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姫のラブソング編
第87話 希望だけしかない世界
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もう死のう。
世界が色あせて見える。
ケンタのいない世界にいても意味が無い。
私は、今すぐ死んでもう一度やり直したいと思った。
ケンタと一緒に過ごした日々を。
「あのさ、うずくまってたら、勝負にならないじゃない」
ソウニンの呆れた声が聞こえる。
私はユラリと立ち上がり、振り返る。
黒髪を三つ編みにし、緑の武闘着姿のソウニンと目が合う。
「殺して」
「え?」
「もう……殺して」
私の言葉を理解出来ないでいるのか、ソウニンは首を傾げている。
「ケンタが死んだから?」
「ええ……」
「あなた達、仲良さそうだもんね」
ソウニンは動かなくなったケンタと私を交互に見ながらそう言った。
彼女は私達のことを羨むかの様に、ホウとため息をつく。
「じゃ、お望み通り殺してあげる」
鉄の爪が私に振り下ろされる。
死の瞬間、私は目を閉じた。
この瞬間だけ痛みに耐えれば、また、元の二人の生活に戻れる。
後ろ向きな希望は、私の心を癒してくれた。
目の前に広がるのは、死後の暗闇ではなく、真っ赤に染まった少し華奢な男の背中だった。
「ケンタ……」
4本の鉄の爪が、ケンタを右肩口から左脇腹にかけて袈裟切っていた。
ケンタは糸が切れた操り人形の様に、力無く私の腕の中に倒れ込む。
溢れ出る涙がケンタの頬にポタポタ落ちる。
状況が飲み込めないでいる私に、ケンタが優しい声で話してくれる。
「多分……僕は死んだんだと思う。だけど、ジェニ姫を……死なせちゃいけないから……一瞬だけ蘇ったんだと思う」
「それで、こんな無茶を……」
血だらけになったケンタを思いっきり抱きしめると、私の白いローブも真っ赤に染まった。
このまま一つに溶け合いたいと思った。
「最後に……一つだけ……言わせてくれ」
「最後、何て言わないでよ!」
私はケンタを抱きしめる手の平から、精一杯の治癒魔法をかける。
だけど、彼の身体は冷たく、それはもう奇跡が起きないという証拠だった。
「ジェニ姫……あなたのことが大好きです」
「私も……」
ケンタは私の言葉を最後まで聞くこと無く、旅立った。
「お別れ会は、終わった?」
私の首筋に冷たい物が当たる。
「ええ」
私は鉄の爪をそっと手で払うと、立ち上がりケンタを殺した張本人を無表情で見つめた。
「どうする? 彼を追って、死ぬ?」
私は静かに首を振り、否定する。
「ケンタ君とやっと相思相愛になれた。だから彼の復讐は私が引き継ぐ」
自分でも驚くほど気持ちは晴れやかだった。
天命を見つけた瞬間、色あせた世界がハッキリとした輪郭を持ち様々な色で彩られた。
つまり、私の眼前に希望に満ちた世界が現れたのだ。
「ケンタは死んだのよ? あなた彼のことが好きなんでしょ? どうして泣かないの?」
私は自分に言い聞かせる様に、ソウニンの問いに応える。
「私を愛してくれる彼は、私の心の中にいる」
「何を子供じみたことを……」
「このループで終わらせる」
私の身体中の細胞一つ一つに力が漲り、ステータスが上昇して行くのが分かる。
つづく
世界が色あせて見える。
ケンタのいない世界にいても意味が無い。
私は、今すぐ死んでもう一度やり直したいと思った。
ケンタと一緒に過ごした日々を。
「あのさ、うずくまってたら、勝負にならないじゃない」
ソウニンの呆れた声が聞こえる。
私はユラリと立ち上がり、振り返る。
黒髪を三つ編みにし、緑の武闘着姿のソウニンと目が合う。
「殺して」
「え?」
「もう……殺して」
私の言葉を理解出来ないでいるのか、ソウニンは首を傾げている。
「ケンタが死んだから?」
「ええ……」
「あなた達、仲良さそうだもんね」
ソウニンは動かなくなったケンタと私を交互に見ながらそう言った。
彼女は私達のことを羨むかの様に、ホウとため息をつく。
「じゃ、お望み通り殺してあげる」
鉄の爪が私に振り下ろされる。
死の瞬間、私は目を閉じた。
この瞬間だけ痛みに耐えれば、また、元の二人の生活に戻れる。
後ろ向きな希望は、私の心を癒してくれた。
目の前に広がるのは、死後の暗闇ではなく、真っ赤に染まった少し華奢な男の背中だった。
「ケンタ……」
4本の鉄の爪が、ケンタを右肩口から左脇腹にかけて袈裟切っていた。
ケンタは糸が切れた操り人形の様に、力無く私の腕の中に倒れ込む。
溢れ出る涙がケンタの頬にポタポタ落ちる。
状況が飲み込めないでいる私に、ケンタが優しい声で話してくれる。
「多分……僕は死んだんだと思う。だけど、ジェニ姫を……死なせちゃいけないから……一瞬だけ蘇ったんだと思う」
「それで、こんな無茶を……」
血だらけになったケンタを思いっきり抱きしめると、私の白いローブも真っ赤に染まった。
このまま一つに溶け合いたいと思った。
「最後に……一つだけ……言わせてくれ」
「最後、何て言わないでよ!」
私はケンタを抱きしめる手の平から、精一杯の治癒魔法をかける。
だけど、彼の身体は冷たく、それはもう奇跡が起きないという証拠だった。
「ジェニ姫……あなたのことが大好きです」
「私も……」
ケンタは私の言葉を最後まで聞くこと無く、旅立った。
「お別れ会は、終わった?」
私の首筋に冷たい物が当たる。
「ええ」
私は鉄の爪をそっと手で払うと、立ち上がりケンタを殺した張本人を無表情で見つめた。
「どうする? 彼を追って、死ぬ?」
私は静かに首を振り、否定する。
「ケンタ君とやっと相思相愛になれた。だから彼の復讐は私が引き継ぐ」
自分でも驚くほど気持ちは晴れやかだった。
天命を見つけた瞬間、色あせた世界がハッキリとした輪郭を持ち様々な色で彩られた。
つまり、私の眼前に希望に満ちた世界が現れたのだ。
「ケンタは死んだのよ? あなた彼のことが好きなんでしょ? どうして泣かないの?」
私は自分に言い聞かせる様に、ソウニンの問いに応える。
「私を愛してくれる彼は、私の心の中にいる」
「何を子供じみたことを……」
「このループで終わらせる」
私の身体中の細胞一つ一つに力が漲り、ステータスが上昇して行くのが分かる。
つづく
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