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第4章:境界の楽園
第5話:楽園の終焉、そして
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館の天井を突き破り、白銀の光と共に天界の追手が姿を現した。
かつてのエルリエルの同胞たち——感情を排した「執行官」たちが、冷徹な槍を携えて浮遊している。
「堕天使ベルフェゴール、および背教者エルリエル。……貴公らの魂を今ここで、消滅という名の『浄化』に処す」
冷たい宣告が響く中、ベルフェは不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
儀式を終えた彼の身体には、エルの灰色の魔力が混ざり合い、かつての魔王以上の威圧感を放っている。
「『浄化』だぁ? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ。俺たちは今、最高に気分がいいんだ。……邪魔するなら、その翼を一枚残らず毟ってやるぜ」
ベルフェがエルの腰を引き寄せると、エルリエルは静かに、けれど明確な殺意を込めて追手を見据えた。
「……私は、あの日一度、彼を突き落とした。……だが、二度目はない。彼に触れる者は、神であろうと私が許さない」
エルリエルの背中から、灰色に輝く「異形の翼」が展開された。
それは清廉な白でも、忌まわしい黒でもない。互いの魂を繋ぎ、呪いを愛に変えた者だけが持つ、混沌の色だった。
「行くぞ、エルリエル。……俺たちの力を見せてやろうぜ」
二人が同時に地を蹴る。
魂が連結された今、言葉などいらない。ベルフェが攻めればエルが守り、エルが放つ光の矢をベルフェの闇が加速させる。
かつて天界を震撼させた二人の天才が、一対の存在として振るう力は、追手たちを圧倒した。
「馬鹿な……、これほどまでの力が……ッ!」
「……驚くことじゃねえ。俺たちは、二人で一人の『怪物』になったんだよ」
ベルフェの漆黒の炎が館を包み込み、天界の光を焼き尽くしていく。
崩れ落ちる館、消えゆく追手たち。
その炎の渦の中心で、二人は互いの存在だけを見つめていた。
やがて、すべてが静まり返った後。
館は跡形もなく消え、そこには深い闇が広がる荒野だけが残った。
だが、二人の手は固く結ばれたままだ。
「……終わったのか。……これで、もう誰も追っては来ないだろうな」
エルリエルが、傷ついたベルフェの頬に手を触れる。
ベルフェはその手を力強く握りしめ、かつてないほど穏やかな、けれど独占欲に満ちた瞳でエルを見つめ返した。
「ああ。天界も、地上の連中も、もう俺たちには関わらねえ。……これからは、あんたが嫌だと言っても、俺しかいねえんだよ」
「……ああ。望むところだ。……ベルフェ」
二人は、夜明けのない、けれど二人だけが輝く深淵へと歩き出す。
そこは楽園でも地獄でもない。
ただ、一対の魂が永遠に溶け合う、新しい世界の始まりだった。
かつてのエルリエルの同胞たち——感情を排した「執行官」たちが、冷徹な槍を携えて浮遊している。
「堕天使ベルフェゴール、および背教者エルリエル。……貴公らの魂を今ここで、消滅という名の『浄化』に処す」
冷たい宣告が響く中、ベルフェは不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
儀式を終えた彼の身体には、エルの灰色の魔力が混ざり合い、かつての魔王以上の威圧感を放っている。
「『浄化』だぁ? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ。俺たちは今、最高に気分がいいんだ。……邪魔するなら、その翼を一枚残らず毟ってやるぜ」
ベルフェがエルの腰を引き寄せると、エルリエルは静かに、けれど明確な殺意を込めて追手を見据えた。
「……私は、あの日一度、彼を突き落とした。……だが、二度目はない。彼に触れる者は、神であろうと私が許さない」
エルリエルの背中から、灰色に輝く「異形の翼」が展開された。
それは清廉な白でも、忌まわしい黒でもない。互いの魂を繋ぎ、呪いを愛に変えた者だけが持つ、混沌の色だった。
「行くぞ、エルリエル。……俺たちの力を見せてやろうぜ」
二人が同時に地を蹴る。
魂が連結された今、言葉などいらない。ベルフェが攻めればエルが守り、エルが放つ光の矢をベルフェの闇が加速させる。
かつて天界を震撼させた二人の天才が、一対の存在として振るう力は、追手たちを圧倒した。
「馬鹿な……、これほどまでの力が……ッ!」
「……驚くことじゃねえ。俺たちは、二人で一人の『怪物』になったんだよ」
ベルフェの漆黒の炎が館を包み込み、天界の光を焼き尽くしていく。
崩れ落ちる館、消えゆく追手たち。
その炎の渦の中心で、二人は互いの存在だけを見つめていた。
やがて、すべてが静まり返った後。
館は跡形もなく消え、そこには深い闇が広がる荒野だけが残った。
だが、二人の手は固く結ばれたままだ。
「……終わったのか。……これで、もう誰も追っては来ないだろうな」
エルリエルが、傷ついたベルフェの頬に手を触れる。
ベルフェはその手を力強く握りしめ、かつてないほど穏やかな、けれど独占欲に満ちた瞳でエルを見つめ返した。
「ああ。天界も、地上の連中も、もう俺たちには関わらねえ。……これからは、あんたが嫌だと言っても、俺しかいねえんだよ」
「……ああ。望むところだ。……ベルフェ」
二人は、夜明けのない、けれど二人だけが輝く深淵へと歩き出す。
そこは楽園でも地獄でもない。
ただ、一対の魂が永遠に溶け合う、新しい世界の始まりだった。
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