結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【年齢について考える】9夜の特別レッスン(妄想)

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「ただいま戻りました」

 帰宅して玄関のドアを開ける。毎日の習慣で帰宅の挨拶をするが、返事がない。電気がついておらず、廊下はしんと静まり返っていた。どうやら、大鷹さんはまだ帰宅していないらしい。急いで靴を脱いでスリッパに履き替えてリビングに向かう。ジムからの折り返しの電話を待つにしても、部屋が寒いのは遠慮したい。

 リビングのエアコンのスイッチを入れる。自室で着替えをしようかと思ったが、いったんダイニングテーブルの椅子に座る。急に着替えるのが面倒になってしまった。大鷹さんも帰ってきていないし、このまま折り返しの電話を待つことにした。


 スマホを見ながら時間をつぶしていると、急に画面が着信画面に切り替わる。帰宅して10分くらい経っていた。

「もしもし」

「倉敷さんの携帯でよろしいでしょうか?私、女性専用ジムの高橋と申します。今、お時間よろしかったでしょうか?」

「帰宅したので大丈夫です」

「ありがとうございます。今回は当社のジムの無料体験にお申込みいただきありがとうございます。それに関していくつかお話ししていきたいと思います」

 電話はジムスタッフからで、内容は明日の予約時間、ジムの場所、持ち物、服装などの確認がメインだった。説明されること一つ一つに相槌を打ちながら、必要なところはメモを取っていく。

「動きやすい服装というのは、ジャージの方がいいですか?あと、まだ靴を準備していないのですが」

「スカートでなければ大丈夫です。会員の方の中にはジャージを履いていらっしゃる方もいますが、ジーパンなどの動きやすいズボンで来られる方もいらっしゃいます。ズボンでいらしていただければ問題ありません。靴に関しては、明日は貸出し致します。あとは水筒をご持参下さい。ジムの体験途中の水分補給の為にお願いします。明日、倉敷さんが来るのを楽しみに待っています」

「ワカリマシタ。明日はよろしくお願いします」

 電話は5分程で終了した。入会する気満々でいたが、服や靴を準備はまだしていない。スーパーの中にジムが入っているので、そこのスーパーで服や靴を揃えたらいいだろう。無料体験後にジムに使う物を揃えよう。


「ただいま戻りました」

 タイミングよく大鷹さんが玄関のドアを開ける音がした。大鷹さんが帰宅したようだ。電話も終わったのでちょうどよい。時計を見ると、18時15分となっていた。大鷹さんが帰ってきたので、夕食の準備を始めよう。

「おかえりなさい。今から夕食の準備をしますね」

「お願いします」

 基本的に私たち夫婦はどちらも食事の準備をしている。曜日などは決まっていないので、早く帰ってきた方が作るというルールができ上がっていた。今日は私の方が先に帰宅しているので、私の当番だ。

 大鷹さんが自室で着替えをしている間に、サッサと夕食を作ってしまおうと椅子から立ち上がり、冷蔵庫を覗く。そこで、自分がまだ着替えを終えていないことに気付く。私も急いで着替えをするため自室に向かった。

『いただきます』

 冷蔵庫に豚肉と白菜があったので、今日の夕食はミルフィーユ鍋にすることにした。材料を切って重ねて鍋に入れて蒸すだけでできるので、冬の簡単鍋でよく作っている。

 あという間に完成したミルフィーユ鍋を私と大鷹さんの分をよそってテーブルに並べる。今日はご飯を炊くのが面倒だったので、鍋の〆に冷凍うどんを入れることにした。

「今さっき、ジムの無料体験についての電話がありました。朝も言いましたが、明日の10時に体験に行ってきます」

 私がジムについて話すと、嬉しそうに大鷹さんが相槌を打ちながら聞いてくれる。

「そうですか。頑張ってください」

「ジムの帰りに服や靴とかを揃えようと思っています。やっぱり、やるからには道具からしっかり揃えないと。そういえば、今日、職場の人に肩を痛めたことを指摘されました。河合さんや梨々花さん以外にもばれてしまって、ちょっと恥ずかしかったです」

「紗々さんはわかりやすいですから。僕も家での筋トレ、頑張ります」

「大鷹さんはジムに行かなくていいんですか?健康のためと思えば、ある程度の出費はアリだと思いますけど……。いや、やっぱり大鷹さんがジムに通うのは反対です」

 もし、大鷹さんがジムに通うとなったらと想像する。今でさえモテモテの大鷹さんなのに、鍛え上げて魅力が増したらどうなってしまうのか。いや、鍛え上げる前に大鷹さんのことだ。きっと……。

「あの、もしかして、僕で変な妄想をしていませんか?」

「そ、そんなことはありませんよ。ただ、大鷹さんのことなので、ジムに入会した際には、専属トレーナーから夜の特別レッスンを受けないかと誘いがあるのかもしれな」

「そこまでで結構です」

 私の言葉は途中で大鷹さんに遮られてしまった。大鷹さんならありえるので妄想ではない気がする。私の場合は女性専用ジムで、さらに私にそこまでの魅力はないので、夜の特別レッスンなどという妄想が現実になることはないだろう。
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