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第二章 波乱の七日間
六日前④
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カトリーナは混乱していた。それは至極当然のことである。
なぜなら、想い人であるバルトが帰ってきて楽しい時間になるはずが、訳の分からない婚約者と名乗る男に加えて、超絶美少女毒舌令嬢が現れたのだから。
突然の見知らぬ二人の登場と躱した言葉でカトリーナは訳が分からなくなっていた。
ただでさえ忙しく、さらには一夜漬けに近い状況で詰め込んだ知識を保つので精一杯なのに。
とりあえずは一つ一つ処理していこうと目の前の令嬢に目を向ける。
が、可愛らしい容姿の女の子が歪んだ笑みを浮かべおり、どうしてこんな意地悪な笑みを浮かべられるんだろう、というとりとめのない疑問を浮かべてしまった。
「なにぼさっとしているの? 聞こえてますか? それとも、言葉も理解できないくらい頭の中がお金のことでいっぱいなのかしら。だとしたらバルト様も大変ね。金の亡者にまとわりつかれてさぞ迷惑でしょう」
カトリーナは思わずかっと頭に血が上った。
どうして初対面の人間にここまで言われなければならないのだろうか。
たしかに自分は援助を求めて婚約をした。だが、今は純粋にバルトを支えたいと思っているし大事に思っている。
その気持ちを蔑ろにされたようで、怒りを発露せざるを得なかった。
「名前も名乗らず初対面の人間にそのような不躾な言葉。一体なんのつもりでそのようなことを? 程度が知れるというものです」
「程度って意味わかって言ってる? 子爵令嬢程度がバルトと結婚すんなっていってんのがわかんないの? まぁ? 陛下の勅令に近いものだったみたいだし? 私も表立っては言わないけど……あなたぐらいはそれを自覚していると思ってたけど、ずうずうしいのね、あなたって」
「ずうずうしいっ――!?」
さすがの物言いに、カトリーナは言葉に詰まる。
話の口調からおそらくは自分よりも位が上の人間なのだろう。だが、それにしたってこの言い方はひどいと思った。
どうして、自分の外見を否定され、自分の想いを否定され、生き方も否定され。
この短時間に、カトリーナという人間そのものを否定されたような気になった彼女だったがうまく二の句が継げない。
手の甲に口づけをされ、バルトに怒りをぶつけられ、こうも非難されれば、さすがのカトリーナも簡単には前に踏み込めない。
やはり混乱という言葉がふさわしいくらいには、彼女の思考は乱れていたのだ。
そして、沈黙がその場を襲う。
うまく言い返せない自分、誤解を生みだしてしまった自分、バルトを怒らせてしまった自分。
もっとうまくやればよかったという後悔が唐突に遅い、彼女の体を固くさせていく。
そこには、いつものお転婆令嬢の姿はなく、自信なさげに俯いている一人の女性がそこにはいた。
「お戯れはおやめになって下さい。エリアナ様」
「あら、プリ―ニオ。いたのね。でもあなたに何かを咎められる筋合いはないわ。引きなさい」
「申し訳ありません。さすがに、わがラフォン家の奥方様にそのような口をきかれては……使用人として使えるべき主人を守りたいと思うのは至極当然のことでしょう?」
「奥方様ですって?」
エリアナと呼ばれた令嬢は、プリ―ニオの言葉に眉をひそめた。
「はい。陛下から言われたとはいえ、バルト様もそのあたりしっかりとご承知の上かと」
「そう……ここには味方はいないのね」
ふと視線を向けると、茫然と立ちすくむカトリーナの肩をダシャがそっと抱き寄せていた。
真っ向からの対立にエリアナは悔し気に舌打ちをする。
「ちっ。何よ、つまんない――」
そんな言い争いをしていると、どれだけ早く湯あみをしたのだろうか。着替えを済ませ、リラックスした恰好のバルトが自室がある二階から降りてくる。
その足音を察知したエリアナは、途端に笑顔を浮かべしなをつくった。
そして、バルトがやってくる。
「バルト様!!」
すかさずバルトにとびつくエリアナ。彼女はバルトのたくましい腕にしがみつくと、涙目になりながらカトリーナに視線を向けた。
「聞いてください、バルト様! この人が私をひどくののしってくるんです! この家は私の家だから出て行けとか、バルト様と結婚したら屋敷にこれないようにしてやるとか! もうとてもショックで……。エリアナはとてもつらいです」
べたべたとくっつくバルトとエリアナ。
カトリーナはその光景をみて混乱など床に吐き捨てる。
そして、一歩前にでると、鋭いまなざしとオーラさえ感じるバルトに真っ向から向き合った。
「なんですか、そんな女性を連れてきて。訳が分かりませんけど?」
「それはこっちのセリフだ」
応接室の入り口付近で互いに睨みあう。
しばらくぶりに再開した二人の世界の幕開けは、戦いのゴングとともに開かれた。
なぜなら、想い人であるバルトが帰ってきて楽しい時間になるはずが、訳の分からない婚約者と名乗る男に加えて、超絶美少女毒舌令嬢が現れたのだから。
突然の見知らぬ二人の登場と躱した言葉でカトリーナは訳が分からなくなっていた。
ただでさえ忙しく、さらには一夜漬けに近い状況で詰め込んだ知識を保つので精一杯なのに。
とりあえずは一つ一つ処理していこうと目の前の令嬢に目を向ける。
が、可愛らしい容姿の女の子が歪んだ笑みを浮かべおり、どうしてこんな意地悪な笑みを浮かべられるんだろう、というとりとめのない疑問を浮かべてしまった。
「なにぼさっとしているの? 聞こえてますか? それとも、言葉も理解できないくらい頭の中がお金のことでいっぱいなのかしら。だとしたらバルト様も大変ね。金の亡者にまとわりつかれてさぞ迷惑でしょう」
カトリーナは思わずかっと頭に血が上った。
どうして初対面の人間にここまで言われなければならないのだろうか。
たしかに自分は援助を求めて婚約をした。だが、今は純粋にバルトを支えたいと思っているし大事に思っている。
その気持ちを蔑ろにされたようで、怒りを発露せざるを得なかった。
「名前も名乗らず初対面の人間にそのような不躾な言葉。一体なんのつもりでそのようなことを? 程度が知れるというものです」
「程度って意味わかって言ってる? 子爵令嬢程度がバルトと結婚すんなっていってんのがわかんないの? まぁ? 陛下の勅令に近いものだったみたいだし? 私も表立っては言わないけど……あなたぐらいはそれを自覚していると思ってたけど、ずうずうしいのね、あなたって」
「ずうずうしいっ――!?」
さすがの物言いに、カトリーナは言葉に詰まる。
話の口調からおそらくは自分よりも位が上の人間なのだろう。だが、それにしたってこの言い方はひどいと思った。
どうして、自分の外見を否定され、自分の想いを否定され、生き方も否定され。
この短時間に、カトリーナという人間そのものを否定されたような気になった彼女だったがうまく二の句が継げない。
手の甲に口づけをされ、バルトに怒りをぶつけられ、こうも非難されれば、さすがのカトリーナも簡単には前に踏み込めない。
やはり混乱という言葉がふさわしいくらいには、彼女の思考は乱れていたのだ。
そして、沈黙がその場を襲う。
うまく言い返せない自分、誤解を生みだしてしまった自分、バルトを怒らせてしまった自分。
もっとうまくやればよかったという後悔が唐突に遅い、彼女の体を固くさせていく。
そこには、いつものお転婆令嬢の姿はなく、自信なさげに俯いている一人の女性がそこにはいた。
「お戯れはおやめになって下さい。エリアナ様」
「あら、プリ―ニオ。いたのね。でもあなたに何かを咎められる筋合いはないわ。引きなさい」
「申し訳ありません。さすがに、わがラフォン家の奥方様にそのような口をきかれては……使用人として使えるべき主人を守りたいと思うのは至極当然のことでしょう?」
「奥方様ですって?」
エリアナと呼ばれた令嬢は、プリ―ニオの言葉に眉をひそめた。
「はい。陛下から言われたとはいえ、バルト様もそのあたりしっかりとご承知の上かと」
「そう……ここには味方はいないのね」
ふと視線を向けると、茫然と立ちすくむカトリーナの肩をダシャがそっと抱き寄せていた。
真っ向からの対立にエリアナは悔し気に舌打ちをする。
「ちっ。何よ、つまんない――」
そんな言い争いをしていると、どれだけ早く湯あみをしたのだろうか。着替えを済ませ、リラックスした恰好のバルトが自室がある二階から降りてくる。
その足音を察知したエリアナは、途端に笑顔を浮かべしなをつくった。
そして、バルトがやってくる。
「バルト様!!」
すかさずバルトにとびつくエリアナ。彼女はバルトのたくましい腕にしがみつくと、涙目になりながらカトリーナに視線を向けた。
「聞いてください、バルト様! この人が私をひどくののしってくるんです! この家は私の家だから出て行けとか、バルト様と結婚したら屋敷にこれないようにしてやるとか! もうとてもショックで……。エリアナはとてもつらいです」
べたべたとくっつくバルトとエリアナ。
カトリーナはその光景をみて混乱など床に吐き捨てる。
そして、一歩前にでると、鋭いまなざしとオーラさえ感じるバルトに真っ向から向き合った。
「なんですか、そんな女性を連れてきて。訳が分かりませんけど?」
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