婚約破棄されたと思ったら次の結婚相手が王国一恐ろしい男だった件

卯月 みつび

文字の大きさ
86 / 102
第三章 王都攻防編

ピンぼけ夫婦の奮闘⑪

しおりを挟む
「では、最初はリリとララからお願いね」
「はい、奥様。私達は、色々なお店にコンテストに参加していただけるようお願いしてきました。ね、リリ」
「そうね。あの、とりあえず、飲食店は指示されていた五十店の参加が決定しています。あとは、貴族の方に化粧品を提供する化粧品を扱う商家が十店、あとは、絵描きの方が二十名、音楽家が二十組集めることができました。ただ、鍛冶屋の方々は参加数が集まっていません。始まる前にはなんとかします」
「あとは、冒険者の方にも集まってもらいました! 冒険者の方はおおよそ三百人くらいの方が集まりました。報告は以上になります!」

 リリとララは報告を終えると、椅子に座る。
 それを聞いていたドラは、その内容に驚きを隠せない。

「えっと、やるのは美魔女コンテストだけではないのかしら?」
「あら? 言っていませんでしたっけ? 王都コンテストは初日はミスターミスコンテストと美魔女コンテストを行う予定です。ミスター、ミスは二十代までの男女が、美魔女コンテストは三十代以上の方が対象になって美しさを競います。二日目は、絵と音楽の品評会です。絵は会場を作り飾り、音楽は順番に奏でてもらってどの音楽家が人気があるのか投票をしてもらいます。そして、三日目には冒険者の方による武闘大会を行う予定です。鍛冶屋の方には、武器を提供してもらいまた飾ってもらい一番を競い、冒険者の方もその武力を競います。優勝者には、ミスや美魔女コンテストの優勝者からの言葉などがあれば盛り上がるのではないでしょうか?」
「そんな大規模なものに……」
「ええ。では、ヘルムート様の報告を」
「はい、ただいま」

 驚くドラを後目に懐疑は進んでいく。
 次はヘルムートの番だ。

「概ねカトリーナ様とドラ様には伝わっていると思いますが、警備隊との調整、企画、進行、その他についてはすべて準備が整いました。あとは、参加者をどれだけ集められるかですね。宣伝活動は子供らが街中を練り歩き、どんどんと浸透しているところです。裏稼業の面々には、上納金をカトリーナ様に用意していただいたので全く軋轢はありません。むしろ協力をいただきスムーズに準備がすすんでいます」
「ええ。ですが、過激派の手がはいったものがなんらかの妨害を仕掛けてくる可能性はありますから警戒は怠らないでください。ただ、基本的には順調ですね。よかったです」
「遅れると怖い方が目の前におりますからね」
「全く。口の減らない」

 ヘルムートとカトリーナはやや黒い笑みを浮かべて話している。
 そしてカトリーナはドラへと話をふる。

「では、ドラ様。進捗の報告をよろしくお願いいたします」
「え、ええ。一応私も問題なく進んでおります。穏健派の美しさを自慢しているご令嬢やご婦人の方には声をかけております。必要数は集まるかと……。それと皆様もこのコンテストに参加した証が欲しいのか、援助金を預かっております。目録はこちらに」
「それは助かります! では、ヘルムート様。しっかりと援助していただいた家名を張り出すようにしてください。一番目立つところにしておきましょう」
「ええ。そこはしっかり用意していますからご安心を」
「じゃあ、次は、各日程の細かい打ち合わせを――」

 皆で報告をし、検討事項を話し合い、あっという間に時間は過ぎていった。
 その帰り道、ドラはカトリーナと馬車に乗っていた。
 会議の内容やその時の様子を雑談交じりに話すカトリーナだったが、ドラはどこかぼんやりといていた。
 そんなドラを不思議に思ったカトリーナは、頃合いをみて問いかける。

「あの、ドラ様」
「はい。どうしました?」
「何か、気になることはありましたか? あまり、ご気分がすぐれないようですから」

 その言葉を受けたドラは儚げに微笑んだ。

「あなたの見えている景色はどのようなものなのでしょうね」
「景色……ですか?」
「ええ。私はカトリーナ様の話を聞いた時はこのような大きなことになるとは思っておりませんでした。それがたったこれだけの人数で、王都中を巻き込むコンテストを企画して……あなたにはどんな光景が見えているのか、それが不思議でなりません」
「ドラ様……」

 俯いたドラは、さらにぽつりと言葉をこぼす。

「私は、穏健派の貴族を虚勢をはってまとめるだけで精一杯でしたから」
「それは違います!」

 ドラの言葉に、カトリーナはすかさず口を挟んだ。

「ドラ様の手腕がなければ貴族達はまとまりませんし、このコンテストの企画だってここまで大きいものにはなりませんでした。私は、ドラ様にたくさん助けられていますよ?」
「そうね、あなたはそういう人だものね」
「それに、ドラ様が協力してくれたからこその美魔女コンテストですよ!? 私はドラ様に会わなければお持ちつきませんでしたから。今だって、いつかドラ様のような美しい方になりたいと憧れております」
「口は本当に達者なんだから」

 そういって微笑みあう二人。
 カトリーナはなぜだかうれしくなり、饒舌に語りはじめる。

「きっと、このコンテストで王都は変わります。人が集まり、お金が集まり、文化が集まり……。そして優秀な方がたくさん集まる王都はますます発展していくことでしょう。それにより、穏健派の貴族達はさらなる発展を遂げ、いつかはこの王都を牛耳るのです。殿下を筆頭に、もっとずっと大きくなっていきますよ。あ、もちろん優秀な方はラフォン家がさっさと召し抱えさせていただきますからね!」
「……カトリーナ様」
「このようなコンテストを毎年企画して、それ以外にもやりたいことがたくさんあるんです! 公爵夫人としての責務はまだ果たせていませんが、これから先、王都はもっと住みやすく、もっと素敵な街になっていきますよ!」

 満面の笑みでそう語るカトリーナ。ドラは、その笑顔をみてごくりと唾を飲み込んだ。
 
「カトリーナ様。あなたは今以上にまだ何かを生み出すというのですか?」
「ええ! これは始まりにすぎません! すべてはここから始まるんです!」

 そんな大言壮語といってもいいくらいの言葉だが、ドラは否定できなかった。
 きっと、この女性ならば、という期待を持たずにはいられない。
 
(カトリーナ様は、この国をきっと変えるのでしょうね)

 そんな感想を抱くのだった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。