そんなのって反則です!

楠富 つかさ

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2話

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 藤堂先輩に協力すると宣言した翌週月曜日。

「そういえば、何で先週から美術室前をうろうろするようになったんですか?」

 壁にかけられたアナログ時計の針はどちらも12に近い場所を指している。そう、お昼休みだ。私と藤堂先輩はこれからの計画を練るために、美術部の部室兼美術準備室で一緒にお弁当を食べている。本来なら昼食をとるには適さない場所だが、人目につかないようにしながら二人で会話できる場所が限られてしまっているからだ。なにせ、藤堂先輩を生嶋先輩とくっつけることが目的だ。私と変な噂を立てられてしまうと、今後のプロデュースに支障をきたすことは容易に想像がつく。

「そうだね……先週で彼女を好きになって二年だったんだ」
「おや、中学生の頃からなんですか?」
「そうだよ。熱幕第一中学校。中学の修学旅行は男女まとまった班だったんだよ。そこで班長だったのが生嶋さん。

 旅行先の街で二人して迷っちゃってね。いろいろと話している内に彼女に夢中になったんだ」
好きな人のことを話す彼の表情は、今まで見た表情の中で一番輝いていた。これはますます彼の恋を成就させないと、そう思った私の心も燃える。

「取り敢えず、今日の部活で生嶋先輩に色々と質問してみます。結果は私からお伝えしますから、メアド教えてください。それと、何を聞いてほしいですか?」

 私がスマホを取り出しながら藤堂先輩に聞くと、

「後輩の女子のメアド教えてもらうの、初めてだ」

 なんていっている。

「同級生は?」

 と私が追加で訪ねると、

「生嶋さんのだけは……あるんだ」

 メアドの交換を開始しながらはにかむ先輩。本当に、きゅんとさせられる表情だことよ。でも、小動物を愛でる感覚に近い……と思う。

「それってすごいことですよ! あの生嶋先輩のメアドを知る男子。レアですよ! それだけ信頼されているというか、親密ってことでしょう?」
「そうかな……。そうだといいんだけど……」

 どこまでこの先輩は自信がないのやら……。

「ていうか、どうしてメールで告白しないんですか?」
そうすれば、メアドを知っているというアドバンテージも生かせるし、相手も返事をしやすいと思うのだけど……。
「できれば、直接言いたいんだ」

 でた、この無駄な男気。いや、無駄ってわけじゃないと思うけど、蛮勇な気がする。正直、生嶋先輩に告白して敗れた男子は山ほどいると思う。

「まぁ、ちょっとくらいカッコいいとこアピールしないとね」
「昼休みもそろそろ終わるね。じゃあ、生嶋さんにインタビューしてきてね。バイバイ」

 小さく手を振って立ち去るとか、女子か!? なんだろう、姉でもいるのかねぇ。そんな見当違いなことを考えながら、教室へ戻るのだった。
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