婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

文字の大きさ
189 / 306
第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン

エンジョイ、ダンジョン

しおりを挟む
「ようし、我は勇者の末裔にして偉大なるヴァシレウス大王の孫ユーグレン・アケロニア。綿毛竜コットンドラゴンたちよ、かかってこい!」
「えっ、いいなユーグレンさん。俺も何か格好良さそうな口上言ってみたい!」
「ははは、こういうのはノリと勢いが大事なのだ!」
「くっ、俺の場合は両親も先祖も威を借るにはちょっと微妙だけど!」

 男子二人は楽しそうだ。飛びかかってくる毛玉相手に防御したり弾き飛ばしたりとレクリエーション気分で遊んでいる。

「ふむ、ここは人工ダンジョンだから奥にいるボスを倒した後は空になる。綿毛竜コットンドラゴンたちの巣にしてやっても良いかも」
「ジューア様、でもダンジョンですから冒険者たちが来ますよね? もふもふちゃんたちが危険じゃないですか?」

 冒険者ギルドの判定ではこの魔法樹脂製のダンジョンのランクはS。当然、集まってくる冒険者たちのランクも高くなる。

 とそのとき、雛竜たちの後ろで泰然と構えていたユキノが大きく口を開けた。
 喉の奥に魔力の塊がある。全身の真っ白な羽毛がネオンブルーの魔力を帯び始めた。

「あら。ユキノ君たらルシウスさんと同じ魔力ね」
「弟の随獣だからな」

 などとアイシャとジューアが話している前で、ユキノがグァーッという雄叫びとともに魔力を放出した。
 トオンとユーグレンに向けて。

「と、トオン! ユーグレンさんも! 大丈夫!?」

 慌ててアイシャが駆け寄ると、ユーグレンが魔力で創り出した大楯でトオンの前に出て、何とか二人とも無事だ。
 だがトオンは倒れ伏してしまっているし、ユーグレンも脚がぷるぷると震えている。

「こ、怖……ルシウス様の聖者の審判と同じ威力じゃないか、これで私たちが邪悪だったら蒸発していたところだぞ!?」
「聖者の審判?」

「ピュイッピー!(ふっ。正しきものは生き残り、邪悪なるものは滅びるものよ!)」
「「「「「ピュイッピー!(ものよー!)」」」」」

 してやったり、な表情で綿毛竜コットンドラゴンたちはご満悦だ。

「あの。ユキノ君て竜種のランクはいくつ?」
「ピュイッ(ズバリSランクです!)」
「まああ……!」

 それは強いわけだ。Sランクダンジョンの主となるなら資格は十分ある。

 なお雛竜たちは揃ってDランクだそうだ。成長するにつれてランクが上がっていくそうで。
 道理でCランクのトオンでも〝ぺしっ〟とはね返せていたわけだ。



「ユーグレンさん、そんな盾なんて持ってたっけ?」

 助け起こしてもらったトオンが目敏くユーグレンの左腕の盾に気づいた。
 縦長の一般的なサイズの盾だ。上部に剣が付いていて、振るえば武器としても使えるようになっている。

「アケロニア王族が血筋に受け継ぐ武器なんだ。本来はバックラーなのだが、リンクに目覚めて盾役タンクの資格を得てから進化したようだ」
「バックラー!?」

 そのバックラーとは、本来は丸型の小型の盾で付属する武器もせいぜい短剣サイズのはずだ。
 剣士や拳で戦う闘士が、攻守を備えるために装備するものだが、ユーグレンのものはサイズが大きいため防御寄りの機能のようだ。

「あら、ならカズンも?」
「もちろん。あいつが戦ったところは見なかったかい?」
「カズンが戦ったところ……あったっけ?」
「ないわね。今度機会があったら見せてもらいましょ」

 アイシャとトオンが〝カズン〟と言って思い出すのは、サーモンパイを始めとした美味しいごはん中心だ。
 彼は戦う人というより飯テロお兄さんなのである。
 余談だがカズンの冒険者ランクはBだそうだ。

 一通り攻撃して満足したらしい綿毛竜コットンドラゴンの特に雛竜たちはピュイピュイはしゃいでいる。

「お前たち、遊びはここまでだ。先に進むぞ」

 リーダーのジューア様の一声でピシッと場の空気が引き締まる。



 以降は前日と同じく、魔法樹脂で充填された地下の中を、点在する空間を繋ぎながら進んでいった。

 マッピング担当のトオンによると。

「ダンジョン全体は大まかに楕円形になってるね。多分、元々地下に埋まってた古代生物の胴体の形なんだと思う」

 その巨大な楕円の地下空間をルシウスが魔法樹脂でほとんど埋めてしまったわけだ。
 所々にアリの巣のように円形の空間が空いているのは、魔法樹脂が固まる際に含んでしまった地中の気泡の塊かもしれないそうだ。

 途中、休憩しながらマップを確認していると、思いついたように神人ジューアが地下空間の一番底部を指差した。

「一度、底まで行ってみよう。私が先に行くから、お前たちは後からユキノに乗って降りて来るように」
「あっ、ジューア様!」

 虹色を帯びた夜空色の魔力で垂直に半径二メートルほどの穴を開けて、ジューアがそのまま中へ飛び降りて行ってしまった。

「私も降りるわ。ユキノ君はトオンたちをよろしくね」
「ピュイッ(任されました!)」

 アイシャには空を飛ぶ飛行術の心得がある。
 躊躇いなく飛び降りたアイシャを、トオンとユーグレンが覗き込んだが、既にジューアもアイシャも姿は見えなかった。
 ダンジョン内は魔法樹脂の発光で明るかったが、穴の先は暗い闇だ。

「えっ、嘘。まさかここを飛ぶの?」
「底が見えないな……。これでは縄も長さが足りまい」

 そんな二人の背中がぽふぽふと叩かれた。ユキノのもふもふ羽毛の前脚だ。

「ん?」

 振り向くと、ぽいっと腕の中に雛竜たちを放られた。
 トオンには二体、身体の大きなユーグレンには三体。
 腕に雛竜を抱えたところで、今度は雛竜ごとユキノの前脚で二人まとめて抱え込まれた。

「ピュイッピューウ!(いきますよー!)」
「ま、待ってくれ、せめて心の準備をさせてほしい!」
「ピュッフー!(やっほーい!)」
「おちるううううう!」

「「「「「ピャーッ♪」」」」」








※トオンは良い口上浮かびませんねー「初代聖女エイリーと前国王アルターの息子トオンだ!」とか何の罰ゲームなんだってなってしまいます´д` ;
しおりを挟む
感想 1,049

あなたにおすすめの小説

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話 2025.10〜連載版構想書き溜め中 2025.12 〜現時点10万字越え確定

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

私の事を婚約破棄した後、すぐに破滅してしまわれた元旦那様のお話

睡蓮
恋愛
サーシャとの婚約関係を、彼女の事を思っての事だと言って破棄することを宣言したクライン。うれしそうな雰囲気で婚約破棄を実現した彼であったものの、その先で結ばれた新たな婚約者との関係は全くうまく行かず、ある理由からすぐに破滅を迎えてしまう事に…。

『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』

しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。 どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。 しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、 「女は馬鹿なくらいがいい」 という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。 出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない―― そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、 さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。 王太子は無能さを露呈し、 第二王子は野心のために手段を選ばない。 そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。 ならば―― 関わらないために、関わるしかない。 アヴェンタドールは王国を救うため、 政治の最前線に立つことを選ぶ。 だがそれは、権力を欲したからではない。 国を“賢く”して、 自分がいなくても回るようにするため。 有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、 ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、 静かな勝利だった。 ---

その支払い、どこから出ていると思ってまして?

ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。 でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!? 国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、 王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。 「愛で国は救えませんわ。 救えるのは――責任と実務能力です。」 金の力で国を支える公爵令嬢の、 爽快ザマァ逆転ストーリー! ⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中

何か、勘違いしてません?

シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。 マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。 それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。 しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく… ※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。