補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第十八話

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「おはよう。今日も討伐クエストを受けに来た。今出ている依頼を見せてくれ」
「ああ。おはよう。ハンス。随分朝が早いな。今開いたばっかりだぞ。今日出ているクエストはこれだけだ。ああ。そうだ。二人とも今日のクエスト達成すれば、恐らく次の等級、白銅級に上がれるぞ」

 セレナを登録に連れてきた際、受付の男はあからさまにハンスの行為に反感の意を見せていた。
 しかし今は、ハンスがセレナを奴隷としてではなく、冒険仲間として対等に扱っている事に気付いていた。
 それからはむしろ気さくに話しかけてくるようになった。
 ハンスも知識だけはあるものの、実経験を元にしたアドバイスなどは非常に有用で、出来るだけこの男がいる受付を選ぶようにしていた。

「ほう。もう白銅か。随分早いな」
「そりゃあ、毎日毎日、普通のパーティの何倍もの素材やら討伐対象の証明部位やら持ってこられちゃ、上も評価を上げざるを得ない。お前ら今じゃ結構噂が立ってるぞ。気を付けろよ? 噂ってのは良いもんだけが広がるとは限らないからな?」
「もう十分酷い目には合わされたからね。これ以上はごめんこうむりたいな。ひとまずこれを受ける。手続きをしてくれ」
「あいよ。帰りはいつもぐらいの時間だな? 昨日はえらく早いし、討伐達成の報告も嬢ちゃんだけだからびっくりしたぜ」

 受付の男に言われて、ハンスは昨日セレナに報告を任せたことを思い出した。
 あの時は浮かんできた新理論で頭がいっぱいになっていたので、それ以外の記憶が曖昧だ。

「ああ。むしろ今日はいつもより遅くなるかもしれん。色々試したいことがあるんでね」
「そうかい。まぁ、気を付けな。お前ら位の頃が一番危険な目に合うことが多いからな」

 ハンスは後ろに向けて手を振ると、ギルドを後にし、受けた依頼の討伐対象が出没するエリアまで足を運んだ。
 セレナの嗅覚により、早速討伐対象の群れを見つけた。

 今回の討伐対象は、アーミーアント。
 名前のように軍隊のように群れで襲ってくる恐ろしい魔物だ。

 敵に応じて様々な隊列を組み、その強烈な顎で敵を噛み砕いていく。
 数が多いことと、硬い甲殻で身を守った厄介な魔物だ。

 通常のパーティでは、広範囲に効果のある攻撃魔法で大半を一網打尽にするのが基本的な攻略方法だ。
 しかしハンスもセレナも攻撃魔法はもちろん、範囲攻撃の手段を持たない。
 地道に一匹一匹倒していかなければならず、しかもセレナの力と武器では簡単には致命傷を与えることが出来ない。

 相性としては最悪の相手だったが、ハンスはある理由から、この魔物を選んだ。
 理由は群れが密集して整然と集まっていること。

 ハンスは昨日寝ずに考えた補助魔法を放つための呪文を唱え、魔法陣を描き始めた。
 いつもと多少異なる呪文の内容と、魔法陣の図柄だったが、その事に気付けるのは開発したハンスくらいだろう。

広範囲睡眠ラージスリープ!」

 いつもは魔物に向かって放たれる光線は、アーミーアントの群れの上空に飛び、そこに群れの大きさと同程度の巨大な魔法陣が映し出された。
 するとその魔法陣がアーミーアントの群れに向かって落ちてくる。

 魔法陣がアーミーアントの群れに当たると、その範囲にいたアーミーアントはみな眠りについてしまった。
 その甲殻には魔法陣の一部の紋様が張り付いている。

「ちょっと待ってくれ。もう一つ、いや後で他にも打つが、まずは攻撃するまでに一つ魔法をかけるから、まだ群れには近づかないでくれ」
「分かりました。ハンス様」

 セレナはいつアーミーアントが目を覚まし、動き出しても大丈夫なよう、短剣を構えたまま、群れから少し離れた位置で待機している。
 ハンスは先程と同じように、以前から唱えているものとは少し異なる呪文を唱えながら魔法陣を描き終える。

広範囲肉体軟化ラージソフト!」

 先程と同じく、一度群れの上に巨大な魔法陣が現れ、その後落下し、アーミーアントに新しい紋様が張り付く。
 対象の健康を害する危険性があるため、強化する補助魔法の重ねがけは出来ないが、弱体化に関しては気にすることはない。
 時間さえ許せば複数かけることも可能だと。
 ハンスは自身の開発した新しい魔法に満足したように、頷きながら、セレナに声をかけた。
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