婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン

海上神殿の復活

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「ぷぅ!(なんだこれはー!? 人も建物もゴミのようではないか!)」

 アイシャの手の中から王都を見下ろしたピアディがびっくりして、すぐにプンプンと怒り始めた。

「ぷぅ!(しかも母なる海がとおい! カーナたん、海! 海への道を作りますぞ!)」

 鼻息も荒くぷうっとピアディが鳴くと、遠くから地響きのような鈍く低い音が聞こえてきた。

「ピアディ。海への通路を開くと、大陸の西部が水没してしまうよ」
「ぷぅ……(だってえ)」
「許可しない。旧王家の王城があるからそこを拠点にすればいい」
「ぷぅ!?(子孫とはいえ簒奪者の居城を使うのはやだなのだー! えんぎわるー!)」

 アイシャの手の中から黄金龍のカーナ姫とやりとりしていたピアディは、そのまま「ぷぃーぷぃー」と鳴きながら天を仰いで右左、右左と小さな頭を何度か動かした。
 やがて目的が定まったのか、王都の外、遠くに顔を向けた。

「ぷぅ!(ならば神殿のみでがまんする! いでよ、ポセイドニアー!)」
「!?」

 遠くに見える海の青い沖合の中央が白く染まった。
 海中から海水を押し上げて白亜の巨大な建物が姿を現したのだ。

「魚人族の王国は海洋国家ポセイドニアといった。あの建物の名前も同じ、海上神殿ポセイドニアという」

 カーナ姫が教えてくれたが、突如出現した海の建物に一同はそれどころではない。

「ポセイドニア……ポセイドン? 海の神は世界が違っても共通だったのか……?」

 カズンが何やら呟いている。が、そういう細かい話は後でだ。

 カーナ王国は一部が海に面している。以前、アイシャとトオンが国境越えの実験をした、対岸にゼクセリア共和国がある場所だ。

「むう。ゼクセリア共和国側でも人々が気づいて騒ぎ始めたようだ」
「早めに円環大陸全土にピアディやカーナ神国のことを告知しないと」

 海上に現れた神殿へは道がないから船で行くしかない。
 空に浮かんでいた一同は、地上に残っていた大神官や神官たちに見送られて、そのまま神殿に向かうことにした。



 海上神殿ポセイドニアは海の中にあったとは思えないほど状態が良く、劣化もしていなければ、海水や海藻などの汚れも見当たらなかった。

 魚を始めとした海の生き物たちは建物周りの海域に集まっていたが、それさえなければ地上の神殿とほとんど変わりがない。

「うん。状態保存の魔法がよく効いている。この国の神殿は海上神殿をそのまま使うといい」

 言って、神殿に着くなり黄金龍から一角獣に変わり、また優美な少女の姿に戻ったカーナ姫は敷地内にある中庭に立った。
 そしておもむろに地面に跪いて土に直接口づけた。

「あっ!?」

 口づけられた場所からすぐ植物の芽が生えて、あっと言う間に十メートルほどの、枝葉が丸い笠状に広がった常緑樹になった。
 葉は濃緑色で細長い。枝のところどころにほんのり真珠色に光る、白い小さな花がいくつも咲き始めた。

 樹木を見上げたトオンは自分のリンクを介して樹の名前を思い出した。

「これ、菩提樹ほだいじゅだ。果肉の中の実が小さくて硬いから数珠になるやつ」
「私たちはルドラクシャと呼んでいる。神殿のある国の首都支部に必ず最低一本生やしてるんだ。ここはカーナ王国……いや、カーナ神国だからカーナ・ルドラクシャだね」

 花々は見る見るうちに薄い緑色をした、やや大きめの桜桃さくらんぼほどの産毛の生えた実になっていった。
 そして実は枯葉色に変わり、自然に地へと落ちていく。
 そのうちの一個を摘んで小さな果肉を割ると、中から皺と筋のある、焦茶色の硬いビーズ状の核が出てきた。

「ルドラクシャで作ったアクセサリーや数珠は魔除けや邪気避けのアイテムになる。神官は必ず身につける決まりだ。ただ……」

 カーナ姫はそこで少し口ごもった。

「閨への持ち込み禁止になっている。その、性行為で発生するエネルギーとルドラクシャの効果は相性が悪くてね」

 神殿に所属する者が、なぜ基本的に独身者でなければならないかの理由でもあるそうだ。

「魔除けや邪気避けのアミュレットに使うルドラクシャは、どういうわけか生殖のエネルギーと相性が悪い。効果が減衰してしまうんだ。夜の営みのときは身体から外すようにしてほしい」

 と注意を受けて皆は頷いたが、カーナ姫の琥珀の瞳は特にアイシャとトオンを見ていた。

「君たち二人にはまだ少し早い話題だっただろうか?」
「え、ええと」
「お、俺たちじっくり関係を深めていく派なので! はい!」

 二人が恋人同士であることは誰もが承知していたが、この態度からまだまだ清い仲であることが一発で露呈した。

 互いに顔を見合わせて、赤い顔でモジモジとしている様子は若いカップルらしく微笑ましかった。




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