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510 店主が魔石を喜んだ本当の理由

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 早々にゴーレムの試乗を終わらせ、仲間達がゴーレムを操縦するのを見守っていたのだが、ほとんど全員が笑顔のままゴーレムから降りてきた。

 そう、ほとんど・・・・全員だ。
 最後に試乗したゼーレネイマスだけは、他の人と違った感想を言ったのだ。


「たしかに面白き乗り物ではあったが、もう少し速度があれば尚良いといった所か。残念ながらこのゴーレムでは戦闘が出来ぬな。ボタンを押してから止める手段が無ければ、それは大きな隙となろう」

 おお?流石はゼーレネイマス!そこに気付いたか。

「そういやパンチは出来たけど、歩きながらだとボタンが反応しなかったぞ!」
「にゃるほど、そうだったにゃか。でも面白かったにゃ!」
「次は買ったゴーレムに乗るんだよね?」

 店主がゴーレムから降りて戻って来た。

「じゃあお客さんらが購入したゴーレムを運んで来るから、ここで待っててくれ」
「「やったーーーーーーーーーーーーーー!!」」

 子供達は身長の問題もあって、店長にペダルを踏んでもらったから半分不服だったらしい。あの小型ゴーレムは子供用だからギリギリ足が届くのだ。


 そして店長が3機のゴーレムを運んで来た。


「よっしゃ!爆炎1号が来たぞ!!」
「何だよケンちゃん、その名前は!?」
「ゴーレムににゃまえを付けたにゃか!ウチらも付けるにゃ!!」
「なるほど~、確かに名前を付けた方が愛着が沸くかもじゃな」

 何だかんだ言って皆楽しんでるよな~。
 この空気で不満を漏らすわけにもいくまい。黙って傍観しよう。

「師匠、俺から先に乗ってもいいっスか?」
「構わぬ」
「最初は操作方法を教える為に俺も同乗するが、その後は1人で操縦してもらうことになるぞ。この機体はあっちのゴーレムと違って安全第一の設計ではないから、くれぐれも無茶して壊さないようにな!」
「マジか!なんかすっげー面白そう!!」

 へーーーーーーーーー!
 すなわち練習機よりは軍用機に近い仕様なのか。

 それでも民間人が使うことを想定して作ってるから、俺の求めるゴーレムとも思えんな。急いで試乗するほどのことでもないだろう。


 そして俺以外の全員が、自分らで購入した機体に試乗した。


 たしかに練習機よりは即応性があるように見えたが、それほどの違いがあるとも思えなかったので俺はスルーだ。

 ただ見ていて面白かったのが、チャミィとメメが器用にゴーレムを操っていたことだった。

 パンチなどのモーションにかかるディレイタイムを本能で把握しているのか、二人とも次の動作にスムーズに移行していたのだ。

 幼女ながらに凄いセンスを感じました。将来が楽しみです!


 試乗が終わった後は、俺が取引で依頼したゴーレム教室の時間だ。


 と言っても部屋には移動せず、その場で説明会が始まった。
 実物を見ながら説明した方がわかりやすいからな。


「魔石というのは魔物の心臓であり、心みたいなモノだ。それを中心に入れて土魔法で覆うように作ることで、ゴーレムとしての意思を持つようになるわけだ。俺が取引で魔石を選択した理由はココにあると言ってもいい。心臓に使う魔石が弱ければゴーレムの意志の力も弱くなり、それは反応速度に大きく影響する!」

 それだ!!
 俺の心がトキメかなかった理由は、そのモッサリ感でもあるんだよ!

「ってことは、これらのゴーレムは魔石(小)から作られているってこと?」
「そういうことだ。しかし、ゴーレムを作る時に心臓部に魔石(小)を何個も使って融合させることが出来るんだ。ここで職人の実力が重要になって来るわけだが、この大型ゴーレムは魔石(小)を100個融合させて作っている。これが俺の限界だな」
「スゲエな!ゴーレム作りって奥が深すぎだろ!!じゃあ俺が渡した魔石(中)でゴーレムを作った場合はどうなるんだ?」

 店主がニヤリと笑った。

「間違いなく破格の性能となるだろう!移動速度・旋回速度・殴る速度、その全てがだ!!」

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 俺、魔石(特大)とか持ってるんスけど?

「ちなみに店主がゴーレムを1機作り上げるまで、どれくらいの日数が掛かるんだ?」
「早くても一ヶ月はかかるぞ?しかし魔石(中)を使ったゴーレムならば、その倍かかるかもしれんな」
「くはっ!依頼しようなんて考えたけどそれじゃあ無理か。店主もまずは自分のゴーレムを作りたいだろうしな~」
「そのうちお客さんの依頼も受けてやりたいが、やはりまずは自分のゴーレムを作りたい。悪いがしばらく製作依頼を受けるのは無理だ」

 デスヨネー。それに一ヶ月だとしても長すぎてこっちが無理だ。
 俺には尾張へ帰るって目的があるんでな。

「よし、じゃあ次に行くぞ?ゴーレムに一つの動作を覚えさせてボタン一つで発動させる方法だが、これには製作者が思い浮かべる心象が重要だ。それがゴーレムに伝わらなければ、発動しないばかりか変な行動をしてゴーレムが壊れてしまうんだ。手足の構造が人間と一緒なのだから、人間が出来ない動きをやらせると骨折してしまうような感じだな」
「ゴーレムの足の代わりに車輪を付けた場合は、回転させて馬車のようにすることは可能か?」

 店主が驚いた顔で俺を見た。

「凄いことを考えるもんだな!?ゴーレムってのは二足歩行が当たり前だから、普通は足を作る過程で太くしようか細くしようかと悩んだりするもんだが、車輪にしちまうのか!いや~、それは目から鱗だぞ!!俺も作ってみていいか?その閃きに対して使用料を払うぞ!」
「いや、誰かが思い付きそうなことだし、勝手にどんどん作ってもらって構わないぞ。使用料も必要無い。えーとすなわち作ることは可能ということだな?」
「本当にいいのか!?ああ、おそらく作ることは可能だ」


 よっしゃ!これで簡単に自動で動く乗り物が作れるぜ!
 タイヤが無いから今度は摩耗とかの問題が出てくるかもだけど。

 ・・・あれ?

 もしかして清光さんにもらったバイクってゴーレムなんじゃないか?
 いや、清光さんがそう言っていたのを俺が聞き流したって可能性もあるのか。
 でも今考えると絶対そうだ!あの人凄腕の土魔法使いじゃん。

 クッソーーーーー!

 俺ってゴーレムに関してかなり出遅れてたんだな・・・。
 
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