補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第十九話

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「よし。セレナ。試しにその群れの一番手前にいるやつの背中を思い切り短剣で刺してみてくれ。他のやつに触れたりしないよう気を付けろよ。この状態異常は衝撃に弱いんだ。気付くと効果が切れ、目を覚ますからな」
「分かりました。ハンス様。行きます!」

 セレナは一番手前にいるアーミーアントの背中目掛けて短剣を振り下ろした。
 かなりの抵抗の後、辛うじて短剣はアーミーアント甲殻を貫き、柔らかい内部まで侵入した。

 背中を刺されたアーミーアントは、短剣がぶつかった瞬間、睡眠の効果が切れたのか、ぴくりと動いたが、すぐに身体を貫かれ、絶命した。
 その結果を見たハンスは残念そうな、かつ満足そうな顔をしていた。

「やはりこの魔法のかけ方では、範囲は広がるものの、効果はいまいちだな。睡眠(スリープ)もあの程度では本来起きないはずなんだが、効果が弱まっているせいか起きてしまった。だが、それでも広範囲に一度にかけられるというのは、利点だな」

 ハンスは一人で今見た結果の考察を口にしていた。
 自分の思考を口に出す癖がハンスにあることを理解するまで、セレナはそれなりに戸惑いを感じていた。
 ハンスの話す内容は難解で、セレナはほとんど理解できないし、なんて答えれば良いのか分からなかったからだ。
 しかしハンスの言葉が自分に向かって放たれたものではないことが分かり、それ以後は隣で分からないのに分かった振りをして頷くのを止めた。

「セレナ。もう一度魔法をかけるから、また少し離れていてくれ」
「はい!」

 セレナはまた群れから離れた位置で待機する。
 ハンスは先程とまた異なる様式の呪文と魔法陣を使い、魔法を完成させた。

複数肉体軟化マルチソフト!」

 先程とは異なり、魔法陣から複数の光線がアーミーアントに向かって放たれる。
 その光線が当たったアーミーアントの甲殻には、以前のように小さな魔法陣が丸々張り付いていた。
 しかし複数離れた光線のうち、いくつかはアーミーアント当たらずに、地面に当たり何事も無かったかのように消えた。

「よし。セレナ。今度は今魔法が当たったやつにさっきと同じ様に攻撃してくれ」
「はい。ハンス様」

 セレナは新しい魔法陣が張り付いたアーミーアントのうち、他のアーミーアントが邪魔にならないものに狙いを定めた。
 先程と同じ様に背中に短剣を振り下ろす。
 今度はほとんど抵抗もなく、短剣はアーミーアントの身体を貫き、地面に到達した。

 それを見たハンスはまた満足そうな顔をして頷いていた。
 セレナは何がなんだか分からず、ハンスに説明を求めた。

「今のは何が違うんですか? 初めのは、確かに柔らかくはなっていましたが、いつもに比べると全然硬いままでした。次のはいつも通りにびっくりするくらい柔らかくなっています」
「初めにかけた二つは広範囲ラージ、その名の通り、広範囲に魔法陣を放ちその範囲にいる魔物全員に効果があるんだが、効果が薄まって、一体ずつにかけるよりもかなり弱くなってしまうんだ。これだと、今のセレナの攻撃じゃあ、ちょっと難しいね。まぁ、使い方次第では強力だと思うけどね」
「それで、次の魔法は?」
「最後にかけたのは複数マルチ、複数に一度にかけられる魔法で、効果は一体ずつにかけるのとほとんど差異は無い。ただ、見ての通り。今のままじゃ、狙って当てるのが難しい。複数放っても当たらなければ意味が無いからね。今みたいに動かない相手に適当に当てるくらいしか、今のところ使い道はないね」

 セレナはひとまず効果が薄いけど広いというのと、複数一度に打てるが、当てられないという事だけ理解し、いつもの様に首を縦にぶんぶんと振った。
 分からなくても、今のはハンスの独り言ではない。
 セレナに向かって説明してくれているのだから、無視するわけにはいかなかった。
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