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第三章 カーナ王国の混迷
教会の献金横領
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関係者が撤収した後の教会の敷地内の宿舎はがらんとしている。
ビクトリノはアイシャとトオン、それにルシウスを連れて宿舎の探索を行った。
「ルシウス、お前は探索スキルを持ってるって聞いてるぞ。この建物内を探索してくれるか?」
「構いませんが、何を探すつもりで?」
「まずは適当に建物全体を。気になるところがあればまずそこに行こうぜ」
ルシウスが腰回りにネオンブルーの魔力を帯びた白い環を出し、指示された通りに探索スキルを使う。
ふわ、と辺りに彼特有の松の芳香が漂った。
「……人が住んでいた形跡の部屋には、家具や雑貨が残っているだけのようだ。気になるところは……まず厨房」
四人は一階にある厨房へと向かった。
ルシウスがまず食堂から厨房に入り、そこで再び探索スキルを使った。
「ゴミ箱に大量の金貨が入ってますね」
「おう、アイシャ、トオン。確認するぞー」
「「はい!」」
それに慌てたのは厨房の料理人と下働きたちだ。
「な、生ゴミですよ? それ以外のものなんて入ってません!」
「語るに落ちてるじゃん。後日、ゴミ回収に出したと見せかけて金貨を引き取りに来るんだろ?」
「そ、それは……っ」
「ついでにお前たちもトンズラする気だったんだろ?」
「………………」
その後は食堂に移動して、アイシャたちが生ゴミの中から発見した、防水布に包まれたいくつもの金貨の袋をテーブルの上に置いた。
あとは聖者ビクトリノのお説教である。
「つまりこの金は教会への献金をちょろまかして貯め込んでたものだってか」
「……はい。帳簿の簿外のものになります」
「要するに裏金だな」
「で、ですが、司祭様たちからの指示ですし、それに私たちが贅沢するためのものではなくて、そのっ」
「その言い訳は厳しいのではないか?」
探索スキルを発動したままのルシウスが床を指差した。
サーッと料理人たちが青ざめている。なぜわかった? という顔だ。
金貨は教会に派遣されてきた国の騎士たちに任せて、宰相に届けてもらうことにした。大金なので一時預かってもらおう。
一行は料理人たちを連れて先ほどルシウスが指差した地下へと向かった。
そこにあったものとは。
「これ、お酒?」
宿舎の地下は複数セクションに分かれた倉庫になっている。その一角にずらりと酒瓶や酒樽が並んでいる。
「ん? おや、これはリースト侯爵領で作ってるウイスキーではないか。ははは、王家御用達の高級品なのに木箱二箱分もあるとは」
木箱を開けて中を確認したルシウスが笑っている。
アイシャとトオンも中を覗き込む。封蝋で封印されたお高そうなウイスキー瓶が詰まっていた。
「酒だけ、酒だけなんです。王家の方々のように豪遊するわけじゃなくて、酒だけが我らの楽しみだったんですううう……っ」
その後また食堂に戻って料理人や下働きの者たちに確認したところ、隠し通せないと諦めて白状した。
「一本で大金貨一枚(約二十万円)以上するウイスキーを箱買いしておいて、『贅沢ではない』は通用せんだろう」
実家で醸造して販売していたというウイスキーを一本持ってきて、瓶を突っつきながらルシウスが料理人たちに突っ込んだ。
ビールなど長期間の保存に向かない酒は少なく、ほとんどがワインやブランデー、ウイスキーといった長期保存で熟成し価値が高まる酒だった。
「つまり、裏金が増え過ぎて、でもお酒にしか使ってなかった。高いお酒でも買えるからってどんどん集めちゃったってこと?」
「……はい」
アイシャの確認に、料理人たちは土下座して半泣き状態だった。
本当ならアイシャやビクトリノの目を盗んで少しずつ地下倉庫からゴミに紛れさせて金貨と一緒に酒を運び出すつもりだったと。
「私腹を肥やした……といえばそうなんだろうけど」
「裏帳簿の裏金はさすがに見過ごせねえなあ~」
床で土下座している者たちがビクッと震える。
アイシャもビクトリノも脅すつもりはないのだが、何を言われるのかと緊張で吐きそうな顔をしていた。
「酒はこのまま新しく設置する神殿に奉納しよう。日持ちしない分は飲食店に安く卸してもいいし」
「それでもいいし、ここには聖なる魔力持ちが三人もいるんだ。それぞれ魔力を込めて販売して神殿の活動資金の原資に加えようぜ」
これらの酒は後に三人の聖なる魔力を込められ、ネオンカラーに光った酒瓶ごと爆売れした。
高価な酒は庶民でも参加できる野外オークションを開いて、裕福な者たちで競り落としてもらい、元の販売価格の七倍の金貨となったのだった。
「あ、あの。俺たちはやっぱり、ここは追い出されます……よね?」
恐る恐る料理人たちの一人が尋ねてきた。
アイシャはビクトリノと顔を見合わせた。ビクトリノは両肩をすくめている。アイシャが決めろということらしい。
ほとんどの教会関係者は追放され撤収していたが、教会の構成員とは別の労働者ギルド経由で事務など管理業務を請け負っていた職員たちはそのまま神殿設置後も王都に残る。
この料理人や下働きの者たちは彼らの食事の世話をするために残っていた者たちだ。
もっとも、残る職員たちは教会関係者たちのように宿舎は利用していなかった。
王都内の自宅から教会に出勤して仕事をするので、食堂の利用もランチタイムだけだ。
ということは、別に食堂で働く料理人たちはいなくても特に問題がない。職員たちには弁当でも各自で持参してもらえばよいのだ。
「裏金の金貨やお酒を引き取りに来る司祭たちの情報を明かしなさい。横領金額を調査して、あなたたちは……私欲に使った分は……」
国内で奉仕活動をせよ、と言いかけてアイシャは口ごもった。
これまでは、その罪人の『奉仕活動』を監督していたのが教会なのだ。
教会が解散した今はどうしたものかと考えていると、ルシウスが助け舟を出してきた。
「そ奴らは料理人なのだろう? なら私の飲食店で下働きをさせよう。これまでのチョロまかし相応の金額を給料天引きだ。私の配下が監視して逃亡もさせない。どうだ?」
「レストラン・サルモーネの下働き……そうね、ルシウスさんにお願いしてもいいかしら?」
もちろん、とルシウスは大きく頷いた。
料理人たちもホッとした顔になっている。彼らも王都で一躍有名店になったサルモーネのことは耳にしているようだ。
何よりオーナーが聖者でもあるルシウス。文句などあるはずがない。
「あんまり安心しないほうがいいよ。サルモーネのマネージャーは食えない男みたいだから」
トオンが横から釘を刺した。マネージャーはアイシャが〝悪人〟と称したルシウスのそっくりさんな、あの秘書ユキレラのことだ。
そうしてレストラン・サルモーネの下働きとして引き取られた料理人たち四名は秘書ユキレラに散々いびり倒されることになる。
だが最終的にはオーナーのルシウスの威光に染まって見事な『聖剣の聖者ルシウス様信者』に更生して関係者一同をいろいろな意味で唸らせることになる。
※リースト一族配下の構成員が着々と増えております😜
ビクトリノはアイシャとトオン、それにルシウスを連れて宿舎の探索を行った。
「ルシウス、お前は探索スキルを持ってるって聞いてるぞ。この建物内を探索してくれるか?」
「構いませんが、何を探すつもりで?」
「まずは適当に建物全体を。気になるところがあればまずそこに行こうぜ」
ルシウスが腰回りにネオンブルーの魔力を帯びた白い環を出し、指示された通りに探索スキルを使う。
ふわ、と辺りに彼特有の松の芳香が漂った。
「……人が住んでいた形跡の部屋には、家具や雑貨が残っているだけのようだ。気になるところは……まず厨房」
四人は一階にある厨房へと向かった。
ルシウスがまず食堂から厨房に入り、そこで再び探索スキルを使った。
「ゴミ箱に大量の金貨が入ってますね」
「おう、アイシャ、トオン。確認するぞー」
「「はい!」」
それに慌てたのは厨房の料理人と下働きたちだ。
「な、生ゴミですよ? それ以外のものなんて入ってません!」
「語るに落ちてるじゃん。後日、ゴミ回収に出したと見せかけて金貨を引き取りに来るんだろ?」
「そ、それは……っ」
「ついでにお前たちもトンズラする気だったんだろ?」
「………………」
その後は食堂に移動して、アイシャたちが生ゴミの中から発見した、防水布に包まれたいくつもの金貨の袋をテーブルの上に置いた。
あとは聖者ビクトリノのお説教である。
「つまりこの金は教会への献金をちょろまかして貯め込んでたものだってか」
「……はい。帳簿の簿外のものになります」
「要するに裏金だな」
「で、ですが、司祭様たちからの指示ですし、それに私たちが贅沢するためのものではなくて、そのっ」
「その言い訳は厳しいのではないか?」
探索スキルを発動したままのルシウスが床を指差した。
サーッと料理人たちが青ざめている。なぜわかった? という顔だ。
金貨は教会に派遣されてきた国の騎士たちに任せて、宰相に届けてもらうことにした。大金なので一時預かってもらおう。
一行は料理人たちを連れて先ほどルシウスが指差した地下へと向かった。
そこにあったものとは。
「これ、お酒?」
宿舎の地下は複数セクションに分かれた倉庫になっている。その一角にずらりと酒瓶や酒樽が並んでいる。
「ん? おや、これはリースト侯爵領で作ってるウイスキーではないか。ははは、王家御用達の高級品なのに木箱二箱分もあるとは」
木箱を開けて中を確認したルシウスが笑っている。
アイシャとトオンも中を覗き込む。封蝋で封印されたお高そうなウイスキー瓶が詰まっていた。
「酒だけ、酒だけなんです。王家の方々のように豪遊するわけじゃなくて、酒だけが我らの楽しみだったんですううう……っ」
その後また食堂に戻って料理人や下働きの者たちに確認したところ、隠し通せないと諦めて白状した。
「一本で大金貨一枚(約二十万円)以上するウイスキーを箱買いしておいて、『贅沢ではない』は通用せんだろう」
実家で醸造して販売していたというウイスキーを一本持ってきて、瓶を突っつきながらルシウスが料理人たちに突っ込んだ。
ビールなど長期間の保存に向かない酒は少なく、ほとんどがワインやブランデー、ウイスキーといった長期保存で熟成し価値が高まる酒だった。
「つまり、裏金が増え過ぎて、でもお酒にしか使ってなかった。高いお酒でも買えるからってどんどん集めちゃったってこと?」
「……はい」
アイシャの確認に、料理人たちは土下座して半泣き状態だった。
本当ならアイシャやビクトリノの目を盗んで少しずつ地下倉庫からゴミに紛れさせて金貨と一緒に酒を運び出すつもりだったと。
「私腹を肥やした……といえばそうなんだろうけど」
「裏帳簿の裏金はさすがに見過ごせねえなあ~」
床で土下座している者たちがビクッと震える。
アイシャもビクトリノも脅すつもりはないのだが、何を言われるのかと緊張で吐きそうな顔をしていた。
「酒はこのまま新しく設置する神殿に奉納しよう。日持ちしない分は飲食店に安く卸してもいいし」
「それでもいいし、ここには聖なる魔力持ちが三人もいるんだ。それぞれ魔力を込めて販売して神殿の活動資金の原資に加えようぜ」
これらの酒は後に三人の聖なる魔力を込められ、ネオンカラーに光った酒瓶ごと爆売れした。
高価な酒は庶民でも参加できる野外オークションを開いて、裕福な者たちで競り落としてもらい、元の販売価格の七倍の金貨となったのだった。
「あ、あの。俺たちはやっぱり、ここは追い出されます……よね?」
恐る恐る料理人たちの一人が尋ねてきた。
アイシャはビクトリノと顔を見合わせた。ビクトリノは両肩をすくめている。アイシャが決めろということらしい。
ほとんどの教会関係者は追放され撤収していたが、教会の構成員とは別の労働者ギルド経由で事務など管理業務を請け負っていた職員たちはそのまま神殿設置後も王都に残る。
この料理人や下働きの者たちは彼らの食事の世話をするために残っていた者たちだ。
もっとも、残る職員たちは教会関係者たちのように宿舎は利用していなかった。
王都内の自宅から教会に出勤して仕事をするので、食堂の利用もランチタイムだけだ。
ということは、別に食堂で働く料理人たちはいなくても特に問題がない。職員たちには弁当でも各自で持参してもらえばよいのだ。
「裏金の金貨やお酒を引き取りに来る司祭たちの情報を明かしなさい。横領金額を調査して、あなたたちは……私欲に使った分は……」
国内で奉仕活動をせよ、と言いかけてアイシャは口ごもった。
これまでは、その罪人の『奉仕活動』を監督していたのが教会なのだ。
教会が解散した今はどうしたものかと考えていると、ルシウスが助け舟を出してきた。
「そ奴らは料理人なのだろう? なら私の飲食店で下働きをさせよう。これまでのチョロまかし相応の金額を給料天引きだ。私の配下が監視して逃亡もさせない。どうだ?」
「レストラン・サルモーネの下働き……そうね、ルシウスさんにお願いしてもいいかしら?」
もちろん、とルシウスは大きく頷いた。
料理人たちもホッとした顔になっている。彼らも王都で一躍有名店になったサルモーネのことは耳にしているようだ。
何よりオーナーが聖者でもあるルシウス。文句などあるはずがない。
「あんまり安心しないほうがいいよ。サルモーネのマネージャーは食えない男みたいだから」
トオンが横から釘を刺した。マネージャーはアイシャが〝悪人〟と称したルシウスのそっくりさんな、あの秘書ユキレラのことだ。
そうしてレストラン・サルモーネの下働きとして引き取られた料理人たち四名は秘書ユキレラに散々いびり倒されることになる。
だが最終的にはオーナーのルシウスの威光に染まって見事な『聖剣の聖者ルシウス様信者』に更生して関係者一同をいろいろな意味で唸らせることになる。
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