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私を見下す可愛い妹と、それを溺愛する婚約者はもう要らない…私は神に祈りを捧げた。

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 私の婚約者は、私の可愛い妹を溺愛している。

 今日だって…前から約束していた外出を、突然断られてしまった。

 これじゃあ…どちらが婚約者か分からないわね─。

「…お願いだから、もう彼を誘うのは辞めて?」

「お断りよ!悔しかったら、お姉様も私みたいに可愛くなれば?そうしたら、彼から溺愛されるわ。」

 そう言って、頭を下げる私を馬鹿にしたように見下す妹─。

「それに、彼も言ってたわ。俺たちは、美形同士お似合いだって。逆に…お姉様みたいな地味女、俺とは釣り合わないって愚痴ってたわよ。」

 そう…あの人、そんな事を─。
 
※※※

 今日は朝から、屋敷の中が騒がしい。
 どうやら、お姉様が家出をしたらしい。

 別に…あんな女居なくなったっていいじゃない。
 元々、地味で存在感もないんだし。

 それにこのままあの女が居なくなれば、彼との婚約は破棄になって…そしたら、私が彼の新しい婚約者になれるんだし─。

 あぁ、今日は彼と約束があったんだ。
 彼が迎えに来るから、そろそろ準備をしないと─。

 ところが、部屋のドアが開き…予定よりもうんと早く彼が来てしまった。

「居なくなったって…この部屋にでも隠れているんじゃないのか?…お、お前は誰だ!?」

 彼は私を見るなり、驚いた表情を浮かべ叫び声を上げた。

「な、何を言ってるの…?私です、あなたが愛する妹の─」

「この屋敷には、娘は一人しか居ないぞ!?怪しい女め…まさか、泥棒か?」

 彼は私の言う事を全く信じてくれず…私を捕えようと、飛びかかって来た。
 
 私はそんな彼から逃げるようと、バルコニーに躍り出た。

「誰か、来てくれ!」

 そして彼と私は、そこで揉み合いになってしまった。
 
「おい、大人しくしろ…うわぁ─!」

 その瞬間、彼は手すりに置いた手を滑らせ…と、同時に私の腕を掴むと…私達はそこから、真っ逆さまに庭へと転落した。
 
 すると、その叫び声を聞いた両親や使用人たちが一斉に庭に集まって来て…彼を下敷きにし、呆然としている私を捕えた。

「何だお前は、どうやってこの屋敷に入った?」

 額から流れる血で、目がよく見えないけれど…これは、お父様の声だわ─。

「わ…私は元々、この家の娘で…妹の─」

「一人娘を探しているこの忙しい時に、馬鹿な事を言うな!家に泥棒に入った挙句、殺人未遂まで犯す犯罪者は牢獄行きだ!」

「そんな…お願い、私を思い出してよ─!」

※※※

 妹が憲兵に連れて行かれたのを見計らい、私は何食わぬ顔で家に戻って来た。
 
 婚約者に冷たくされ、傷付いた心を落ち着かせる為に、幼い頃より通っている神殿に祈りを捧げに出ていたと言って─。
 
 妹と落ち下敷きになった彼は、すぐに医者の元へ運ばれ、命に別状は無かったが…顔に深刻な傷を残す事になり、褒め称えられていた美貌を失った。
 
 すると彼は、傷ついた自分を支えてくれと私にすり寄って来たが…最早、私の愛は冷めてしまっていた。
 
 だって…裏で妹と一緒になり、私と婚約破棄しようとこっそり企んでいた事を知ってしまったから…。
 そんなあなたとこの先やって行くのは、もう無理よ。

 そして…捕らえられた妹は、牢の中に居る。
 
 妹はあの時の傷が悪化し、あのご自慢の可愛い顔は、今や見る影もないという。

 彼女は泥棒の疑いが晴れ、両親が自分の事を思い出し、迎えに来てくれるのを待っているそうだけれど…そんな日は、絶対に訪れないでしょうね。

 だって…私が神殿の守護神に願い、あなたの存在をあの家から消してしまったのだから─。

 あなたは…元々は捨て子で、あの家の娘ではないのよ。

 神殿の前に捨てられ、弱っていた赤子のあなたを見つけた幼い私が憐れに思い…私の妹にして下さるよう、両親に頭を下げたから、あなたは今まで何不自由なく過ごして来れたというのに─。

 その私を馬鹿にし、裏切り…そんな事をする妹など、もう要らないもの…。
 
 あの悪人たちに、ふさわしい罰をという私の望みを、守護神様はしっかりと叶えてくれたようね─。

 そして、もう一つの願いも─。

 その後私は、通っていた神殿で、守護を授けに貰いに来た領主様のご子息と仲良くなった。
 そして、あっという間に婚約の話が進み…私は今、彼の元で暮らして居る。

 私の事だけを想い、容姿で人を判断しない優しい方と結ばれたい─。

 その願いも、こうして無事に叶い…私はとても幸せだわ─。
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