転生したらBL学園ゲームのモブでチャラい会計に愛されることになった件

陌屋

文字の大きさ
16 / 26
【薔薇のパル】になった件

生徒会室にお邪魔します。

しおりを挟む
終礼後宣言通り俺は生徒会室前に来ていた、トントントンと三つノックをする。
一拍置いて「どうぞ。」と言われる。
大きなドアを開くとそこには山積みになった書類に囲まれたメイさんがいた、メイさんは書類に目を落としたままだ。
「メイさん、来たよ。」
「あぁ、御形くん……と古鬼田くん!?」
書類から顔を上げたメイさんは予想外の来客に驚きに手からペンを落とした。
カラカラと無機質な音が生徒会に響く。
「うっす、メイさん。」
「どうして古鬼田くんが?」
目を白黒させるメイさんに古鬼田くんが頭下げる。
「俺が嶋崎から強引に聞き出したっす、今の生徒会の現状を。補佐は二人までいけたっすよね。」
古鬼田くんの隣でごめんと手を合わせる。
「え?二人までだけど…え?」
「俺にも手伝わせて下さい、二人より三人のが捗るっす。」
「…てな訳で、メイさん手続きの書類二枚頂戴?」
メイさんがゆらりと立ち上がりこちらへ来ると二人纏めてガバッと抱き締められた。
「…二人共ありがとう。」
そう言った声が少し震えている。
二人で顔を見合わせ笑う。
「これからよろしく。」
「よろしくっす。」
それから二人で補佐の手続き書類を記入し、大まかに仕事を振り分けられた。
「物品破損に被害届けに苦情…?」
「それらが生徒会の仕事を増やしてる原因…全部花咲ナズナ関連だよ。とんだ疫病神さね。」
メイさんはそう言い肩を竦めた。
古鬼田くんがあからさまに顔を顰める。
花咲ナズナはどうも学園中で猛威を奮ってるようだ。
設定では明朗快活、歯に衣着せぬ少年が何故そのような怪獣に成り果ててしまったのか…。
いや、設定ならメイさんも古鬼田くんも違えてる。
ここは【青薔薇学園物語】のようで違う世界なのだろう。
俺のようなイレギュラーが入り込んでしまったからか…と思考が悪い方向へ傾きかけ、頭を振る。
今はそんな事を考える前に目の前の書類を片付ける事に集中しなければ。
俺はペンを持ち、膨大な書類の山へ手を付け始めた。


片せども片せども減らぬ山に辟易し始めた頃、メイさんが立ち上がりパンッと手を鳴らした。
「疲れたでしょ?休憩~!」
メイさんの一声で俺達はペンを置いた。
「紅茶淹れるよ、こっちおいでェ~。」
メイさんは応接用の机に向かい手招いた、俺達二人は椅子から立ち上がりソファーに腰掛けた。
そこにメイさんがティーセットを持って戻って来た、カチャカチャと手際よくセットしていく。
目の前にティーカップが置かれた。
「メイさんありがとう。」
「あざっす。」
「召しあがれェ~。」
カップに口を付ける、アールグレイの香りが鼻に抜けてほっとした。
「メイさん紅茶淹れるの上手だね。」
「あ~よく家で淹れさせられてたからねェ~。」
メイさんの家は確か芸能一家で次男だった筈だ。
「美味しくてほっとする。」
古鬼田くんも俺の言葉に頷く。
「そう?なら良かった。」
その様子を見ながらメイさんが満足気にカップへ口を付ける。
そんな姿も様になっていて俺は見惚れていたが、ふと思い出し学生カバンを手繰り寄せ中からネクタイ達を取り出しソファーへ置く。
「メイさん、これ…。」
「…!ありがとう、ホントに持って来てくれたんだ。」
「当たり前だろ。」
「ふふっ…そうだね、御形くんは有言実行だもんね。」
そう言うとメイさんもカバンを手繰り寄せネクタイを取り出し、俺に差し出したので受け取りカバンへ大事にしまう。
メイさんもソファーに置かれたネクタイを自身のカバンへしまうと。
「こっちも交換しちゃおうか。」
そう言い緩く結われたネクタイを解いた、俺も頷きネクタイを解く。
自然とどちらともなく互いの首へネクタイを回すと結い直す。
俺が少し強めに締めるとメイさんが「ぐぇっ」と言って舌を出す、それに笑っていると控えめな拍手が聞こえて来た。
そちらに二人で視線をやると、目を細め笑った古鬼田くんがいた。
「二人共おめでとう。」
その言葉に二人で一瞬顔を見合わせ、古鬼田くんに向き直ると同時に口を開いた。
「「ありがとう!」」
その後は十分程休憩し、日が暮れるまでぐちゃぐちゃに積み上がっていた書類を整理した。
「そろそろ帰ろうか、お腹も空いたでしょ?」
ぐったりとしながらも頷き、処理が終わった書類を纏めて席を立つ。
古鬼田くんがぐっと伸びをして言う。
「もう遅せぇし、このまま直で食堂行きません?」
「そうだね、そうしよっか!」
俺も頷き筆記用具をカバンにしまう。
三人並んで生徒会室を後にし、寮の食堂へ向かった。


食堂はもう空いていて直ぐに夕飯にありつけた。
三人共空腹でトレーの上は直ぐに無くなった、メイさんが口を開く。
「ホントに二人共ありがとう、毎日心にも余裕が無くなっていっててさァ…何度投げ出してしまおうかって考えてたの。」
古鬼田くんと二人で静かにメイさんの言葉に耳を傾ける。
「でも、これでも俺は生徒から、学園から選ばれて任命された訳じゃん?逃げるのも悔しいし…だから御形くんからの申し出には感動したし、まさか古鬼田くんまで来てくれると思わなかったし。俺の心は二人に救われたって訳、いい恋人といい後輩を持って俺は嬉しいよ。ホント逃げなくてよかったァ…。」
「それはメイさんの人徳だよ。」
古鬼田くんも頷く。
「他の人だったら行ってねぇっす。」
「二人共ォ~泣かせないでよねェ~!」
三人で笑い合う、嗚呼幸せだなと思った。
27年間こんな幸せな時間あっただろうか、友人はいたが仕事を始めてから疎遠になったし、仕事場では淡白な付き合いしかなかった。
不幸ではなかったけど、夢なら覚めないでくれと願う。
もう俺の居場所はここなんだ。
「そうだ、明後日の休みAmberでモーニングでもしない?」
メイさんの言葉に思考から引き戻される。
「いいっすね。」
「モーニングのオムレツが最高でねェ~。」
「オムレツ!」
俺はその単語に食いつく、俺は恥ずかしかなハンバーグやオムライス等子どもが好きなレパートリーが好きなのだ。
「そういやぁ、お前食堂でもオムレツ食ってたよな。」
ブンブンと頭を縦に振る、その様子にメイさんが笑う。
「首取れちゃうよ、御形くん。そっかァ御形くんオムレツ好きなんだ?」
「ハンバーグとかも好きっすよ。」
「…もしかして、御形くん子ども舌?」
言われドキィッとする、しかし事実なので大人しく頷く。
「ふはっ!可愛いィ~!」
よしよしと頭を撫でられ赤面する。
「でも珈琲は飲めるんだよな?」
「美味しいのなら…実家でも母さんが淹れてくれてたし。」
「Amberのは自家焙煎だからね!さて、そろそろ部屋に戻ろうか。」
メイさんの一声で席を立ち、食堂を後にする。
疲れているだろうにメイさんは送ると言って部屋の前までついてきた。
「じゃあ、また明日。」
古鬼田くんが一足先に部屋へ戻る。
メイさんは少しだけと言って俺の部屋に入って来た。
瞬間抱き寄せられ、顔中に口付けが降って来た。
俺はそれに身を任せ、メイさんの首へ腕を回す。
「…正式に【薔薇のパル】になってくれてありがとう。大切にするから。」
「こちらこそ選んでくれて、ありがとう。」
伸び上がりメイさんの唇に口付ける。
メイさんからもちゅっちゅっと軽く口付けられる、暫く二人で唇の感触を楽しみあった。
メイさんはぺろりと俺の唇を舐めると、名残惜し気に唇が離れる。
「…週末、抱いてもいい?」
震えた声で、でも真剣な目で見つめられた。
俺もそれに真剣な目で返す。
「いいよ、メイさんの好きにして。」
「だァーっ!御形くん男前すぎ!…大事にするから。」
「うん。」
ぎゅうと抱き締める腕に力が入り身体が密着した。
俺はメイさんの首筋に顔を埋めた。
この人になら抱かれてもいい、いや、抱かれたいと思った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? 夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...