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一日目の部活は、マネージャー二人に仕事内容を教えてもらっているうちに、あっという間に終わってしまった。短距離選手のインターバルのタイムを計ったり、そのタイムを記録したりと、教えてもらったことを実践することもあった。
「そろそろ部活終わりの時間だから、片づけてクールダウンに入ってください」
山田という、光流と同じ学年のマネージャーが部員に声をかける。今日は、長距離の選手は学校の外を走り、その場で解散ということになっているため、この場には短距離専門の部員しかいなかった。
【今日はお疲れ様です】
部員は軽くジョギングをして、クールダウンの体操を始める。その最中、こっそりとアリスは光詩に近付き、ねぎらいの言葉をかける。そして、返事を聞かずに短距離の部員のもとに戻っていく。
「もしかして、橘花さんと仲がいいの?」
『え゛え゛と……』
その光景を見た山田先輩がボソッとつぶやく。アリスが自分の彼女だと正直に答えていいものか迷ってしまい、すぐに返事ができない。
「別に橘花さんと仲良くても、私も、陸上部のみんなも気にしないと思うけど」
『お゛れ゛の゛こえ゛、気にな゛らな゛い、です、か?』
部員が体操をしている間は、光詩たちは手持ち無沙汰になる。光詩は気になっていたことを質問する。アリスとの話題からそらすという理由もあったが、純粋に疑問に思っていたことだ。マスクを外しているため、光詩の声がおかしなことは、口を開いたらすぐにわかってしまう。すでに自己紹介もしているが、部員から特に奇異の目を見られることはなかった。
「ああ、声ねえ。橘花さんのことで、みんな慣れてるから、もう一人くらい声が変な人が入っても気にしないんじゃない?それに、私たちは一緒に練習はしているけど、最終的には個人競技になるから、あまり他人のことは気にしないのかもね?」
どうやら、個人競技ということが光流の声を気にしないらしい理由らしい。よくわからないが、気にされないのは良いことだ。
(とりあえず、部活は頑張れそうだ)
光流はほっと胸をなでおろす。
「じゃあ、今日の部活はこれで終わり。お疲れさまでした」
顧問が声をかけて部活が終わる。部員は着替えをして帰る支度を始めた。
部活が終わり、光流は一人で帰宅した。普段は帰宅部で帰りのHRが終わるとすぐに帰宅していたため、電車はあまり混んでいなかった。しかし、今日は部活を終えての帰宅だったため、電車は帰宅ラッシュの人で混みあっていた。
(アリスと一緒に帰りたかったけど)
アリスはそのまま、同じ一年生の部員と話が盛り上がっていたので、そこに話しかける勇気がない光流は、さっさと学校を出ることにした。一人での登下校が寂しいというわけではないが、もしかしたら一緒に帰宅できるかもしれないという期待があったため、少しだけ気分が沈んでいた。そんな光流の気分を表しているかのように空は薄暗くどんよりしていた。
『ただい゛ま゛」
「お帰り。部活動だった?」
家に着くころには、夏といえ、日が暮れて暗くなり始めていた。玄関では夜奏楽が出迎えてくれた。
『たの゛しかった』
「そう、それならよかったよ。夕食の準備はできているみたいだから、さっさと着替えてきなよ」
光流の言葉に嬉しそうな顔をした夜奏楽だが、一瞬にして真顔に戻ってそのままリビングに行ってしまった。
(おなか減ったな)
家に帰り、緊張が解けたのか、体が空腹を訴え出し、さらには体が疲れたと悲鳴を上げていた。今日は荷物を運んだだけだが案外気を張って疲れたらしい。光流は、正直な反応を示す体に苦笑して二階の自分の部屋に向かった。
「そろそろ部活終わりの時間だから、片づけてクールダウンに入ってください」
山田という、光流と同じ学年のマネージャーが部員に声をかける。今日は、長距離の選手は学校の外を走り、その場で解散ということになっているため、この場には短距離専門の部員しかいなかった。
【今日はお疲れ様です】
部員は軽くジョギングをして、クールダウンの体操を始める。その最中、こっそりとアリスは光詩に近付き、ねぎらいの言葉をかける。そして、返事を聞かずに短距離の部員のもとに戻っていく。
「もしかして、橘花さんと仲がいいの?」
『え゛え゛と……』
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『お゛れ゛の゛こえ゛、気にな゛らな゛い、です、か?』
部員が体操をしている間は、光詩たちは手持ち無沙汰になる。光詩は気になっていたことを質問する。アリスとの話題からそらすという理由もあったが、純粋に疑問に思っていたことだ。マスクを外しているため、光詩の声がおかしなことは、口を開いたらすぐにわかってしまう。すでに自己紹介もしているが、部員から特に奇異の目を見られることはなかった。
「ああ、声ねえ。橘花さんのことで、みんな慣れてるから、もう一人くらい声が変な人が入っても気にしないんじゃない?それに、私たちは一緒に練習はしているけど、最終的には個人競技になるから、あまり他人のことは気にしないのかもね?」
どうやら、個人競技ということが光流の声を気にしないらしい理由らしい。よくわからないが、気にされないのは良いことだ。
(とりあえず、部活は頑張れそうだ)
光流はほっと胸をなでおろす。
「じゃあ、今日の部活はこれで終わり。お疲れさまでした」
顧問が声をかけて部活が終わる。部員は着替えをして帰る支度を始めた。
部活が終わり、光流は一人で帰宅した。普段は帰宅部で帰りのHRが終わるとすぐに帰宅していたため、電車はあまり混んでいなかった。しかし、今日は部活を終えての帰宅だったため、電車は帰宅ラッシュの人で混みあっていた。
(アリスと一緒に帰りたかったけど)
アリスはそのまま、同じ一年生の部員と話が盛り上がっていたので、そこに話しかける勇気がない光流は、さっさと学校を出ることにした。一人での登下校が寂しいというわけではないが、もしかしたら一緒に帰宅できるかもしれないという期待があったため、少しだけ気分が沈んでいた。そんな光流の気分を表しているかのように空は薄暗くどんよりしていた。
『ただい゛ま゛」
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『たの゛しかった』
「そう、それならよかったよ。夕食の準備はできているみたいだから、さっさと着替えてきなよ」
光流の言葉に嬉しそうな顔をした夜奏楽だが、一瞬にして真顔に戻ってそのままリビングに行ってしまった。
(おなか減ったな)
家に帰り、緊張が解けたのか、体が空腹を訴え出し、さらには体が疲れたと悲鳴を上げていた。今日は荷物を運んだだけだが案外気を張って疲れたらしい。光流は、正直な反応を示す体に苦笑して二階の自分の部屋に向かった。
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