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姫のラブソング編
第85話 バッドエンディングルート
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「グラン王国はケト月10日、メルル王国との同盟を解消し、同日、同国に攻め込んだ。戦いはグラン軍が終始、同国を圧倒。現在のグラン軍は、メルル王国の中間にあるベルの丘を占拠し、そこを橋頭保として要塞を建設中。一ヶ月の間に、現在の3倍の物資と兵力を調達した後は、一気に城へ攻め込む予定。」
※グラン王国日報より
「戦争が始まった……」
ケンタは新聞を食卓の上に置くと、ため息をつく様にそう言った。
私は戦争という言葉に胸が痛くなった。
グラン王国とメルル王国は、お父様の時代から同盟関係を築いていた。
お互い、足りない物資を輸送し合い、災害があった時は助け合う友好的な関係だったはずだ。
それをグランがメチャクチャにした。
スライム島の周辺の島からも大量の希少資源が採掘出来ることを知ったグランは、その島に兵を送り込みグラン王国の領土としての既成事実を作った。
だけど、そこは元々メルル王国の領土(無人島だった)。
二国の関係悪化は、この領有権の争いが原因だ。
私は、スライム島にいるお父様のことが気になった。
「いずれはメルル王国以外の5つの王国も征服し、全世界の民のための理想郷を作る」
新聞で、グランはそうインタビューに答えている。
事実上の世界征服宣言だった。
「こんなことになるなんて……」
ケンタが、行き場の無いもどかしさをぶつける様に、食卓に拳を叩きつける。
振動で食器がけたたましい音を立てて揺れる。
彼は自己嫌悪に陥ったかの様に、両手で頭を抱えている。
「私のせいだ……」
「え?」
「ん……何でも無い」
私は小さく首を横に振った。
だけど、こんな世界に、未来になったのは私のせいだ。
私がケンタの復讐を止めたからだ。
私はケンタと一緒にいたい。
それだけなのに、沢山の犠牲が次から次へと生まれて行く。
この未来は間違っていて、やっぱりケンタを救世主にすべきだったんだ。
「キャー!」
「わー!」
村人の叫び声が聞こえる。
私は咄嗟に床板をめくり、ケンタの手を取った。
彼を引きずり落とすように、地下の隠れ穴に落とす。
彼の声を無視し、急いで床板を穴の上に敷く。
その上にタンスを移動させる。
と、同時に玄関の扉が蹴破られる。
全身黒づくめの親衛隊がズカズカと、私達の家に入ってくる。
「グラン王国親衛隊だ。ここに雑用係のケンタがいるだろ? 出せ!」
「いません」
「スライム島のルキという男を拷問したら、ケンタが逃げたことを吐いた。調べたらここにいることが分かったんだ」
スライム島と聞いて、お父様の身にも何かあったと思った。
隊長と思われる男が、細身の剣を一振りし、食卓に載った食器をはらう。
床に落ちた食器が衝撃音と共に砕け散る。
「ここにいるのは分かっているんだ。かくまうとお前もこうなるぞ」
隊長が粉々になった無残な食器を剣で指し示す。
こんな奴ら、私なら一掃出来るのに。
だけど、魔法は使えない。
私がジェニ姫だとバレたら、色々と厄介だ。
私がジレンマを抱えている間に、他の隊員達が寝室や風呂場、ベランダに至るまで荒らしまわっている。
私はケンタとの思い出が詰まった調度品が破壊されるのを見るたびに、怒りが湧いて来る。
私の怒りに呼応するかの様に大気中の水分子が私に集約される。
「お前がさっきから背にしている、そのタンス……怪しいな」
隊長の手がニュッと伸び、私の頭越しにタンスに触れようとする。
「ダメ……」
ひっ、と声を上げ隊長が手を引っ込めた。
彼の手はしもやけの様に焼けただれていた。
私の身体から発する氷のオーラで火傷したのだ。
「お前……」
隊長がまじまじと私の顔を見る。
私は黒装束で顔半分を隠している。
だけど、隊長はさっきの現象と私の目を見て、何か悟ったようだ。
「こんなところでお会いするとは。ここは引き上げたほうがいいようですな」
全隊員、撤退した。
壊れて蝶番から外れた玄関のドア。
開け放たれた長方形から、外の世界が見える。
親衛隊に連行される村の男達。
泣きながら追いかけるその恋人、家族達。
きっと、徴兵されたんだ。
「ふー」
私はため息をつき、タンスを背もたれにして座り込む。
「ジェニ姫」
床からケンタの声がする。
「やっぱり、僕、グランに復讐してマリナを取り戻す」
つづく
※グラン王国日報より
「戦争が始まった……」
ケンタは新聞を食卓の上に置くと、ため息をつく様にそう言った。
私は戦争という言葉に胸が痛くなった。
グラン王国とメルル王国は、お父様の時代から同盟関係を築いていた。
お互い、足りない物資を輸送し合い、災害があった時は助け合う友好的な関係だったはずだ。
それをグランがメチャクチャにした。
スライム島の周辺の島からも大量の希少資源が採掘出来ることを知ったグランは、その島に兵を送り込みグラン王国の領土としての既成事実を作った。
だけど、そこは元々メルル王国の領土(無人島だった)。
二国の関係悪化は、この領有権の争いが原因だ。
私は、スライム島にいるお父様のことが気になった。
「いずれはメルル王国以外の5つの王国も征服し、全世界の民のための理想郷を作る」
新聞で、グランはそうインタビューに答えている。
事実上の世界征服宣言だった。
「こんなことになるなんて……」
ケンタが、行き場の無いもどかしさをぶつける様に、食卓に拳を叩きつける。
振動で食器がけたたましい音を立てて揺れる。
彼は自己嫌悪に陥ったかの様に、両手で頭を抱えている。
「私のせいだ……」
「え?」
「ん……何でも無い」
私は小さく首を横に振った。
だけど、こんな世界に、未来になったのは私のせいだ。
私がケンタの復讐を止めたからだ。
私はケンタと一緒にいたい。
それだけなのに、沢山の犠牲が次から次へと生まれて行く。
この未来は間違っていて、やっぱりケンタを救世主にすべきだったんだ。
「キャー!」
「わー!」
村人の叫び声が聞こえる。
私は咄嗟に床板をめくり、ケンタの手を取った。
彼を引きずり落とすように、地下の隠れ穴に落とす。
彼の声を無視し、急いで床板を穴の上に敷く。
その上にタンスを移動させる。
と、同時に玄関の扉が蹴破られる。
全身黒づくめの親衛隊がズカズカと、私達の家に入ってくる。
「グラン王国親衛隊だ。ここに雑用係のケンタがいるだろ? 出せ!」
「いません」
「スライム島のルキという男を拷問したら、ケンタが逃げたことを吐いた。調べたらここにいることが分かったんだ」
スライム島と聞いて、お父様の身にも何かあったと思った。
隊長と思われる男が、細身の剣を一振りし、食卓に載った食器をはらう。
床に落ちた食器が衝撃音と共に砕け散る。
「ここにいるのは分かっているんだ。かくまうとお前もこうなるぞ」
隊長が粉々になった無残な食器を剣で指し示す。
こんな奴ら、私なら一掃出来るのに。
だけど、魔法は使えない。
私がジェニ姫だとバレたら、色々と厄介だ。
私がジレンマを抱えている間に、他の隊員達が寝室や風呂場、ベランダに至るまで荒らしまわっている。
私はケンタとの思い出が詰まった調度品が破壊されるのを見るたびに、怒りが湧いて来る。
私の怒りに呼応するかの様に大気中の水分子が私に集約される。
「お前がさっきから背にしている、そのタンス……怪しいな」
隊長の手がニュッと伸び、私の頭越しにタンスに触れようとする。
「ダメ……」
ひっ、と声を上げ隊長が手を引っ込めた。
彼の手はしもやけの様に焼けただれていた。
私の身体から発する氷のオーラで火傷したのだ。
「お前……」
隊長がまじまじと私の顔を見る。
私は黒装束で顔半分を隠している。
だけど、隊長はさっきの現象と私の目を見て、何か悟ったようだ。
「こんなところでお会いするとは。ここは引き上げたほうがいいようですな」
全隊員、撤退した。
壊れて蝶番から外れた玄関のドア。
開け放たれた長方形から、外の世界が見える。
親衛隊に連行される村の男達。
泣きながら追いかけるその恋人、家族達。
きっと、徴兵されたんだ。
「ふー」
私はため息をつき、タンスを背もたれにして座り込む。
「ジェニ姫」
床からケンタの声がする。
「やっぱり、僕、グランに復讐してマリナを取り戻す」
つづく
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