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「っ……あぁぁっー‼︎」

彼女は堰を切ったように声を上げ泣き出した。仮面をつけている故、涙は見えない。だがヴィレームには分かる。フィオナの涙は、きっと宝石の様に美しいと……。

ヴィレームは立ち上がりフィオナの身体を抱き寄せた。すると彼女も、縋り付く様に身体を寄せてくる。思わず口元が緩む。

健気で可愛い人だ、本当に……。

初めて彼女と出会った瞬間、分かったんだ。あぁ、彼女が僕の『番』なのだと。僕の様な魔法の使い手は、人の魂が見える。そして己の番は、魂同士が呼び合う。

そしてフィオナは、とても美しい『魂』を持っていた。

ヴィレームがわざわざこんな辺境の国まで来たくて仕方がなかった理由……それは彼女の魂が呼んでいたのだとあの瞬間、理解した。

ー彼女に会う為に僕は此処まで来たんだー


「フィオナ……疲れてしまっただろう。少し休んだ方がいい」

部屋の外で控えていたクルトに声を掛け、フィオナの部屋を準備させる。程なくして準備が整うと、ヴィレームは未だ泣いている彼女を横抱きにし、部屋まで運んだ。

「フィオナ、君の屋敷には使いを出す。だから今日は此処でゆっくりお休み」

ベッドに入りシーツに潜っている彼女の頭を優しく撫でると、一瞬躊躇う素振りを見せるが素直に頷いてくれた。その事に安堵し、息を吐く。

「フィオナ」

彼女の仮面に触れると、身体をビクリと震わせるが、ヴィレームは構わずにそのまま仮面を外そうとした。

「っいや……」

彼女はヴィレームの手を掴み振り払おうとするが、決して仮面から手を離す事はしなかった。仮面を、ゆっくりと外す……。

「フィオナ」

仮面の下の彼女は、未だに瞳に涙を溜めていた。その涙を拭う様に目尻に口付けを何度も落とす。

「ヴィレーム、さま……」

「思った通りだった。とても愛らしい」

零れ落ちそうなくらいに大きな瞳が、更に大きく見開き、はらはらとまた涙が流れる。こんなに美しいと思える涙を見るのは生まれて初めてだった。
頬に触れながら、額を彼女のそれに合わせて笑って見せる。

「フィオナ。僕にその愛らしい顔を、もっと良く見せて?」



フィオナは泣き疲れ、小さな寝息を立て眠っている。その表情は穏やかだ。

「ヴィレーム様。本当に宜しかったのですか?フィオナ様の許可を取らずとも……」

「大丈夫だよ。フィオナなら必ず頷いてくれる。だって彼女の魂が僕を呼んだから、僕は此処にいるんだ。そうだろう?」

クルトは自信満々に言うヴィレームに苦笑している。だが、これ以上ない事実だ。

ヴィレームは、ヴォルテーヌ家への使いにある書簡を持たせた。



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