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29章 豊かな実りを願い
食卓には
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積み上げられた皿は、ユーフォリアとシェリアが粛々と片づけを始めている。だが、優雅に動くことこそが至上とされているだろう侍女は流石に山と器を抱えて下がるわけにもいかない。要は、そうした速度の差と言うのが、積まれた器の量に現れると言う訳だ。飲茶である以上、点心を欠かすこともできないければ、その脂を流すためのお茶も欠かせない。並べられるのは、どちらもであり、オユキが特に当てられて食欲が失せたこともありどうしても飲み物に手が伸びがちだ。
「私にしても、こうして護符を身に着けていると」
「まぁ、そうね」
「オユキさんは、お茶会の席で侍女の方々が気遣うべきことが多そうですね」
トモエに一つ頼むと決めた。ならば、オユキにはかつてトモエが行っていたことが。
「冷めても良い、それを選んでいただく必要はありますか」
「そう、ね」
そして、今のオユキは基本的に周囲にしっかりと冷気を放っている。熱を奪う訳では無く、はっきりとオユキの周囲にある空気の温度が低いのだ。
「抑えが効くようなものでは、いえ、長じればどうにかなりそうですが」
「そう、ね。私が、こうして毛先にだけ降ろしているのと同じよ」
「理屈はわかりますが、習うべき相手も」
「私は、まぁ、祖霊様だものね。それこそ、カナリアあたりはどうなのかしら」
言われて少しは考えるのだが、すぐにオユキは首を横に振る。
「私の物も、恐らくは種族由来でしょうから」
「翼人種だもの、知識はかなりため込んでいるはずだけれど」
「前々から気になってはいましたが、アイリスさんは」
「いつだったかしら、私たちの暮らしていた場にハヤト様が存命だったころに」
どうにも、色々と情報を得ているからだろう。はっきりと、これまでは聞こえなかっただろうことがよく聞こえる。聞き取れるようになっている。
「ええと、色々とお伺いしたいのはやまやまではありますが」
ならば、一つはっきりとさせても良いだろう。そう考えていることを、オユキはここで訪ねてみる事とする。
「まずは、確認を。そう、改めて」
そう、確認すべきことがあり、これまでにも何度か行ってきたはずの事。部族の祭祀を継いだという、この狐の特徴を持ち日本の足で歩き、前肢であるはずの部分は人と変わらぬ構造を持つこの相手。獣人と呼ばれている相手は、基本的にそのような造りであるには違いない。イリアにしても、カナリアの側で護衛として日々研鑽を行うイリアにしても。巻角の羚羊と呼んでも良さげな、ナザレア迄。種類は、それこそかつての世界で凡そ神霊として祭られていたような獣の特徴を確実に。そも、ナザレアに至っては、瞳孔にしても人とはまた違い横に細長い瞳孔を持っている。
それ以外にも、見える範囲で。街中を歩けば本当に割合にしても、特徴にしても本当に様々。
「アイリスさんは、部族の祭祀を継いだと」
「ええ、間違いないわ」
「つまりは、付属するすべての知識も、そこに間違いはありませんか」
祭祀と言うのは、何も形ばかりではない。恙無く、正しく。執り行うというのであれば、それを他の者たちに式ができるというのならば、理解度はかなり深くなければいけない。それこそ、かつての世界でも、宮中祭祀を執り行う専門家などと言うのもいた。なんとなれば、例大祭ですら神職の者たちが。大晦日に至っては、寺に勤める者の一大行事。そこでは、各々が果たすべき役割があり、慣れや手癖で、勿論行えることはあるのかもしれないがそれでも年に一度のハレの日ではあるのだ。そこで、どれほど日々の事を積み上げてきたのかを示さなければならない。何よりも、各々が至尊と仰ぐ相手に祈りを捧げる、衆目の中で祈りを捧げる場なのだ。
「ええ。そのあたり、私としては簡単な物は伝えているはずなのだけれど」
オユキがそう尋ねてくると言う事は、そもそも伝わっていなかったのかと。
「恐らく、ではなく。確証として」
そう、かなり手順がひっくり返ってしまっているのだと、そういった自覚はオユキにもある。そもそも、五穀豊穣の加護をよこせと祖霊を呼びつける。まずは、それ自体が色々と踏み倒している行いなのだ。それこそ、本来考えるべき手段と言うのは、もっと他の何かであるには違いない。オユキも、トモエはともかく、オユキにははっきりと自覚はあるのだ。これを、それこそオユキの振る舞いをかつてのゲームに照らし合わせてみれば、綺麗に抜け道を選んで歩き続けていると、そう見える事だろう。いや、オユキにしてもそう考えているのは、そうなのだが。
「アイリスさんは、凡そすべての獣の精に連なる種族を、ご存じですよね」
「全て、と言うのもまた難しいけれど、そうね。知らない種族のほうが、少ないわ」
「それが分かっていれば、さて」
そう、アイリスにとっては、凡そすべての獣は知識の内。だというのに、知らぬという相手など相場が決まっている。虚飾と絢爛などとはよくいった物だ。
「つまりは、トモエさん」
「ナザレアさんは、やはり木精ですか」
獣の特徴を持つのは、要はその由来を示すための物でしかない。故に、虚飾。そして、随分と流れに流れて、話が飾られて。東方には、どうやら樹木になる羊が、木の実の中に羊が。飾りに飾られた話は、絢爛たる輝きを確かに示して。当時は、羊と言うのは、その毛皮と言うのは確かな財産であったのだ。織物は、非常に高額な商品であり、貿易で度々使われるようになっていた。それは、後世でも変わらず。一部の毛織物などは本当に高額なのだ。
「ええ」
「本当に、私の祖霊をご存じなのですね」
「あの、トモエさんが刺繍で作ったのは、伝承そのままだと思うのですが」
「いえ、こう、私が直接お会いしている姿とは」
この場にいる、と言うよりも、オユキが放つ冷気が飲み物を冷ますため、常よりも頻度の高い入れ替えが必要になる席だらこそ。侍女たちが、近衛が侍女のふりをしている者達ではなく、侍女として初めから紹介されたナザレアが今ここが己の存在意義を発揮する場だとでも言わんばかりに、実に細かく配膳をしている。そして、己が、己の祖たる樹木が俎上に上ったと、よく聞こえる耳でもって聞きつけて。ついでとばかりに、そうした流れもあるだろうと考えて、ごく自然に入ってきたのだろう。
「木精としての、姿、ですか」
「いえ、祖たる樹木としての形をお持ちですから」
「だとすると」
トモエの頭の中には、どういえばいいのだろうか。刺繍で縫い留めた物は、まさに木に羊が成っているといった様子の物ではあった。だが、確かに祖霊として単独でとなるのであれば、そのような形ではないだろう。ここまで、複数のと言うのは見た事も無い。ただ、やはり、オユキの疑う事としては。
「確認と言うのは、ここからなのですが」
そう、確認するための、前提として置いただけに過ぎない。そして、ナザレアとアイリス。この二人に、恐らくは共通することとして。
「お二人とも、分霊という訳では無いのですよね」
「私は、違うわよ」
「私は、難しいところです」
アイリスは、はっきりと否定を。だが、ナザレアのほうは、言葉が伝わっていないわけでもないのだろうが、何やら少し考えている様子。難しい事、悩むべきことがあると言う事ではあるらしいのだが。
「私は、まぁ、長く生きているのよ」
「いえ、説明が伝わらないかもしれない、面倒を感じる気持ちは分かりますが」
「まぁ、あれよ。生憎と、親と呼んでもいい相手は、貴女の想像通りよ」
「跡継ぎをと望まれるのであれば、そうでしょうとも。と、言いますか、テトラポダは、成程そうした形式ですか」
「そのあたりは、また後で説明するけれど少なくとも七つの部族だけよ、私達みたいなのは」
つまりは、姫と呼ばれるに相応しいだけの、そうしたものが確かにあるのだと。公爵家、ユニエス公爵家というはっきりと水と癒しの血を継いでいるらしい家。そことの釣り合いは、十分すぎるというよりも、取れすぎる家であるというのが色々と。アベルにしても、そのあたりで随分と迂闊な事をしたのだと、そこからの流れで気が付くことになったのだろう。トモエとオユキ、異邦人たちが登録はまだとはいえきちんと夫婦であり、そちらの付属であるとみることが出来るうちはまだ良かったのだが。
「ナザレアさんは」
「その、祖霊様がそのようなあり方をされていますので」
「確かに、直接生まれたというのならと、そういう事ですか」
元の存在が、持っている伝承が。ナザレアにとっては、やはり判断に困るのだと。
「こう、私たちのように、祖となる樹木から直接と言うのは木精は基本的に一つだけなのですが」
「まぁ、祖と考えれば、確かにそうなりますか。ですが、そのあたりは属なのか、科なのか」
「分類学と言うのが、異邦にはあったと聞いていますが、こちらでは。それに、祖となる樹木と言うのは、長じた樹木がそれぞれに、ですから」
どうやら、唯一と言うのは全くもって、オユキの考える形とは違うものであるらしい。オユキのほうでも、ああ、成程等と思う物ではある。要は、樹木全体の祖となるものがあり、そこから発生した生命としての樹木。それが長じた結果として、とそういった流れであるらしい。だが、ここに直接祖霊そのものから産み落とされたナザレアと言う存在が、少し難しい存在が。
「確かに、祖霊様の特性としてと言うのがあって、そこから成った実からというのは」
「そう、なのですよね」
一部、つまりは分霊と呼んでも良いといえるし、そうでないともいえる。
「例えば、なのですが」
だが、そうして悩むナザレアとオユキに、トモエから。
「ナザレアさんは、今後長じたとして樹木のようにある事は」
「これでも木精ですから、それこそ時の果てでは樹木に還るでしょうが」
「それも、定かでは無いと」
「ご存じなのは、祖霊様だけかと」
ただ、その祖霊にしても発生が、起点となっている伝承もあるため色々と難しいと言う事であるらしい。加えて、こちらの世界に持ち込む時に、かつてのオユキの両親が多少なりとも形を変えているだろう。
「私にしても、こうして護符を身に着けていると」
「まぁ、そうね」
「オユキさんは、お茶会の席で侍女の方々が気遣うべきことが多そうですね」
トモエに一つ頼むと決めた。ならば、オユキにはかつてトモエが行っていたことが。
「冷めても良い、それを選んでいただく必要はありますか」
「そう、ね」
そして、今のオユキは基本的に周囲にしっかりと冷気を放っている。熱を奪う訳では無く、はっきりとオユキの周囲にある空気の温度が低いのだ。
「抑えが効くようなものでは、いえ、長じればどうにかなりそうですが」
「そう、ね。私が、こうして毛先にだけ降ろしているのと同じよ」
「理屈はわかりますが、習うべき相手も」
「私は、まぁ、祖霊様だものね。それこそ、カナリアあたりはどうなのかしら」
言われて少しは考えるのだが、すぐにオユキは首を横に振る。
「私の物も、恐らくは種族由来でしょうから」
「翼人種だもの、知識はかなりため込んでいるはずだけれど」
「前々から気になってはいましたが、アイリスさんは」
「いつだったかしら、私たちの暮らしていた場にハヤト様が存命だったころに」
どうにも、色々と情報を得ているからだろう。はっきりと、これまでは聞こえなかっただろうことがよく聞こえる。聞き取れるようになっている。
「ええと、色々とお伺いしたいのはやまやまではありますが」
ならば、一つはっきりとさせても良いだろう。そう考えていることを、オユキはここで訪ねてみる事とする。
「まずは、確認を。そう、改めて」
そう、確認すべきことがあり、これまでにも何度か行ってきたはずの事。部族の祭祀を継いだという、この狐の特徴を持ち日本の足で歩き、前肢であるはずの部分は人と変わらぬ構造を持つこの相手。獣人と呼ばれている相手は、基本的にそのような造りであるには違いない。イリアにしても、カナリアの側で護衛として日々研鑽を行うイリアにしても。巻角の羚羊と呼んでも良さげな、ナザレア迄。種類は、それこそかつての世界で凡そ神霊として祭られていたような獣の特徴を確実に。そも、ナザレアに至っては、瞳孔にしても人とはまた違い横に細長い瞳孔を持っている。
それ以外にも、見える範囲で。街中を歩けば本当に割合にしても、特徴にしても本当に様々。
「アイリスさんは、部族の祭祀を継いだと」
「ええ、間違いないわ」
「つまりは、付属するすべての知識も、そこに間違いはありませんか」
祭祀と言うのは、何も形ばかりではない。恙無く、正しく。執り行うというのであれば、それを他の者たちに式ができるというのならば、理解度はかなり深くなければいけない。それこそ、かつての世界でも、宮中祭祀を執り行う専門家などと言うのもいた。なんとなれば、例大祭ですら神職の者たちが。大晦日に至っては、寺に勤める者の一大行事。そこでは、各々が果たすべき役割があり、慣れや手癖で、勿論行えることはあるのかもしれないがそれでも年に一度のハレの日ではあるのだ。そこで、どれほど日々の事を積み上げてきたのかを示さなければならない。何よりも、各々が至尊と仰ぐ相手に祈りを捧げる、衆目の中で祈りを捧げる場なのだ。
「ええ。そのあたり、私としては簡単な物は伝えているはずなのだけれど」
オユキがそう尋ねてくると言う事は、そもそも伝わっていなかったのかと。
「恐らく、ではなく。確証として」
そう、かなり手順がひっくり返ってしまっているのだと、そういった自覚はオユキにもある。そもそも、五穀豊穣の加護をよこせと祖霊を呼びつける。まずは、それ自体が色々と踏み倒している行いなのだ。それこそ、本来考えるべき手段と言うのは、もっと他の何かであるには違いない。オユキも、トモエはともかく、オユキにははっきりと自覚はあるのだ。これを、それこそオユキの振る舞いをかつてのゲームに照らし合わせてみれば、綺麗に抜け道を選んで歩き続けていると、そう見える事だろう。いや、オユキにしてもそう考えているのは、そうなのだが。
「アイリスさんは、凡そすべての獣の精に連なる種族を、ご存じですよね」
「全て、と言うのもまた難しいけれど、そうね。知らない種族のほうが、少ないわ」
「それが分かっていれば、さて」
そう、アイリスにとっては、凡そすべての獣は知識の内。だというのに、知らぬという相手など相場が決まっている。虚飾と絢爛などとはよくいった物だ。
「つまりは、トモエさん」
「ナザレアさんは、やはり木精ですか」
獣の特徴を持つのは、要はその由来を示すための物でしかない。故に、虚飾。そして、随分と流れに流れて、話が飾られて。東方には、どうやら樹木になる羊が、木の実の中に羊が。飾りに飾られた話は、絢爛たる輝きを確かに示して。当時は、羊と言うのは、その毛皮と言うのは確かな財産であったのだ。織物は、非常に高額な商品であり、貿易で度々使われるようになっていた。それは、後世でも変わらず。一部の毛織物などは本当に高額なのだ。
「ええ」
「本当に、私の祖霊をご存じなのですね」
「あの、トモエさんが刺繍で作ったのは、伝承そのままだと思うのですが」
「いえ、こう、私が直接お会いしている姿とは」
この場にいる、と言うよりも、オユキが放つ冷気が飲み物を冷ますため、常よりも頻度の高い入れ替えが必要になる席だらこそ。侍女たちが、近衛が侍女のふりをしている者達ではなく、侍女として初めから紹介されたナザレアが今ここが己の存在意義を発揮する場だとでも言わんばかりに、実に細かく配膳をしている。そして、己が、己の祖たる樹木が俎上に上ったと、よく聞こえる耳でもって聞きつけて。ついでとばかりに、そうした流れもあるだろうと考えて、ごく自然に入ってきたのだろう。
「木精としての、姿、ですか」
「いえ、祖たる樹木としての形をお持ちですから」
「だとすると」
トモエの頭の中には、どういえばいいのだろうか。刺繍で縫い留めた物は、まさに木に羊が成っているといった様子の物ではあった。だが、確かに祖霊として単独でとなるのであれば、そのような形ではないだろう。ここまで、複数のと言うのは見た事も無い。ただ、やはり、オユキの疑う事としては。
「確認と言うのは、ここからなのですが」
そう、確認するための、前提として置いただけに過ぎない。そして、ナザレアとアイリス。この二人に、恐らくは共通することとして。
「お二人とも、分霊という訳では無いのですよね」
「私は、違うわよ」
「私は、難しいところです」
アイリスは、はっきりと否定を。だが、ナザレアのほうは、言葉が伝わっていないわけでもないのだろうが、何やら少し考えている様子。難しい事、悩むべきことがあると言う事ではあるらしいのだが。
「私は、まぁ、長く生きているのよ」
「いえ、説明が伝わらないかもしれない、面倒を感じる気持ちは分かりますが」
「まぁ、あれよ。生憎と、親と呼んでもいい相手は、貴女の想像通りよ」
「跡継ぎをと望まれるのであれば、そうでしょうとも。と、言いますか、テトラポダは、成程そうした形式ですか」
「そのあたりは、また後で説明するけれど少なくとも七つの部族だけよ、私達みたいなのは」
つまりは、姫と呼ばれるに相応しいだけの、そうしたものが確かにあるのだと。公爵家、ユニエス公爵家というはっきりと水と癒しの血を継いでいるらしい家。そことの釣り合いは、十分すぎるというよりも、取れすぎる家であるというのが色々と。アベルにしても、そのあたりで随分と迂闊な事をしたのだと、そこからの流れで気が付くことになったのだろう。トモエとオユキ、異邦人たちが登録はまだとはいえきちんと夫婦であり、そちらの付属であるとみることが出来るうちはまだ良かったのだが。
「ナザレアさんは」
「その、祖霊様がそのようなあり方をされていますので」
「確かに、直接生まれたというのならと、そういう事ですか」
元の存在が、持っている伝承が。ナザレアにとっては、やはり判断に困るのだと。
「こう、私たちのように、祖となる樹木から直接と言うのは木精は基本的に一つだけなのですが」
「まぁ、祖と考えれば、確かにそうなりますか。ですが、そのあたりは属なのか、科なのか」
「分類学と言うのが、異邦にはあったと聞いていますが、こちらでは。それに、祖となる樹木と言うのは、長じた樹木がそれぞれに、ですから」
どうやら、唯一と言うのは全くもって、オユキの考える形とは違うものであるらしい。オユキのほうでも、ああ、成程等と思う物ではある。要は、樹木全体の祖となるものがあり、そこから発生した生命としての樹木。それが長じた結果として、とそういった流れであるらしい。だが、ここに直接祖霊そのものから産み落とされたナザレアと言う存在が、少し難しい存在が。
「確かに、祖霊様の特性としてと言うのがあって、そこから成った実からというのは」
「そう、なのですよね」
一部、つまりは分霊と呼んでも良いといえるし、そうでないともいえる。
「例えば、なのですが」
だが、そうして悩むナザレアとオユキに、トモエから。
「ナザレアさんは、今後長じたとして樹木のようにある事は」
「これでも木精ですから、それこそ時の果てでは樹木に還るでしょうが」
「それも、定かでは無いと」
「ご存じなのは、祖霊様だけかと」
ただ、その祖霊にしても発生が、起点となっている伝承もあるため色々と難しいと言う事であるらしい。加えて、こちらの世界に持ち込む時に、かつてのオユキの両親が多少なりとも形を変えているだろう。
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