触手の魔女 ‐Tentacle witch‐

触手は触手でもスライム触手。
スライムはスライムでも洋ゲースライム。

『スライム』と契約した落ちこぼれ魔女見習いのリンちゃんが、スライム触手の鎧を身に纏い、持ち前の剣の腕をいかして『英雄』に成り上がるまでのお話です。


――あらすじ――

建国歴324年、イリュリア王国に転機が訪れようとしていた。

イリュリアは東西を結ぶ海洋貿易の中継地として栄えた国であり、『世界の中心』の美称を持つ。

だが、それも今は昔。

新型船舶の開発、航行技術の発達、それによる新航路の開拓、ネカウⅡ世の運河の開通、そして隣国パルティアとの戦争……あらゆる要素がマイナスに働き、イリュリアは『世界の中心』ではなくなりつつあった。

盛者必衰、イリュリア斜陽の時である。

国民は不景気に喘ぎ、市井には浮浪者が溢れた。
しかし、そんな状況でも貴族たちは声高に主戦論を唱え続けた。

蔑ろにされた人民たちの恨みは、徐々に『啓蒙思想』という形で結実しようとしていた。


一方、転機はクレプスクルム魔法女学院にも訪れていた。

中等部二年生、魔女見習いのリンは『クレプスクルム開校以来の落ちこぼれ』と称されるほどに魔法の才能がなかった。

魔女見習いの本文は魔法。その魔法が全く不出来なリンは学院中の嘲笑の的だった。

絶望と逼塞の学院生活を送るリンは【契約召喚】に逆転の希望を見出す。

【契約召喚】とは、魔法使いが一人前になるまでの間に必ず行われるイニシエーションの一つ。隣り合う〝魔界〟と交信し、魂の共鳴に適う存在と終生の契約を結ぶ魔法である

そこで優秀な使い魔(メイト)と契約できれば……そんな甘い幻想だけがリンの心の拠り所だった。

だが、【契約召喚】によって現れたのは研究素材にしかならないような下等な魔物――『スライム』だった。

八方塞がりの現実に絶望するリン。
そんなリンに対して、本来なら喋ることができない筈の『スライム』が語りかける。

「――おい、お前がオレ様の契約者か?」


――今、運命の歯車は人知れず噛み合い、耳障りな軋音を響かせながらゆっくりと回り始めた。

その動きに気付く者はいない。だが、いずれは誰もが知ることとなる。
一度回り出した歯車は加速を続け、やがてイリュリア王国だけに留まらず世界中にその軋音を届かせるだろう。
その時になって耳を塞ごうとしても手遅れだ。

運命は、とっくの昔に動き出していたのだから。

幾千万の人々が織り成す動乱の渦中、リンは何を見る。
剣と魔法と革命のファンタジー、ここに開幕!
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