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本編

7 商業街へ行ってみる

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 俺は教えてもらった道をしばらく歩いていくと、盛況ながらもまた雰囲気の違った区画に辿り着いた。

 商業街だ。

 道具屋、武器屋、防具屋などの商店がずらりと揃っており、露店もたくさんあって賑やかで人通りも多い。

 当たり前だが、先程の歓楽街とは違い、娼婦のお姉さん達はほぼ居なかった。

 俺は通りを歩きながらお目当ての品物を探す。

「……お、あれかな」

 俺は金髪の青年が石畳の地面に敷物をしいて、ほんのり水色な液体が入った小瓶が数本だけというのに、敷物のど真ん中に堂々と置いて売っている露店の前で足を止めた。

「いらっしゃい、俺の仕入れたポーションは質が良いよ?」

 やはり、薄い水色の液体が入った小瓶はポーションらしい。

「ひとつ、いくら?」

「F級ポーション、銅貨1枚でいいよ」

「見てもいいですかね」

「どうぞどうぞ」

 俺はポーションを手にとって見てみる。

 細かい造形を施していない、シンプルで四角い形の小さな香水瓶といった物の中に、たぶん水色だよな?、というぐらいに薄い薄い水色の液体が入っていた。

 なるほど、F級か。

 確か水色ポーションにおける一番下のランクだったか。

 転移中に機械音声さんのレクチャーで聞いていた通りだな。

 ただ、ポーションに関しては、存在を教えてはもらったが、実物を見るのは今が初めてである。

 ま、後で他の店を回れば他の等級も目にできるだろう。

 しかし、せっかくだし試しに確認だけはしておくか。

「F級の下ってあるんですかね?」

「はあ!? 俺の仕入れている商品はF級以下だってのか!?」

 なにやら、ご立腹されたようである。

「あー、いえいえ。もっと安いポーションを探している人がいましてね」

 俺がそう続けると、商売人の青年は鼻で笑いながら手を振った。

「なんだい兄ちゃん、値切ろうって腹かい?」

「いえいえ」

「悪いが、俺の販売品は適正価格だぜ。F級としての品質も安定しているはずだ。周りの店を見てくれば分かるはずだ」

「いえ、本当に値切りではありません。F級以下のポーションが市場にあるのかどうかを知りたくて」

「……ああ、なるほど、そういう意味かい、それなら、F級以下を取り扱うような店はさすがに無いと思うぜ。もはや、回復効果なんて無いだろうからな。その場限りの詐欺ならばあるかもしれないが、真面目に商売をしている商人ならば、信用を失うようなF級以下のゴミはさすがに扱わないと思うよ」

 なるほど、水色ポーションは聞いていた通り、F級が最低ランクと。

「ありがとう」

 俺はペコリと小さく一礼すると、その場を去った。

 俺は、次いで店舗を構えている道具屋に入る。

 棚には、先程見たポーション瓶がずらりと並んでいた。

 しかも、水色の濃さが色々とある。

 店舗だけあって、きちんと商品名と値段が書いてあるので、情報を集めていく。

 まず、ポーションは水色の濃さで判別されるらしい。

 水色が濃いければ濃いほどに、濃縮された効能の高いポーションらしい。

 聞いてはいたが、やはり実物を見るのが一番分かりやすいな。

 F級、、、かなり薄い水色。銅貨1枚。

 E級、、、少し濃い水色。銅貨5枚。

 ここらが主力商品なのか、陳列棚での量が多い。

 次にD級、、、かなり濃い水色。銀貨1枚

 これは高級品なのか、ガラス扉で鍵付きの棚の中に10本程度、陳列されているだけであった。

 そして、D級以上のポーションは、この道具屋では売っていなかった。

 俺は、他の道具類を見て回る。

 見てもよく分からない物から、たぶん生活雑貨らしいものまで、色々な物が売っているが、たいていは銅貨何枚の世界だ。

 俺は軽く考えをまとめてみる。

 つまり、道具屋内の物価、というか相場は、ほぼまともな部類と考えられる。

 価格、というものは、需要と供給の関係性で決まるので、つまるところ、バランスが悪いと価格もおかしくなるのだ。

 例えば、元の世界にいた時に、俺がたまに食べていたポテトチップス。

 特価の時だと、100円以下だ。

 しかし、じゃがいも不足でポテトチップスが急に生産不能に陥り、品切れになるとしよう。

 というか、かつて実際にあった事例だ。

 その際、買い占めなどがあったせいもあるのだろうが、とある味のポテトチップスが、オークションで凄まじい価格で取引された期間があったのだ。

 需要と供給のバランスというのは、そういうことだ。

 単純に言えば、需要がある場合には、数が多ければ当然、価格は安くなるし、逆に数が少なければ、価格は高くなってしまう。

 とすれば、娼婦の価格が安いのは、娼婦の数が「かなり」多いからだろう。

 そして、食料品がとてつもなく高いのは、食材が極めて貴重であるということだ。
 もしくは、料理人の腕が貴重か。
 これは、後々、また調べれば分かることだろう。

 ただ、現時点では食材の量が少ないと仮定しておこう。

 つまり、この異世界は、食べ物の確保が難しく、気軽に食事はできない、と推察できる。

 うわ、マジか。

 食い物が高くて買えないとか過酷すぎるだろ。

 人間としての貴重な娯楽が1つ失われてしまうぞ。

 だがしかし、と俺は店先の通りを見た。

 俺の視界に映る限りでは、栄養失調のような者はいない。

 男性は体格も良いし、女性はプロポーションが良い。

 もちろん、中には空腹で大変な者もいるのかもしれないが、先程の歓楽街と、この商業街を見た限りでは、一般的ではないのかもしれない。

 つまり、何かしらの手軽な栄養補給方法があると考えられる。

 そんな事を考えながら、俺は店の隅に置いてある箱に目を下ろした。

 中には四角いポーション小瓶の空瓶がたくさん詰め込まれていた。

 その箱にはポップが貼ってあり、「ポーションの空き瓶、1個、銅粒1つ」と書かれてあった。

 俺はそれを3つだけ手に取ると、店主の所に持っていく。

「まいど、ありがとうございます」

 俺は金髪の中年店主に銅貨を渡した。

「はい、じゃあ、お釣りは銅粒7つね」

 ふむ、ということは、銅粒10個で銅貨1枚だな。

 10個でランクアップの法則だ。

 俺はお釣りと、空き瓶を受け取る。

 となると、たぶん、なのだが、銅粒は100円、銅貨は1000円、銀貨は1万円、というところだろうな、と俺は勝手に予想を立てるのだった。
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