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第三章 カーナ王国の混迷
王太子様の初タコス体験
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翌日、朝一番で宰相から伝令が来た。
他国の王太子ユーグレンが顧問になったので、メンバーへのお披露目を兼ねて本日、緊急で共和制実現会議を開催するとのこと。
「あ、良かった午後だ」
「なら一度ルシウスさんのとこ行ってからにしましょ」
朝食は屋台広場でさっと済ませることにして、出発前に一度食堂に集まった。
「よく眠れましたか、ユーグレンさん」
「ああ。というよりあの部屋、ルシウス様の芳香で満ちていたのだが……」
松の樹木の芳香だ。ルシウスの放つ聖者の芳香である。
「ユーグレンさんの前はルシウスさんが使ってました。その前はカズン」
ともあれ外出着に着替えたユーグレンを見ると、ここに来たときと同じ旅装は良いとして、背中に鞘に入った大剣を背負っていた。
「あ、そうかアイテムボックス! アイシャ、ユーグレンさんの環に組み込める?」
「やってみるわ」
「?」
話がわからないユーグレンの胸元を、アイシャが指先でトンと突いた。
即座に現れた真紅の魔力を帯びた光の環の中に細い腕を突っ込む。
「えっ!? あっ!?」
「聞いたことない? 環使いだけがアイテムボックス機能を持てるって」
「あ、いや、話には聞いていた……が……」
他人に環を触られる感触が衝撃的だったらしい。何とも感性豊かな反応だった。
「随分と容量が大きいわ。これなら木箱十箱分ってところかしら」
「カズンが二箱だから五倍。俺なんて一箱だもん、すげえ」
そこからふたりで簡単にアイテムボックスの使い方をレクチャーした。
「その大剣もアイテムボックスを意識するだけで出し入れできるよ」
「えっ、こんな一瞬で!?」
「同じ系列の環使い同士だと物品を送り合うことも可能なの」
アイシャは食卓の上にあった小さなカゴからキャンディを一個取って自分の環に入れた。
するとユーグレンの環から同じキャンディが飛び出てくる。
「く、空間転送だと……!?」
反応が大袈裟で面白い。
「そうか、アケロニア王国は旧世代魔力使いの国だもんなー」
「しばらくいろいろ試してみるといいわよ」
今はひとまずここまでだ。まずは朝食のため屋台広場へ向かうことにした。
屋台広場は王都内に数ヶ所ある。
トオンの古書店のある南地区は早朝から夜中まで屋台が開いているので利用しやすく便利だ。
ささっと立ち食いのタコスで朝食を済ませたが、初タコス経験のユーグレンは感激していた。
「屋台でこんなに新鮮な野菜が食べられるとは良いな! しかも真冬なのに生野菜まで!」
生野菜とはいえ玉ねぎや香菜のみじん切りだが、旅の間は偏った食事が多かったそうで嬉しそうにコーントルティーヤごと口に運んでいた。
一番多いのは焼いた牛肉を削ぎ切りにして、焼いた唐辛子やトマトをペーストにしたサルサで食べるもの。オプションでアボガドも追加できる。
海老や牡蠣、帆立、白身魚などシーフードも人気だ。こちらはチポトレという燻製唐辛子を入れたマヨネーズを加えたものも人気である。
どれも小型のライムを絞って、熱々の出来立てを口に運ぶ。
「カーナ王国の庶民グルメってやつです。なかなかでしょ?」
「カズンも大好きでしたよ」
「美味い。これは本気で美味い」
屋台では一枚の皿に小型のタコスが三つでワンセット。アイシャとトオンは一皿ずつだったが、ユーグレンは二皿平らげていた。
サービスのチキンスープを紙コップで飲みながら、満足そうに胃の辺りを押さえている。
「小腹が空いたらここに来ればすぐ食べられます。夜は酒も飲めるので」
「ルシウスさんはビールでイカフライが好きね。朝と夜だとお店のメニューも少し変わるからまた来てみましょ」
自宅でアイシャが作るのも良いが、しばらくはカーナ王国の食文化に慣れてもらうよう屋台や地元の店に連れて行くのも良いかもしれない。
他国の王太子ユーグレンが顧問になったので、メンバーへのお披露目を兼ねて本日、緊急で共和制実現会議を開催するとのこと。
「あ、良かった午後だ」
「なら一度ルシウスさんのとこ行ってからにしましょ」
朝食は屋台広場でさっと済ませることにして、出発前に一度食堂に集まった。
「よく眠れましたか、ユーグレンさん」
「ああ。というよりあの部屋、ルシウス様の芳香で満ちていたのだが……」
松の樹木の芳香だ。ルシウスの放つ聖者の芳香である。
「ユーグレンさんの前はルシウスさんが使ってました。その前はカズン」
ともあれ外出着に着替えたユーグレンを見ると、ここに来たときと同じ旅装は良いとして、背中に鞘に入った大剣を背負っていた。
「あ、そうかアイテムボックス! アイシャ、ユーグレンさんの環に組み込める?」
「やってみるわ」
「?」
話がわからないユーグレンの胸元を、アイシャが指先でトンと突いた。
即座に現れた真紅の魔力を帯びた光の環の中に細い腕を突っ込む。
「えっ!? あっ!?」
「聞いたことない? 環使いだけがアイテムボックス機能を持てるって」
「あ、いや、話には聞いていた……が……」
他人に環を触られる感触が衝撃的だったらしい。何とも感性豊かな反応だった。
「随分と容量が大きいわ。これなら木箱十箱分ってところかしら」
「カズンが二箱だから五倍。俺なんて一箱だもん、すげえ」
そこからふたりで簡単にアイテムボックスの使い方をレクチャーした。
「その大剣もアイテムボックスを意識するだけで出し入れできるよ」
「えっ、こんな一瞬で!?」
「同じ系列の環使い同士だと物品を送り合うことも可能なの」
アイシャは食卓の上にあった小さなカゴからキャンディを一個取って自分の環に入れた。
するとユーグレンの環から同じキャンディが飛び出てくる。
「く、空間転送だと……!?」
反応が大袈裟で面白い。
「そうか、アケロニア王国は旧世代魔力使いの国だもんなー」
「しばらくいろいろ試してみるといいわよ」
今はひとまずここまでだ。まずは朝食のため屋台広場へ向かうことにした。
屋台広場は王都内に数ヶ所ある。
トオンの古書店のある南地区は早朝から夜中まで屋台が開いているので利用しやすく便利だ。
ささっと立ち食いのタコスで朝食を済ませたが、初タコス経験のユーグレンは感激していた。
「屋台でこんなに新鮮な野菜が食べられるとは良いな! しかも真冬なのに生野菜まで!」
生野菜とはいえ玉ねぎや香菜のみじん切りだが、旅の間は偏った食事が多かったそうで嬉しそうにコーントルティーヤごと口に運んでいた。
一番多いのは焼いた牛肉を削ぎ切りにして、焼いた唐辛子やトマトをペーストにしたサルサで食べるもの。オプションでアボガドも追加できる。
海老や牡蠣、帆立、白身魚などシーフードも人気だ。こちらはチポトレという燻製唐辛子を入れたマヨネーズを加えたものも人気である。
どれも小型のライムを絞って、熱々の出来立てを口に運ぶ。
「カーナ王国の庶民グルメってやつです。なかなかでしょ?」
「カズンも大好きでしたよ」
「美味い。これは本気で美味い」
屋台では一枚の皿に小型のタコスが三つでワンセット。アイシャとトオンは一皿ずつだったが、ユーグレンは二皿平らげていた。
サービスのチキンスープを紙コップで飲みながら、満足そうに胃の辺りを押さえている。
「小腹が空いたらここに来ればすぐ食べられます。夜は酒も飲めるので」
「ルシウスさんはビールでイカフライが好きね。朝と夜だとお店のメニューも少し変わるからまた来てみましょ」
自宅でアイシャが作るのも良いが、しばらくはカーナ王国の食文化に慣れてもらうよう屋台や地元の店に連れて行くのも良いかもしれない。
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