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16章 隣国への道行き
確認ごとも
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「話は戻りますが、王都にて私からお願いしたい予定というのは、その辺りでしょうか。」
王都での行動、オユキにしろトモエにしろ、実に制限が多い。既に行ったこともあり、ふらりと外に出ようものなら外出の目的など達成できるはずもない。だからこそ、事前にこうして確認をして調整を行う。トモエが同席していないのは、ここまでの道中ですっかりと料理ができる人員として計上されているからだ。
翌日には王都につくとは言え、いよいよ宿場町。それも貴族が時間をかけて移動する、そのような行程を支えるための場所。そこで暮らす人々に向けた物はあるにはあるが、それ以上があるわけもない。本来であれば、事前に物資も運んで、用意をしてとそのような拠点だ。近い距離に、他の壁に囲われた箇所も見える。要は王都内にある、遠方から訪れるそれぞれの場として、王都に入る前に整える為の場として成立しているのだろう。要は、王都の側でもあるため町と呼んではいるが、結局は移動を行う為にと考えた際の拠点でしかないと。
「うむ。事前に聞いていたものとは変わらんか。」
「変えようにも、帰るだけの時間もありませんでしたから。」
「違いない。」
王都に何時、それが決まってから今日までは、本当に忙しない日々を過ごしたのだ。連れ回されるトモエとオユキは、当然合間に何某かを行う時間はあった。しかし、他はそうでは無い。少し領都を改めて、それをしようにも護衛を頼める相手は次の移動に向けた準備に奔走している。本来であれば二週近く、それこそ補給なども考えてそれくらいはと言っていたものが、半分以下となった。そして、変更した予定を伝えるために、早馬が走りと。人手も減る。
トモエが楽しみにしているだろうからと、以前に頼んでいた服がどうなったか、その確認をという話が出れば、外に出るではなく、頼んだ相手を呼びつけてと。
「一先ず、我から約束が出来る物は、その方らの休日としての物だな。」
要は、神殿の観光やそのついでに色々と手間をかけたお礼。戦と武技の教会にも同様に。加えてアルノーを連れて、市場を冷かしに行くことにもなる。そう言った、少々大人数での日々の事。王都では、流石にオユキの事が広く知られているわけでもない。そう言った意味では、領都よりも楽ではある。反面、貴族が集まっている時期でもあり、気軽に出かけてそこで無理にでも機会を得ようとする相手に対して、対応が必要ではある。そこで、どうした所で公爵は頼まなければならない。結局、こちらの家同士の事は未だによくわからぬ以上は、そこの制限を預ける相手が必要であり、その相手と、こうして事前に打ち合わせを行う。
「ただ、そちらについては、王妃様との事よりも先にしてもらわねばならんが。まぁ、外にもわかりやすいものとして、狩猟祭を終えて、そうなるであろう。」
「ええ、新年祭迄日はありますし、旅の疲れを癒すには良い時期かと。」
「うむ。我らも、休みは考えている。その方らが良ければ。」
「ええ、お言葉に甘えさせて頂きます。」
そうして、オユキと公爵が話している所に、公爵夫人の溜息が割ってはいる。
「休みの話も良いですが、身の回りを整える事も、行うのを忘れないように。」
「とは言いましても、そちらはまた時間がかかりそうですし。」
先の物、シェリアに助言を求めて用意した小袖や打掛、袴と言った物は残った二つの内、一つしか完成していなかった。それもそうだろう。納期よりも突然に早くなったのだから。そもそも、全て人の手でというのに、一月と少しで和装を6着も用意して見せた事に、驚きしかない。模様の刺繍もあるというのに。先の完成品は、一度公爵夫人の検分を経て、王都に。完成品として修められた小袖に打掛姿、そのような格好で今はオユキがお茶会に臨んでいる。
「トモエに頼む、まずはそれをどうにかしなければならないでしょう。」
小物まであれこれとという訳ではないが、帯も頼んだのだ。店の者が上から着るものか、飾りとするものか、その程度の認識しかなかったため、驚かれはしたが、そちらもまぁ、最低限は用意された。
そして、そこまでになってしまえばアイリスにしても、流石に分からない。勿論、異邦の和服など、こちらで極一部が持ち込んだかもしれないが、広まっていない以上知識と知っているものがそこらにいる訳もない。なので、いつもの如く、オユキはトモエに任せた。シェリアを始め近衛三人が揃って公爵夫人に頭を下げはしていたが、見知らぬものをいきなり行えなど、そこまでの無体をいう訳もない。だからこそ、そう言った事を引き起こした張本人が釘を刺される。
「御言葉はごもっともではありますが。」
「王都で探すしかないでしょう。サキ、でしたか。あちらは。」
「本人は興味を持っていますが、直ぐには。そもそもこちらで言えば、盛装ですから。」
「成程、しかし基本的な作りは普段着とされるものと変わらないようですが。」
「あまり一般的では、なくなってしまいましたからね。」
「それで、こちらでも衰退したのだと、そこに直ぐに理解が及びましたか。」
和装にしても、刀の道にしても。どちらも文化の周流などと呼べるものではなくなっていた。知っている者達、それを素晴らしいと信じる者達はやはり多く、だからこそどうにかと繋いできたものだ。こちらの貴族たちが、どうにか国の形を維持してきたのと同じように。刺繍にしても、布の色にしても冬の方が近い時期ではあるが、秋の装い。菊では流石にオユキに合わせたものである以上、小さな刺繍を多く頼むことになるため避けた。桔梗はそもそも、同行者を想起させるため、そちらへの贈り物として頼んでいる。紅葉は布地を赤としたため却下となり、撫子が散らされてとなっている。
「どちらにせよ、トモエさんに習って頂く事になるでしょう。」
「我からは、良い物に見えるが。まぁ、布から選ばねばならんだろうな。」
「それと、刺繍もですね。形としては、戦と武技の神から頂いている物と近しいものです。問題は無いでしょう。」
「あくまで、異邦の物ですから。こちらの美意識に合わせた新しいもの、それも楽しいでしょう。」
最も、オユキはその全てをトモエに任せるが。
トモエが王都の散策を、領都でも時間を。そう考えていたことの一つに、着物に合わせて身に着ける小物、それらを探して回り、見つからないのであれば頼んでとそう考えての事ではあるのだ。
「それと、シグルド達であるが。ファルコがな。」
「おや、何かありましたか。」
「本人にはまだ伝えておらぬが、陛下の手が新年祭から先どうしても、空かぬ。」
「それこそ、私たちが出立すれば、そこから暫くでひと段落となるでしょう。」
「うむ。それは、まぁそうではある。」
他国との直接行き来する奇跡が出来た、今度はそれに向けて何かあるのだろうが、そもそも利用にかなりのコストがかかる。気軽にどうこうという事もない。だからこそ、オユキがあれこれと手紙を預かって、その予定だ。それを確認しない事には、進む話というのも結局少ない。
「となると、ああ、新しい事は、新しい者達にと。」
「リース伯子女のこともあってな。」
つまりは、隣国にファルコも同行させたい。叶うなら、そこに他にも同じ年頃の相手を引っ付けて。何となれば、その先で気の合うものを見つけて来いと、そう散々に言い含めた上で送り出したいと、そう言う事らしい。
だとすれば、国事として隣国へ向かう一団を送ってから等待てはしない。そして、そこまでの間は何処までも忙しい。
「そうなると、新年祭でと、そのような話も出るかと思いますが。」
「案の奏上を行って、新年祭で任命式であるな。」
「となると、内々では、既に決まりましたか。」
「うむ。その方らがまとめた経過は、こちらでも報告を行っている。戦と武技の神よりの言葉もあった。」
訓練とは、枷である。要は、既にただ魔物と戦うだけでは評価を、さらなる加護を望めない者達であるなら、しっかりと足手まとい、枷にしかならない者達を抱え込んで事を為せ、そうともとれる言葉。どうしたところで時間がなく、こちらは新人たちのように直ぐに実感が、結果が見えにくい事もあるからと隠して進めていたもの。
「アベルさんからの物は、私は眼を通していないのですよね。」
オユキは、リース伯爵家に仕えているわけでは無い。勿論、メイに対して隠したうえでとすることもある。どうした所で、暫くは始まりの町、若しくは王都で暮らすのだ。門の無い領都は腰を下ろすのは難しい。公爵に向けて、そうできるものは、公爵にだけと、そう用意できるものは当然考える。
「流石に、アベルにしても、其の方らへの報告は問われた事だけであろうからな。傭兵ギルドも、長を変え体制を変えと忙しく、あまり外に出したくない情報も多い。」
「ええ、まぁ、そちらはそちらで。」
そして、それ以外の最たるものは、既に公爵に渡してある。要はオユキが馬車に放り込まれたまま、カナリアとあれこれと話した結果出来上がったもの。加えて、オユキからの予測として翼人の祀る神、そちらに向けて何かを行いたいのであれば、こうすればよいのではと。その予想も加えて。
メリルは、人の魔術師。旅の最中で、あれこれと行うには、大いにマナの不足があるのを見た。カナリアが実に平然と短杖をいくつも加工する隣で、メリルは四本もする頃には眩暈を抑えるように額を抑えていたのだ。身近な種族として、木々にまつわる物は、大地から吸い上げる。当然人が生きていくためには地の恵みは必須。大気に満ちるというそれを、自在と出来る。羽を広げて、風を受けるだけでマナを集められる種族というのは、今後を考えれば公爵としては是非共と願う相手だ。巫女という目印の置かれた教会を擁する公爵の領都、世界樹は根を張り巡らせ、そこから吸い上げているものがある。そして、改善されれば感謝を間違いなく覚えてくれるだろう相手は、間違いなくその大きな根がつながる先。流れを見守るのも仕事、それを聞いたこともある。
「ただ、こちらは領に戻ってからとなるな。」
「私の方でも、また思いつくところがあれば。」
オユキと公爵としては、此処での会話が準備運動だ。本番は王都。
こうして、互いに利益を交換する、そこに納得のある相手ではない。寧ろオユキとトモエが求める物等、そのほとんどを個の公爵が二つ返事で用意ができるのだ。では、他が使う交渉の手札など、オユキの好むものではない。
王都での行動、オユキにしろトモエにしろ、実に制限が多い。既に行ったこともあり、ふらりと外に出ようものなら外出の目的など達成できるはずもない。だからこそ、事前にこうして確認をして調整を行う。トモエが同席していないのは、ここまでの道中ですっかりと料理ができる人員として計上されているからだ。
翌日には王都につくとは言え、いよいよ宿場町。それも貴族が時間をかけて移動する、そのような行程を支えるための場所。そこで暮らす人々に向けた物はあるにはあるが、それ以上があるわけもない。本来であれば、事前に物資も運んで、用意をしてとそのような拠点だ。近い距離に、他の壁に囲われた箇所も見える。要は王都内にある、遠方から訪れるそれぞれの場として、王都に入る前に整える為の場として成立しているのだろう。要は、王都の側でもあるため町と呼んではいるが、結局は移動を行う為にと考えた際の拠点でしかないと。
「うむ。事前に聞いていたものとは変わらんか。」
「変えようにも、帰るだけの時間もありませんでしたから。」
「違いない。」
王都に何時、それが決まってから今日までは、本当に忙しない日々を過ごしたのだ。連れ回されるトモエとオユキは、当然合間に何某かを行う時間はあった。しかし、他はそうでは無い。少し領都を改めて、それをしようにも護衛を頼める相手は次の移動に向けた準備に奔走している。本来であれば二週近く、それこそ補給なども考えてそれくらいはと言っていたものが、半分以下となった。そして、変更した予定を伝えるために、早馬が走りと。人手も減る。
トモエが楽しみにしているだろうからと、以前に頼んでいた服がどうなったか、その確認をという話が出れば、外に出るではなく、頼んだ相手を呼びつけてと。
「一先ず、我から約束が出来る物は、その方らの休日としての物だな。」
要は、神殿の観光やそのついでに色々と手間をかけたお礼。戦と武技の教会にも同様に。加えてアルノーを連れて、市場を冷かしに行くことにもなる。そう言った、少々大人数での日々の事。王都では、流石にオユキの事が広く知られているわけでもない。そう言った意味では、領都よりも楽ではある。反面、貴族が集まっている時期でもあり、気軽に出かけてそこで無理にでも機会を得ようとする相手に対して、対応が必要ではある。そこで、どうした所で公爵は頼まなければならない。結局、こちらの家同士の事は未だによくわからぬ以上は、そこの制限を預ける相手が必要であり、その相手と、こうして事前に打ち合わせを行う。
「ただ、そちらについては、王妃様との事よりも先にしてもらわねばならんが。まぁ、外にもわかりやすいものとして、狩猟祭を終えて、そうなるであろう。」
「ええ、新年祭迄日はありますし、旅の疲れを癒すには良い時期かと。」
「うむ。我らも、休みは考えている。その方らが良ければ。」
「ええ、お言葉に甘えさせて頂きます。」
そうして、オユキと公爵が話している所に、公爵夫人の溜息が割ってはいる。
「休みの話も良いですが、身の回りを整える事も、行うのを忘れないように。」
「とは言いましても、そちらはまた時間がかかりそうですし。」
先の物、シェリアに助言を求めて用意した小袖や打掛、袴と言った物は残った二つの内、一つしか完成していなかった。それもそうだろう。納期よりも突然に早くなったのだから。そもそも、全て人の手でというのに、一月と少しで和装を6着も用意して見せた事に、驚きしかない。模様の刺繍もあるというのに。先の完成品は、一度公爵夫人の検分を経て、王都に。完成品として修められた小袖に打掛姿、そのような格好で今はオユキがお茶会に臨んでいる。
「トモエに頼む、まずはそれをどうにかしなければならないでしょう。」
小物まであれこれとという訳ではないが、帯も頼んだのだ。店の者が上から着るものか、飾りとするものか、その程度の認識しかなかったため、驚かれはしたが、そちらもまぁ、最低限は用意された。
そして、そこまでになってしまえばアイリスにしても、流石に分からない。勿論、異邦の和服など、こちらで極一部が持ち込んだかもしれないが、広まっていない以上知識と知っているものがそこらにいる訳もない。なので、いつもの如く、オユキはトモエに任せた。シェリアを始め近衛三人が揃って公爵夫人に頭を下げはしていたが、見知らぬものをいきなり行えなど、そこまでの無体をいう訳もない。だからこそ、そう言った事を引き起こした張本人が釘を刺される。
「御言葉はごもっともではありますが。」
「王都で探すしかないでしょう。サキ、でしたか。あちらは。」
「本人は興味を持っていますが、直ぐには。そもそもこちらで言えば、盛装ですから。」
「成程、しかし基本的な作りは普段着とされるものと変わらないようですが。」
「あまり一般的では、なくなってしまいましたからね。」
「それで、こちらでも衰退したのだと、そこに直ぐに理解が及びましたか。」
和装にしても、刀の道にしても。どちらも文化の周流などと呼べるものではなくなっていた。知っている者達、それを素晴らしいと信じる者達はやはり多く、だからこそどうにかと繋いできたものだ。こちらの貴族たちが、どうにか国の形を維持してきたのと同じように。刺繍にしても、布の色にしても冬の方が近い時期ではあるが、秋の装い。菊では流石にオユキに合わせたものである以上、小さな刺繍を多く頼むことになるため避けた。桔梗はそもそも、同行者を想起させるため、そちらへの贈り物として頼んでいる。紅葉は布地を赤としたため却下となり、撫子が散らされてとなっている。
「どちらにせよ、トモエさんに習って頂く事になるでしょう。」
「我からは、良い物に見えるが。まぁ、布から選ばねばならんだろうな。」
「それと、刺繍もですね。形としては、戦と武技の神から頂いている物と近しいものです。問題は無いでしょう。」
「あくまで、異邦の物ですから。こちらの美意識に合わせた新しいもの、それも楽しいでしょう。」
最も、オユキはその全てをトモエに任せるが。
トモエが王都の散策を、領都でも時間を。そう考えていたことの一つに、着物に合わせて身に着ける小物、それらを探して回り、見つからないのであれば頼んでとそう考えての事ではあるのだ。
「それと、シグルド達であるが。ファルコがな。」
「おや、何かありましたか。」
「本人にはまだ伝えておらぬが、陛下の手が新年祭から先どうしても、空かぬ。」
「それこそ、私たちが出立すれば、そこから暫くでひと段落となるでしょう。」
「うむ。それは、まぁそうではある。」
他国との直接行き来する奇跡が出来た、今度はそれに向けて何かあるのだろうが、そもそも利用にかなりのコストがかかる。気軽にどうこうという事もない。だからこそ、オユキがあれこれと手紙を預かって、その予定だ。それを確認しない事には、進む話というのも結局少ない。
「となると、ああ、新しい事は、新しい者達にと。」
「リース伯子女のこともあってな。」
つまりは、隣国にファルコも同行させたい。叶うなら、そこに他にも同じ年頃の相手を引っ付けて。何となれば、その先で気の合うものを見つけて来いと、そう散々に言い含めた上で送り出したいと、そう言う事らしい。
だとすれば、国事として隣国へ向かう一団を送ってから等待てはしない。そして、そこまでの間は何処までも忙しい。
「そうなると、新年祭でと、そのような話も出るかと思いますが。」
「案の奏上を行って、新年祭で任命式であるな。」
「となると、内々では、既に決まりましたか。」
「うむ。その方らがまとめた経過は、こちらでも報告を行っている。戦と武技の神よりの言葉もあった。」
訓練とは、枷である。要は、既にただ魔物と戦うだけでは評価を、さらなる加護を望めない者達であるなら、しっかりと足手まとい、枷にしかならない者達を抱え込んで事を為せ、そうともとれる言葉。どうしたところで時間がなく、こちらは新人たちのように直ぐに実感が、結果が見えにくい事もあるからと隠して進めていたもの。
「アベルさんからの物は、私は眼を通していないのですよね。」
オユキは、リース伯爵家に仕えているわけでは無い。勿論、メイに対して隠したうえでとすることもある。どうした所で、暫くは始まりの町、若しくは王都で暮らすのだ。門の無い領都は腰を下ろすのは難しい。公爵に向けて、そうできるものは、公爵にだけと、そう用意できるものは当然考える。
「流石に、アベルにしても、其の方らへの報告は問われた事だけであろうからな。傭兵ギルドも、長を変え体制を変えと忙しく、あまり外に出したくない情報も多い。」
「ええ、まぁ、そちらはそちらで。」
そして、それ以外の最たるものは、既に公爵に渡してある。要はオユキが馬車に放り込まれたまま、カナリアとあれこれと話した結果出来上がったもの。加えて、オユキからの予測として翼人の祀る神、そちらに向けて何かを行いたいのであれば、こうすればよいのではと。その予想も加えて。
メリルは、人の魔術師。旅の最中で、あれこれと行うには、大いにマナの不足があるのを見た。カナリアが実に平然と短杖をいくつも加工する隣で、メリルは四本もする頃には眩暈を抑えるように額を抑えていたのだ。身近な種族として、木々にまつわる物は、大地から吸い上げる。当然人が生きていくためには地の恵みは必須。大気に満ちるというそれを、自在と出来る。羽を広げて、風を受けるだけでマナを集められる種族というのは、今後を考えれば公爵としては是非共と願う相手だ。巫女という目印の置かれた教会を擁する公爵の領都、世界樹は根を張り巡らせ、そこから吸い上げているものがある。そして、改善されれば感謝を間違いなく覚えてくれるだろう相手は、間違いなくその大きな根がつながる先。流れを見守るのも仕事、それを聞いたこともある。
「ただ、こちらは領に戻ってからとなるな。」
「私の方でも、また思いつくところがあれば。」
オユキと公爵としては、此処での会話が準備運動だ。本番は王都。
こうして、互いに利益を交換する、そこに納得のある相手ではない。寧ろオユキとトモエが求める物等、そのほとんどを個の公爵が二つ返事で用意ができるのだ。では、他が使う交渉の手札など、オユキの好むものではない。
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