき、何か言いたげそうにしながらも口を閉じ、笑う。
「姉様………お疲れ様っ」
「ライぃぃ~!疲れた!」
ライに飛びつきたいがさすがにそれはできないので、近くに駆け寄る。
ライには言ってない。今、この状況がどんな状況か。言ったら悲しむだろう。
今はもう、私は十八歳だ。あの日から数年間の日がたち、こんなに大きくなってしまった。
あの日、義両親が来てから全てが変わった。
義両親がこの家全ての主導権を握ってしまい、仲良かった使用人は全員解雇。
いつしか私達を庇う人はいなくなった。
ライは両親の葬儀が終わったあと、義両親に言われたこの部屋にずっといたので被害はなかったと思う。
食事を運ぶのが私だったのは違和感だったと思うし、着る服が使用人の服になったが、それについては誤魔化したのであんまり深刻な事だとは思ってないはずだ。
それに、弟の服と食事はそれこそ土下座して、今まで通りのものにしてもらった。
私が成人したら、きっとこの地獄も終わる。当主というものは成人したら血筋だとか条件を満たしていたらなれる。
まだ、それまでの辛抱だ。
「姉様、また無理をしたの」
「そうなの!階段から転び落ちちゃって__」
ぱんっと手を叩き合わせ、思い出したように話しだす。
殴られたり叩かれたりした怪我のことも、誤魔化している。
___姉なんだから、頑張らないと
何よりもライに外の世界を見せてあげたかったし、外に行けない代わりにここで幸せになってほしかった。
「姉様、何か…ある?」
顔色を伺うように、おずおずと聞いてきた。何か?とは。何かあるかないかと言われれば大分ある方だとは思う。
なのに、口が勝手に動いてしまった。
「……あるわけないじゃん、このお姉ちゃんにどんと任せなさい!」
「……そっか、ありがとう」
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