転生したらBL学園ゲームのモブでチャラい会計に愛されることになった件

陌屋

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【薔薇のパル】になった件

俺らの反撃

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それからは至って平和なものだった、時折教室で古鬼田くんが花咲ナズナに絡まれてはいたが。
そして五月一日【青薔薇祭】当日を迎えた。
【青薔薇祭】は生徒同士の親睦を深め合うと共に社交の場の練習の為の立食会という名目だが、実際は【薔薇のパル】の相手を見付ける場として使われている。
皆【青薔薇祭】では意気揚々と正装を身にまとい、自身の魅力を誇示する。
俺達も例に洩れず正装を身にまとっていた。
この正装、実は三人揃って見繕いに行ったものである。
古鬼田くんはグレーのセミワイドカラーのシャツに琥珀色のダブルの襟なしベスト、同色のアスコットタイ、グレーのスラックスにグレーのフロックコートを羽織っており長身を際立たせている。
メイさんはホワイトのスタンドカラーのシャツにベージュがベースで碧色の刺繍が入ったダブルショールカラー型ベスト、同色のアスコットタイ、ホワイトのスラックスにホワイトのジャケットを羽織っておりスラッとした着痩せ体型を活かした組み合わせだ。
そして俺はホワイトのウイングカラーのシャツにブラックのダブルピークドラペル型ベスト、同色のアスコットタイ、ブラックのスラックスにジャケット…馬子にも衣装だな。
アスコットタイは三人揃って結び方はプレーンノットである。
【青薔薇祭】では入学式同様、生徒会の挨拶がある為メイさんとは大ホールに入って直ぐ別れた。
俺ら二人は壇上にほど近い壁際へと待機する。
色めき立つ大ホールの中、先ずは長い学園長のスピーチが始まる。
次いで生徒会の面々が壇上に上がって来て、代わる代わる短い挨拶をして壇上を下りて行く。
それが終わると次は…。
「生徒代表嶋崎御形、壇上へ。」
俺の出番だ。
【青薔薇祭】では入学式と同じ様にその年首席で入った者が挨拶出来るのだ、本来であれば自らのプロモーションを行える場面であるが俺の、俺らの目的は違う。
古鬼田くんと目を合わせ頷き合い、俺はメイさんとすれ違い壇上へと上がる。
演台のマイクの前へ行き、皆を見回す。
生徒達の意識はまだ壇上へ向いている、俺は小さく深呼吸し口を開いた。
「先ずはこの様な場を設けて下さりありがとうございます、首席の嶋崎御形です。皆さん今日は沢山楽しんで下さい。そして私事ではありますが皆さんに聞いて欲しい事があります、今の生徒会の現状についてです。今の生徒会は壊滅状態です、皆さんも実はご存知なのではないでしょうか?」
大ホールがざわめき立ち、向かって来る人影があるが無視をして続ける。
「現在の生徒会は会計の護迎メイ、会計補佐の古鬼田平子、嶋崎御形の三名のみで成り立っております。しかし、生徒会長函辺蘭を筆頭に護迎メイへのリコールが宣言されてしまいました。そこで皆さんにお願いです、生徒へのリコールアンケートでどうか反対に入れて欲しいのです。平和な学園生活存続の為、宜しくお願い致します。長くなりましたが、私からは以上です。」
俺は一つ頭を下げれば、古鬼田くんに足止めされていた生徒会メンツを横目に壇上を後にしメイさんのそばへ向かった。
生徒達の視線が俺らと生徒会メンツを行ったり来たりしているのがわかる。
素知らぬ顔でメイさんの前に立てば、メイさんが目を白黒させながら迎えてくれた。
「御形くん…。」
メイさんは俺の名前を口に出した後、口をパクパクさせている。
「俺らでメイさんを守るって決めたんだ。」
「そうっす。」
生徒会メンツを足止めしていた古鬼田くんもこちらへ帰って来た。
チラリと後ろを振り返ると函辺蘭達がこちらを睨みつけている、知らぬ顔でメイさんに向き直りニコッと笑いかける。
「今日は楽しもうね。」
「…ッうん!」
メイさんが息をのみ頷いた。


三人でソフトドリンクを片手にちまちまと料理を頂いる、普段は二人にだけ刺さる視線が今日は俺にも刺さる。
慣れない視線にさらされながら、サーモンにカッテージチーズを乗せたピンチョスを食べていると古鬼田くんが紫髪の青年に声をかけられていた。
あれは確か生徒会書記の双子で、バスケットボール部の真澄スズシロだ。
何やら小声でやりとりをしていたと思ったら古鬼田くんがこちらへ来て声をかけて来た。
「ちょい離れるわ。二人で楽しんでくれ。」
「ん、わかったよ。」
「古鬼田くんも楽しんでェ~。」
去って行く二人の背中をフリフリと手を振り見送った。
古鬼田くんと真澄スズシロに接点があるとは意外だったが、友好な関係っぽかったしいいかと思いもう一つピンチョスを摘んだ。
「美味しい?御形くん。」
「ん…美味いよ。」
「…ありがとね、さっきは。」
「うん?あぁ、内緒にしててごめん。言ったら反対されると思ったから。」
「そうだね…多分反対してたと思う。」
「だと思った。」
二人で顔を見合わせ笑った。
「あ、付いてる…。」
メイさんがそう言うと腕を伸ばし俺の口端を拭い、その指をそのままペロリと舐めた。
「!メイさん今公共の場だから…ッ!」
「え?あ、ごめんね。」
周りを見渡すが皆それぞれ楽しみ始めていて、視線はなかった。
ほっと胸を撫で下ろし、メイさんの全身を改めて見る。
「メイさんよく似合ってる。」
「御形くんも似合ってるよ。」
「馬子にも衣装じゃない?」
ジャケットを寛げて見せハハッと笑う。
「ううん、凄く似合ってる。可愛いよ。俺達の見立ては間違いなかった。」
メイさんが俺の全身を見ながらうんうんと頷く。
可愛いは解さないが、二人が選んでくれたから俺も気に入ってはいる。
「飲み物空になったね、俺取ってくるよ。」
「ん、ありがとう。」
メイさんは空になったグラスを持って人混みへ消えて行った。
俺が次何を食べようと物色していた時だった。
「あの…嶋崎くん。」
見知らぬ人に声をかけられた。
「はい?」
「あの!応援してます!負けないで頑張って!」
「え?あ、ありがとうございます。」
「私も!応援してる!アンケート絶対反対に入れるから!」
代わる代わる色んな人から声をかけられた。
じんわりと人の優しさが胸に沁みた、強行してよかった。
「御形くん?」
そんな事をしていると、メイさんがグラスを片手に戻って来た。
皆気付けば散り散りと去って行っていた。
「何かあった?」
メイさんが心配気に俺の顔を窺い見る。
「んー…励まされてた。頑張ってって。」
皆メイさんには声がかけづらいのか、メイさんが戻ってからはパタリと止んだ。
折角ならメイさんにも言って欲しかったな。
「俺じゃなくメイさんに言えばいいのにね。」
「御形くんの言葉にみんな心打たれたんだよ、きっと。」
メイさんからグラスを受け取り、礼を言い口を付ける。
なんとなしに視線を反対の壁際へやると、古鬼田くんと真澄スズシロが談笑しているのが目に入った。
古鬼田くんも楽しめている様子で良かった。
美男二人が談笑しているのは様になる。
俺らはどう見えているんだろう、隣のメイさんを見上げた。
「ん?どうしたの?御形くん。」
「…ううん、何でもない。こういう格好で立食も悪くないね。」
「楽しめてるなら何よりだよ。後で俺達も踊りに行こうか?」
気付けばゆったりとした曲が流れている。
「俺、ダンスなんて出来ないよ?」
「俺に任せてくれればいいよ。」
メイさんがにっこりと笑いかけて来たので、頷き笑い返す。
暫くは二人であれもいいこれもいいと立食を楽しんだ。


グラスが空になる頃、メイさんに手を取られた。
「そろそろ踊りに行こうか。」
「うん。」
空のグラスを片手に二人で壇上前に向かう、グラスは途中で返却しダンスしている中へ交ざった。
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