ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

文字の大きさ
58 / 68

58

しおりを挟む
「私はこのリサ・・・さんが午前の授業を出なかったと聞きました」

 私の名前を言いづらそうに言うシャロン。よほど私のことが気に食わないのだろう。それよりも午前の授業を出なかったことは、ダン様に呼び出されたからなのだから仕方がない。決してサボったわけではないのだ。なにしろ魔獣が大量発生したのだ。でもあの大惨事、この人たちは知らないんだよね。公表するつもりがないのか、できないのかわからない。でも何も知らないくせに何だかな、と言う気持ちだ。

「温情により特別に入学を許された立場でありながら、授業に出ないとは。一度話しておかなくてはと思いまして」

 そう言いながらシャロンは私を睨みつけている。憎悪がこもった視線が怖くてたまらない。そんなに怒ることなのか。平民のくせに生意気なとでも思われているのかもしれない。しかし私だって授業に出るつもりでいた。サボる気なんてなかったのだ。

「リサが授業に出なかったことはこちらで把握しています。あなたが注意することではありません」

 先生はピシャリとそう言ってのけた。言われたシャロンはただ先生を見つめていた。一瞬だがシャロンと先生の間に火花が見えた気がする。

「そうですか、でも・・・」

 シャロンの目がギラリと光った。怖い、まだ10代のはずなのにこの迫力。先生にも負けず劣らずって感じだ。女同士の戦いって怖いものがあるということを痛感した。私では太刀打ちできない。

「リサがダン様を突き飛ばしたという目撃情報があります」

 シャロンは誇らしげに胸を反らしている。どうしても私を断罪したいのだろう。めんどくさいな。もう私に絡まないでほしい。他の女子生徒もシャロンに倣って私を見る目がトゲトゲしい。

「・・・どういうことですか?」

 先生が冷静に聞いた。私にではなくシャロンにだ。

「目撃情報ということは誰かが見たということですね」

 先生はそう言って教室中を見回す。目から何かの光線が出ていそうな雰囲気だ。

「誰が、見たと言うのですか。名乗り出なさい!」

 先生はそう言いながら私のことを見ている。聞かれているのは誰が見たのかということ。私は関係ない。なので先生の喉に目を向けた。視線を合わせたくない時はこのようにズラせば良い。そしてこのまま私は何もせずに終わることを祈る。

 シーンと静まり返る教室。居心地が悪いが仕方がない。だいたい、悪いのは私ではないのだ。結果的にそうなってしまっただけで、元はといえばダン様が悪い。しかしもっと言えば、ダン様としても不可抗力だったと思われる。あの時は急いでいたし。なので誰も悪くない、誰かを責めることはできないと思う。でも私の意見は関係ないのだろうな。

「ダン校長は、リサのような非力な女性に突き飛ばされて体勢を崩すくらいに脆弱だと言うのですか?」

 誰も何も言わないので先生が静かに尋ねた。シャロンが息を飲むのが聞こえた気がした。クラス中がおかしな緊張感で満たされている。

「そんなことを言う者がいるのであれば、王室への侮辱と見なして私はその者を引き渡さなければなりません」

 侮辱、という言葉で誰かの小さな悲鳴が聞こえた。

「どうですか、本当に、リサは成人した男性を突き飛ばし、突き飛ばされた相手は地面に伏したのですか。本当にそんなことがあったのですか」

 先生の圧のある問いにシャロンはたじろいでいるように見えた。目が大きく見開いている。まるでつけまつげのCMみたいに、綺麗に伸びた長いまつ毛を私はバカみたいにジロジロと眺めてしまった。やっぱり少女マンガに出てくるだけあるよね。華やかで美しい。場違いにもそんなことを考えてしまう。

「・・・私の勘違いのようです」

 やや小声ではあるが、それでもはっきりとした口調でシャロンが言った。悔しそうに眉間に皺を寄せている。そんな様子も絵になる。シャロンは決して間違えてはいない。誰かの代わりに矢面に立ち、誰かの代わりに謝罪しているのだ。

「ではみなさん、自分のお教室に戻ってください。今後このような騒ぎを起こさないように」

 静かに教室を出ていく人たち。誰も何も話さない。その中でシャロンは毅然と前を向き優雅に歩いている。マンガではシャロンは女子生徒のリーダーのように描かれていた。王子の婚約者であり、高位貴族の令嬢。気高く常に自分の立場を弁えているその姿に、私は感動してしまったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

〘完結〛わたし悪役令嬢じゃありませんけど?

桜井ことり
恋愛
伯爵令嬢ソフィアは優しく穏やかな性格で婚約者である公爵家の次男ライネルと順風満帆のはず?だった。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

処理中です...