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第3話【ついてこないでよ】
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「遅刻だー!!」
神様の相手をしていたら電車を一本逃してしまった。
私の住んでいる場所は会社のある街から見たらかなり田舎にあり、電車は三十分に一本しかない。
何度か乗り換えて、私は滑り込みセーフで会社へと辿りつき、社員証を出退社を記録する機械にかざした。
駆け足でロッカーに入り、白衣を羽織ると自分席へと向かう。
部屋に入ったときには、すでに朝礼が始まる直前で、居矢名部長が立ち上がった後だった。
私は仕方なく入り口に立ち、朝礼が終わることを待つことにする。
「えー、こんな時期だが今朝張り出されたから皆知ってる通り、木塚が来月から異動になった。引継ぎもあるだろうから、各々今月末、と言っても今週だけだが。まぁ、今週中に終わらせておくように」
そう言って居矢名部長は私の席に目を向ける。
「おい。肝心の本人はどうした? 今日は休みだと連絡は受けてないぞ?」
「あ、あのー」
私は恐る恐る手を挙げる。
その声に反応して、部署の皆が私を注目した。
「なんだ。木塚くん。そんなところで何やっとる。まぁいい。仕事の引継ぎは頼んだぞ?」
「は、はい」
朝礼が終わり私はこそこそと自分の机に向かい、一息つく。
そして、先ほど見た居矢名部長の顔色を思い出し、一人考えに耽る。
「部長、顔色が青かったけど、なんだったのかな。あの色……」
「青は悲しみの色じゃぞ。つまり、あの瞬間、あの男は悲しみの感情を抱いていたということじゃな」
「きゃあ!?」
私が思わず声を上げる。
その声に周りが何事かと視線を向けてきて、私は慌てて誤魔化すための作り笑いをした。
「木塚先輩どうしたんですか? 虫でも出ました? ここ、結構築年数古いですからね。地震の時とか不安で……って、先輩にしては珍しいですね。スマホにストラップ。しかもそれ、キツネですか? 可愛いですね」
「え? あ! あ、うん。ありがとう。昨日たまたま見つけてね。それで、可愛くてつい。あはははは」
話しかけてきた後輩に適当な話を返し、私はスマホを握りしめ、急いでトイレに駆け込んだ。
「どういうこと!? 神様!! しかもその体! なんでこんなに小さくなってるの!?」
「うるさいのう。神なのじゃから、身体の大きさくらい自在で当然じゃろう。童のことが気に入ったと言ったじゃろう? ひとまず他の者にはワシの声は聞こえんからな。あまり話しかけるでない。気が違ったと思われるぞ」
「じゃあ、ついてこないでよぉぉぉ!!」
トイレの中で、私の心からの叫び声が響いたのだった。
神様の相手をしていたら電車を一本逃してしまった。
私の住んでいる場所は会社のある街から見たらかなり田舎にあり、電車は三十分に一本しかない。
何度か乗り換えて、私は滑り込みセーフで会社へと辿りつき、社員証を出退社を記録する機械にかざした。
駆け足でロッカーに入り、白衣を羽織ると自分席へと向かう。
部屋に入ったときには、すでに朝礼が始まる直前で、居矢名部長が立ち上がった後だった。
私は仕方なく入り口に立ち、朝礼が終わることを待つことにする。
「えー、こんな時期だが今朝張り出されたから皆知ってる通り、木塚が来月から異動になった。引継ぎもあるだろうから、各々今月末、と言っても今週だけだが。まぁ、今週中に終わらせておくように」
そう言って居矢名部長は私の席に目を向ける。
「おい。肝心の本人はどうした? 今日は休みだと連絡は受けてないぞ?」
「あ、あのー」
私は恐る恐る手を挙げる。
その声に反応して、部署の皆が私を注目した。
「なんだ。木塚くん。そんなところで何やっとる。まぁいい。仕事の引継ぎは頼んだぞ?」
「は、はい」
朝礼が終わり私はこそこそと自分の机に向かい、一息つく。
そして、先ほど見た居矢名部長の顔色を思い出し、一人考えに耽る。
「部長、顔色が青かったけど、なんだったのかな。あの色……」
「青は悲しみの色じゃぞ。つまり、あの瞬間、あの男は悲しみの感情を抱いていたということじゃな」
「きゃあ!?」
私が思わず声を上げる。
その声に周りが何事かと視線を向けてきて、私は慌てて誤魔化すための作り笑いをした。
「木塚先輩どうしたんですか? 虫でも出ました? ここ、結構築年数古いですからね。地震の時とか不安で……って、先輩にしては珍しいですね。スマホにストラップ。しかもそれ、キツネですか? 可愛いですね」
「え? あ! あ、うん。ありがとう。昨日たまたま見つけてね。それで、可愛くてつい。あはははは」
話しかけてきた後輩に適当な話を返し、私はスマホを握りしめ、急いでトイレに駆け込んだ。
「どういうこと!? 神様!! しかもその体! なんでこんなに小さくなってるの!?」
「うるさいのう。神なのじゃから、身体の大きさくらい自在で当然じゃろう。童のことが気に入ったと言ったじゃろう? ひとまず他の者にはワシの声は聞こえんからな。あまり話しかけるでない。気が違ったと思われるぞ」
「じゃあ、ついてこないでよぉぉぉ!!」
トイレの中で、私の心からの叫び声が響いたのだった。
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