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第七章
02
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カーナ神国の首都の広場には、人々の歓声が響いていた。
その中心にいるのは、カーナ神国の宰相の麗しの鮭の人と、その手に抱かれた神人ピアディ。
半透明のベビーピンクの体に、ウルトラマリンの瞳をきらきらと輝かせて、空に向かって元気に鳴く。
「ぷぅ!」
今日はピアピア金融が主催する、特別な宝くじ当選イベントの日だった。
その名も――《ピアディ様のウパルパ・ビンゴ》。
この魔法は、かつて鮭の人ヨシュア・リーストが放浪中に出会った東南部の魔法使いから伝授された9オーブなる魔法がベースになっている。
珍しい運気操作型の魔法で、彼がカズンを探して旅していた頃の収穫のひとつだ。
「ぷぅ!(さあ、今週の宝くじの当選者たちよ! かもーん!)」
ピアディが一鳴きすると、壇上に老若男女十数名が上がり、そして……
9つの光のオーブが、ふわりと空に浮かび、――ピアディのウパルパの形に変化した。
ひときわ目を引くのは、最初から虹色に光り輝くウパルパだ。
これは誰が見ても当たり。選べば賭けた金額が2倍になる。
残る8つのウパルパの中には、さらなる当たりが2つだけ紛れている。
2回目も当てれば、当選金は4倍。
さらに3回連続で当たりを引くと、なんと1000倍。
ただし、他のウパルパには、1倍=つまり元本しか戻らないものが3つ。
さらに、外れとして、金額が減ってしまうものも3つある。
ひとつでも外れを引いたら、その時点でゲームは終了。
どこでやめるか、どこまで挑むか。
それを選ぶのは、挑戦者自身だ。
「毎週開催するから、首都に人が集まるのが良いですね。観光産業中心に活性化してます」
とは、ピアピア金融設立前後の税収の増加率を知る鮭の人のコメントだ。
このゲームが盛り上がる理由は、もうひとつある。
参加者の〝運〟や〝ステータス〟は一切関係ない。
貴族でも平民でも、子どもでもお年寄りでも、まったく同じ確率で挑戦できる。
完全にニュートラルな抽選なのだ。
さらに、当選金は非課税。
その年の所得にもカウントされない。
だから翌年の税金が跳ね上がる心配もない。
そして、当選金の一部はピアピア金融での投資に回すこともできる。
その場合、利率が少しだけ優遇される特典がある。
「ぷぅぷぅ~(われを讃え、善き心を持つ者なら、このくじは誰でも参加できるのだ)」
その基準は明快だ。ぷぅぷぅとしか聞こえないピアディの鳴き声の意味が、きちんと人の言葉で聞こえているかどうかのみ。
「ぷぅ!(ピアピア金融も宝くじも、善き心の持ち主や、善く在ろうとする志ある者に光を授けるものである!)」
その言葉どおり、この《ウパルパ・ビンゴ》はただの遊びではない。
参加者たちの挑戦する勇気と希望が、きらめく光のかたちとなって空に浮かぶのだ。
今日もひとりの少女がオーブを選ぶ。
「わたし、これっ!」
選ばれたオーブが、虹色に輝いた。
会場から歓声があがる。
――掛け金がこの瞬間、2倍確定となった。
「きゃあ! やったあ!」
ピアディも満足そうに鳴いた。
「ぷぅ!」
その後、全員の当選が確定した後は、歌の聖者でもあるピアディのコンサートだ。
わーれはピアディ
かわゆいウパルパ
わーれはピアディ
かしこいウパルパ
わーれはピアディ
ラッキーウパルパ
わーれはピアディ
みんなしあわせ!
「「「「「ウーパルパー!」」」」」
ぷぅぷぅ歌うピアディのぷにぷにボディからは、虹色を帯びたネオンイエローの魔力が迸り、甘く新鮮なミルクの香り――聖なる芳香が広場いっぱいに漂う。
現時点で、これほど頻繁に、そして間近に聖なる魔力の恩恵を受けられる場所はカーナ神国をおいて他にはない。
守護者はちょっとだけ気まぐれで、傲岸不遜だったが……
このビッグウェーブに乗り損ねる愚を犯すぐらいなら、許容範囲だ。
☆ ☆ ☆
宝くじ事業の成功は、瞬く間に仲間たちの心を動かした。
「よーし。ピアディ、僕の個人資産を託そう。アケロニア王国からどう入金すればいい?」
真っ先に手を挙げたのは、他国の王族で最近勇者の可能性が出たカズンだ。
「ぷぅ!(いちど、どこかのギルドに入金して、ギルド経由でピアピア金融の個人口座にふりこむのだ! いまなら手数料はカーナ神国がふたんします!)」
ピアディの説明に、カズンは満足そうに頷いた。なんとお得な!
「うん。オレと叔父様の個人資産も、同じく」
と、すかさず鮭の人も乗ってきた。
「よ、ヨシュア、ほどほどにな……?」
甥っ子に巻き込まれたルシウスがやや不安げな声をあげるが、もはや勢いは止まらない。
その横で、聖女アイシャが声をひそめた。
「え、ええと、ど、どうしましょう……トオン?」
「旧王家からぶんどった迷惑料、まとめて預けるよ、ピアディ!」
アイシャの問いに即答したのはアイシャの恋人トオン。
言うが早いか、どーんと布袋三袋分の大金貨を差し出した。
「えええええっ!?」
思わず上ずるアイシャの声に、場の空気がさらに華やいだ。
さすがに最初ほどの倍額成長は見込めなかったが、こうした成功例が新聞で報じられると、首都中の家庭から預け入れ希望が殺到する。
やがてその流れは、国全土へと波及していった。
そしてある日、ピアディが高らかに宣言した。
「ぷぅ!(ピアピア金融の株式も発行なのだ。一株、だいきんか十枚から! はいとうは年に二回! ふやしたいなら再投資がおすすめ!)」
「「「「「買った!」」」」」
満場の民の声に、ピアディはぷるんとベビーピンク色の胸を張った。
「ぷぅ~(フハハハハ。その選択にまちがいなし! この神人ピアディが、かくじつなせんこうしゃりえきを約束しようぞ!)」
だがその高笑いの裏で、事業の根幹を支える金融システムの整備には現実的な課題もあった。
なにしろ、これまで円環大陸には存在しなかった仕組みだったのだ。
それでも、そこは寿命のない神人ふたりの共同開発。
しかもその片方は、魔導具師ギルドの長を務める神人ジューア。
彼女の手によって、システムは早期に安定稼働し、国際特許と独占権も取得。
やがて、円環大陸全土に向けて、キャッシュレス決済という新たな風が吹き始めることになる。
そう――すべては、あの小さなウパルパの「ぷぅ」から始まったのだった。
ウパルパビンゴシーンのショートアニメ、作りました。
https://youtube.com/shorts/kl2DkPX_3Ps?si=RBQa6B8qllJlYmn8
YouTubeチャンネル「LinkStoryMaker」にて
その中心にいるのは、カーナ神国の宰相の麗しの鮭の人と、その手に抱かれた神人ピアディ。
半透明のベビーピンクの体に、ウルトラマリンの瞳をきらきらと輝かせて、空に向かって元気に鳴く。
「ぷぅ!」
今日はピアピア金融が主催する、特別な宝くじ当選イベントの日だった。
その名も――《ピアディ様のウパルパ・ビンゴ》。
この魔法は、かつて鮭の人ヨシュア・リーストが放浪中に出会った東南部の魔法使いから伝授された9オーブなる魔法がベースになっている。
珍しい運気操作型の魔法で、彼がカズンを探して旅していた頃の収穫のひとつだ。
「ぷぅ!(さあ、今週の宝くじの当選者たちよ! かもーん!)」
ピアディが一鳴きすると、壇上に老若男女十数名が上がり、そして……
9つの光のオーブが、ふわりと空に浮かび、――ピアディのウパルパの形に変化した。
ひときわ目を引くのは、最初から虹色に光り輝くウパルパだ。
これは誰が見ても当たり。選べば賭けた金額が2倍になる。
残る8つのウパルパの中には、さらなる当たりが2つだけ紛れている。
2回目も当てれば、当選金は4倍。
さらに3回連続で当たりを引くと、なんと1000倍。
ただし、他のウパルパには、1倍=つまり元本しか戻らないものが3つ。
さらに、外れとして、金額が減ってしまうものも3つある。
ひとつでも外れを引いたら、その時点でゲームは終了。
どこでやめるか、どこまで挑むか。
それを選ぶのは、挑戦者自身だ。
「毎週開催するから、首都に人が集まるのが良いですね。観光産業中心に活性化してます」
とは、ピアピア金融設立前後の税収の増加率を知る鮭の人のコメントだ。
このゲームが盛り上がる理由は、もうひとつある。
参加者の〝運〟や〝ステータス〟は一切関係ない。
貴族でも平民でも、子どもでもお年寄りでも、まったく同じ確率で挑戦できる。
完全にニュートラルな抽選なのだ。
さらに、当選金は非課税。
その年の所得にもカウントされない。
だから翌年の税金が跳ね上がる心配もない。
そして、当選金の一部はピアピア金融での投資に回すこともできる。
その場合、利率が少しだけ優遇される特典がある。
「ぷぅぷぅ~(われを讃え、善き心を持つ者なら、このくじは誰でも参加できるのだ)」
その基準は明快だ。ぷぅぷぅとしか聞こえないピアディの鳴き声の意味が、きちんと人の言葉で聞こえているかどうかのみ。
「ぷぅ!(ピアピア金融も宝くじも、善き心の持ち主や、善く在ろうとする志ある者に光を授けるものである!)」
その言葉どおり、この《ウパルパ・ビンゴ》はただの遊びではない。
参加者たちの挑戦する勇気と希望が、きらめく光のかたちとなって空に浮かぶのだ。
今日もひとりの少女がオーブを選ぶ。
「わたし、これっ!」
選ばれたオーブが、虹色に輝いた。
会場から歓声があがる。
――掛け金がこの瞬間、2倍確定となった。
「きゃあ! やったあ!」
ピアディも満足そうに鳴いた。
「ぷぅ!」
その後、全員の当選が確定した後は、歌の聖者でもあるピアディのコンサートだ。
わーれはピアディ
かわゆいウパルパ
わーれはピアディ
かしこいウパルパ
わーれはピアディ
ラッキーウパルパ
わーれはピアディ
みんなしあわせ!
「「「「「ウーパルパー!」」」」」
ぷぅぷぅ歌うピアディのぷにぷにボディからは、虹色を帯びたネオンイエローの魔力が迸り、甘く新鮮なミルクの香り――聖なる芳香が広場いっぱいに漂う。
現時点で、これほど頻繁に、そして間近に聖なる魔力の恩恵を受けられる場所はカーナ神国をおいて他にはない。
守護者はちょっとだけ気まぐれで、傲岸不遜だったが……
このビッグウェーブに乗り損ねる愚を犯すぐらいなら、許容範囲だ。
☆ ☆ ☆
宝くじ事業の成功は、瞬く間に仲間たちの心を動かした。
「よーし。ピアディ、僕の個人資産を託そう。アケロニア王国からどう入金すればいい?」
真っ先に手を挙げたのは、他国の王族で最近勇者の可能性が出たカズンだ。
「ぷぅ!(いちど、どこかのギルドに入金して、ギルド経由でピアピア金融の個人口座にふりこむのだ! いまなら手数料はカーナ神国がふたんします!)」
ピアディの説明に、カズンは満足そうに頷いた。なんとお得な!
「うん。オレと叔父様の個人資産も、同じく」
と、すかさず鮭の人も乗ってきた。
「よ、ヨシュア、ほどほどにな……?」
甥っ子に巻き込まれたルシウスがやや不安げな声をあげるが、もはや勢いは止まらない。
その横で、聖女アイシャが声をひそめた。
「え、ええと、ど、どうしましょう……トオン?」
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さすがに最初ほどの倍額成長は見込めなかったが、こうした成功例が新聞で報じられると、首都中の家庭から預け入れ希望が殺到する。
やがてその流れは、国全土へと波及していった。
そしてある日、ピアディが高らかに宣言した。
「ぷぅ!(ピアピア金融の株式も発行なのだ。一株、だいきんか十枚から! はいとうは年に二回! ふやしたいなら再投資がおすすめ!)」
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満場の民の声に、ピアディはぷるんとベビーピンク色の胸を張った。
「ぷぅ~(フハハハハ。その選択にまちがいなし! この神人ピアディが、かくじつなせんこうしゃりえきを約束しようぞ!)」
だがその高笑いの裏で、事業の根幹を支える金融システムの整備には現実的な課題もあった。
なにしろ、これまで円環大陸には存在しなかった仕組みだったのだ。
それでも、そこは寿命のない神人ふたりの共同開発。
しかもその片方は、魔導具師ギルドの長を務める神人ジューア。
彼女の手によって、システムは早期に安定稼働し、国際特許と独占権も取得。
やがて、円環大陸全土に向けて、キャッシュレス決済という新たな風が吹き始めることになる。
そう――すべては、あの小さなウパルパの「ぷぅ」から始まったのだった。
ウパルパビンゴシーンのショートアニメ、作りました。
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