顔色を窺って生きてきたら、顔色が見えるようになった私は、化粧品売り場で悩み相談員として過ごしてます

黄舞

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第5話【初めての接客】

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「うぅぅぅ……緊張するぅ……」
「全く、情けないのう。研修とかいうものをきちんと受けたのじゃから、何も恐れることはあるまい?」

 地元の百貨店の売り場に経つ私に、神様はそんな言葉を投げる。
 確かに異動してしばらくは、研修を受けていた。

 しかしそんなことで苦手な人との関わり合い、接客が得意になるなら世話はない。
 それに習うことがありすぎて、きちんと身に付けられたか我ながらはなはだ疑問だ。

「今日から販売員として参加してもらう木塚さんです。メイクの方はまだ担当する予定は無いので、しばらくは皆さんのサポートということになります」

 販売員のリーダーが他の人に私を紹介する。
 みんなバッチリメイクで、そもそも薄い化粧しかしてこなかった私とは見た目からして全然貫禄が違う。

「初めまして。よろしくね。木塚さん」
「分からないことがあったらなんでも聞いてね。最初はみんな初心者なんだから、遠慮しちゃダメよ?」

 私が配属されたブースは基本的に四人居る。
 つまりリーダー以外に二人先輩販売員が居るのだが……。

(うぅぅぅ……口では優しいこと言ってるけど、顔色は不穏な色してるぅ)

 どうやら先輩販売員二人には、私の配属は歓迎されていないようだ。
 ただでさえ苦手な接客業の上に、職場の人間関係も不良なんて辛すぎる。

 ちなみにリーダーである城子じょうしさんは私と同じく正社員だ。
 だけど、他の二人のてきさんと大虫おおむしさんは正社員ではなく、立場的には私の方が上というややこしい関係にもある。

「うぅぅぅ……胃が痛い……」
「心配せずとも、お主にはワシの力が宿っておるのじゃ。その接客とやらもなんの問題ないと思うぞ? ただし、お主がきちんと相手のことを考えたら、の場合じゃけどの」

 そんなこと言われても、この神様の力で授かったのは顔色が見えると言うだけのもの。
 今みたいに、口と裏腹な感情を知るには役立つが、それを知ったところで、という気もする。

「まったく……まぁ、これ以上はワシの領分を超えてしまうからな。せいぜい、独りよがりにならずに頑張るのじゃな」

 神様の話を横に流しながら、私は緊張しながら来客を待つ。
 しばらくしてまばらに人は来たけれど、来た人は城子さんや他の二人が対応し、運良く私が直接接客することは無かった。

「ふー。このままレジの対応だけで終わらないかなぁ」

 そんなことを考えていると、世の中はそんなに甘くないということを思い知らされる。

「あのー。すいません」
「は、はい!?」

 かけられた声に内心驚きながらうわずった声で返事をする。

「あの、ちょっと見たいものがあるんですが、良いですか?」
「は、はい。もちろんです!」

 とうとうその時が早くも訪れてしまった。
 私は慌てて周りの先輩たちを見るが、三人とも接客中だ。

「リップを……見たいんですが……」

 そう言って、私よりも若く見える、ほとんど化粧もしてなさそうな女性は、私に期待の目を寄せてきたのだ。
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