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キュゥ~。
「だめよ、フリュイはお留守番ね」
ダンスパーティー当日。フィオナは支度を整え終わると、鏡台から立ち上がる。するとフリュイが足元に纏わり付いてきた。甘えた声を上げている。
「とてもお似合いです、フィオナ様」
シビルは目を細め、微笑む。どうせお世辞に決まっていると普通なら思うが、彼女は元が猫だから、性格の問題なのかは分からないがお世辞などは一切言わない。何時も似合わないものは似合わないとハッキリ言う。なので素直に礼を述べた。
その時、丁度部屋の扉がノックされ開いた。
「フィオナ、準備はどう?」
そう言いながら入って来たヴィレームを見て、フィオナは呆然とする。
普段も勿論格好良くて素敵だが、今日は一段と際立っている。何というか、キラキラと光輝いて見える。比喩とかではなく、本当に眩しい……。
青を基調とした衣装に、白の外套を羽織り、実に爽やかで王子さながらだ。これは絶対令嬢達がほっておく筈がない。
少し前に廊下で公爵令嬢のロザリーに捕まった時の事を思い出した。結局、ヴィレームのパートナーはフィオナになったが、彼女はどうなったのだろうか……。あの後ヴィレームには、直接申し込んだのだろうか。ヴィレームからは何も聞いていない。気になる気持ちはあるが、そこは怖くて聞けない。
ただ彼は彼女ではなくフィオナを選んでくれた……それが事実であり、今はそれで十分だと思った。
ただ懸念は残る。あそこまで啖呵を切ったのだ。簡単に諦めるとは到底思えない……。
「良く、似合ってるよ。想像以上だ……フィオナ、可愛いよ」
ヴィレームはフィオナを抱き寄せ、額に口付けを落とす。恥ずかしさに、顔が熱く感じた。
「ヴィレーム様こそ、素敵です……その、やはり私などがヴィレーム様のパートナーなんて……申し訳なくて」
「フィオナ、先日も言ったけど僕のパートナーは、君しかあり得ない。だから、そんな風に言わないで欲しいな」
頬を撫でられたフィオナは、戸惑いながら頷いた。
「じゃあ、行こうか」
ヴィレームの手が腰に回され、二人は寄り添う様に歩き出した。
ダンスパーティーは学院の敷地内にある別館の大広間で行われる。
フィオナとヴィレームが到着した時には既に沢山の生徒達が集まっていた。思わずフィオナは一歩踏み出し足を止めた。
広間へ入った瞬間、広間中の者達から視線を向けられたからだ。一気に緊張が走る。
「フィオナ」
腰に回されたヴィレームの腕が、更に密着する様にフィオナを抱き寄せる。彼を見上げると、微笑みをたたえていた。
フィオナはグッと足に力を込め、前へと足を踏み出した。
「フィオナ、喉渇かない?」
二人は暫く壁際で話をしてのだが、不意にヴィレームがそう言い出した。
しかもフィオナの返事を待たずに、飲み物を取りに行ってしまった……。確かに喉は渇いているが、こんな公衆の面前で飲む事は出来ない。それはヴィレームも理解してくれている筈なのに……何となくモヤモヤした。
一人になり、急激に心細くなる。先程からずっと感じている周囲からの視線も、変わらず痛い。フィオナに対する視線だけではなく、ヴィレームを見る女性達の艶っぽい視線を感じていた。やはりヴィレームは、ロザリーだけではなく多くの女性から人気があるのだと改めて痛感する。そして艶っぽい視線に混じりフィオナへと向けられる嘲けや嫉妬の感情……。
私みたいな人間が、ヴィレーム様のパートナーなんて、あり得ないわよね……。
ふと遠目でヴィレームの姿を確認すると、煌びやかな令嬢達に取り囲まれているのが見えた。瞬間、胸が締め付けられる。
側にいてくれるって……約束したのに……。
ぎゅっと手を握り、俯く。するとカツッと音と共に視界に靴が見えた。だが、ヴィレームのではない。息を呑み、恐る恐る顔を上げた。
「だめよ、フリュイはお留守番ね」
ダンスパーティー当日。フィオナは支度を整え終わると、鏡台から立ち上がる。するとフリュイが足元に纏わり付いてきた。甘えた声を上げている。
「とてもお似合いです、フィオナ様」
シビルは目を細め、微笑む。どうせお世辞に決まっていると普通なら思うが、彼女は元が猫だから、性格の問題なのかは分からないがお世辞などは一切言わない。何時も似合わないものは似合わないとハッキリ言う。なので素直に礼を述べた。
その時、丁度部屋の扉がノックされ開いた。
「フィオナ、準備はどう?」
そう言いながら入って来たヴィレームを見て、フィオナは呆然とする。
普段も勿論格好良くて素敵だが、今日は一段と際立っている。何というか、キラキラと光輝いて見える。比喩とかではなく、本当に眩しい……。
青を基調とした衣装に、白の外套を羽織り、実に爽やかで王子さながらだ。これは絶対令嬢達がほっておく筈がない。
少し前に廊下で公爵令嬢のロザリーに捕まった時の事を思い出した。結局、ヴィレームのパートナーはフィオナになったが、彼女はどうなったのだろうか……。あの後ヴィレームには、直接申し込んだのだろうか。ヴィレームからは何も聞いていない。気になる気持ちはあるが、そこは怖くて聞けない。
ただ彼は彼女ではなくフィオナを選んでくれた……それが事実であり、今はそれで十分だと思った。
ただ懸念は残る。あそこまで啖呵を切ったのだ。簡単に諦めるとは到底思えない……。
「良く、似合ってるよ。想像以上だ……フィオナ、可愛いよ」
ヴィレームはフィオナを抱き寄せ、額に口付けを落とす。恥ずかしさに、顔が熱く感じた。
「ヴィレーム様こそ、素敵です……その、やはり私などがヴィレーム様のパートナーなんて……申し訳なくて」
「フィオナ、先日も言ったけど僕のパートナーは、君しかあり得ない。だから、そんな風に言わないで欲しいな」
頬を撫でられたフィオナは、戸惑いながら頷いた。
「じゃあ、行こうか」
ヴィレームの手が腰に回され、二人は寄り添う様に歩き出した。
ダンスパーティーは学院の敷地内にある別館の大広間で行われる。
フィオナとヴィレームが到着した時には既に沢山の生徒達が集まっていた。思わずフィオナは一歩踏み出し足を止めた。
広間へ入った瞬間、広間中の者達から視線を向けられたからだ。一気に緊張が走る。
「フィオナ」
腰に回されたヴィレームの腕が、更に密着する様にフィオナを抱き寄せる。彼を見上げると、微笑みをたたえていた。
フィオナはグッと足に力を込め、前へと足を踏み出した。
「フィオナ、喉渇かない?」
二人は暫く壁際で話をしてのだが、不意にヴィレームがそう言い出した。
しかもフィオナの返事を待たずに、飲み物を取りに行ってしまった……。確かに喉は渇いているが、こんな公衆の面前で飲む事は出来ない。それはヴィレームも理解してくれている筈なのに……何となくモヤモヤした。
一人になり、急激に心細くなる。先程からずっと感じている周囲からの視線も、変わらず痛い。フィオナに対する視線だけではなく、ヴィレームを見る女性達の艶っぽい視線を感じていた。やはりヴィレームは、ロザリーだけではなく多くの女性から人気があるのだと改めて痛感する。そして艶っぽい視線に混じりフィオナへと向けられる嘲けや嫉妬の感情……。
私みたいな人間が、ヴィレーム様のパートナーなんて、あり得ないわよね……。
ふと遠目でヴィレームの姿を確認すると、煌びやかな令嬢達に取り囲まれているのが見えた。瞬間、胸が締め付けられる。
側にいてくれるって……約束したのに……。
ぎゅっと手を握り、俯く。するとカツッと音と共に視界に靴が見えた。だが、ヴィレームのではない。息を呑み、恐る恐る顔を上げた。
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