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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
聖剣・魚切り包丁
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それから皆で中庭に落ちたルドラクシャの実を拾い集めながら、カーナ姫がもう少しだけ深く突っ込んだ話をしてくれた。
「聖なる魔力の持ち主に愛されると、ステータス値が上がりやすいんだ。トオン、聖女アイシャの恋人の君にも何か恩恵があるんじゃないかな?」
「えっ、俺ですか!?」
と言われても、元の魔力値も低めで、攻撃力なども平均以下の元一般人のトオンだ。思い当たる節はなかった。
(まさか、俺、本当はアイシャに好かれてないとか……!?)
内心ものすごく慌てたトオンだったが、意外なところから助けが来た。ユーグレンだ。
「彼の場合、環の使いこなし度がとても高いですね。聖女の恋人である恩恵でしたか」
「そうだろう? それに、聖女や聖者に好意的な善い人間が幸運に恵まれる理由も同じなんだ。聖なる魔力の持ち主は、世界の理の擬人化の側面があるからね」
世界そのものに肯定される。故に能力値アップや幸運の形で恩恵があるそうだ。
「へえ。ならトオン君、アイシャ様とベッドインするようになったら……むぐっ」
「こら、ヨシュア! 不躾だぞ!」
遠慮のないコメントをしかけたヨシュアを、その幼馴染みカズンが慌てて口を塞いで止めていた。
もうトオンもアイシャも恥ずかしくて、ルドラクシャを拾う手が止まってしまっている。
「叔父様はどうだったんです?」
「私か? 私の場合は……」
甥のヨシュアに訊かれてルシウスが思案げな表情になる。これまでの過去の己の遍歴を思い返しているようだ。
「言われてみれば、関係を持った相手は今、それぞれの場所で成功者になっているような……。親しかった友人たちも皆、それなりの地位や財を築いている」
おおお、と驚きの声が上がった。
だが今のルシウスに伴侶や恋人はいない。もっと詳しく聞いてみたかったが、下手すると藪蛇になりかねなかったため、何となくこの話題は尻すぼみになってしまった。
海上神殿はひとまずカーナ姫が結界を張って、許可なく近くの船で人が侵入できないよう措置を施した。
では王都に戻ろう、とまた空を飛ぼうとしたところで待ったがかかった。
目の前にカーナ姫が自分の虹色を帯びた真珠色の魔力の塊を作った。その中に片手を突っ込んで、取り出したのは革の鞘入りの細長い武器だった。
「わあ、それアイテムボックスですか、カーナ様!?」
「そう、環使いたちと仕組みは同じだ。自分の魔力を媒介にして異次元空間に物品を収納している」
「勇者の末裔のカレイド王家から聖剣を預かってきてたんだ。ルシウス君に渡すつもりだったが、既に聖剣持ちの彼には不要。さてどうするか」
カーナ姫が一同を見回し、黒髪の青年二人のところで視線を止めた。
二人いるうち、背が低いほうを見ている。
「ヴァシレウス大王の息子カズン。邪悪を追う君に託そう」
「僕にですか!? 有り難く存じます!」
革製の肩提げタイプの鞘を差し出してきた。
「出して見てごらん」
言われるままに取り出すと、それはホーリーバイソンなる黒い聖牛の角の柄に嵌まった魚切り包丁だった。
いわゆる柳刃包丁だ。細長く、魚を刺身で切り分けるのに適した形状である。
形状はともかく、持ったときに感じる魔力の質に驚いた。
「これ、聖剣……ですか?」
「そうだ、聖剣打ちのハイドワーフが打った包丁でね。聖剣と材料から製法からぜーんぶ同じ。カレイド王国の王家に伝わる秘宝なんだが、今の女王からカーナ王国の異変に役立ててほしいと預かってきたんだよ」
カーナ姫とカズンがやり取りしているのを見て、アイシャはちらっとルシウスと視線を交わして彼らに近寄った。
「カーナ様。その聖剣に聖女の私から祝福を贈らせてください」
「ええ、聖者の私からも是非」
カズンに一度聖剣を鞘に収め直させて、上からアイシャとルシウスは二人、聖剣を横からぎゅっと両手で握り締めた。
アイシャからはネオングリーンに輝く魔力が。
先日、神人に覚醒したばかりのルシウスからは虹色の煌めきを帯びたネオンブルーの魔力が吹き出して、細い聖剣へと吸い込まれていった。
「私からの祝福は既に込めてある。何せ私が守護していたカレイド王国の宝物だからね。ピアディ、お前も」
祝福を、とカーナ姫が促そうとしたが、サラマンダーピアディは〝さいあい〟認定したヨシュアの胸元に引っ付いて、ぷぅぷぅおしゃべりに夢中だった。
「聖なる魔力の持ち主に愛されると、ステータス値が上がりやすいんだ。トオン、聖女アイシャの恋人の君にも何か恩恵があるんじゃないかな?」
「えっ、俺ですか!?」
と言われても、元の魔力値も低めで、攻撃力なども平均以下の元一般人のトオンだ。思い当たる節はなかった。
(まさか、俺、本当はアイシャに好かれてないとか……!?)
内心ものすごく慌てたトオンだったが、意外なところから助けが来た。ユーグレンだ。
「彼の場合、環の使いこなし度がとても高いですね。聖女の恋人である恩恵でしたか」
「そうだろう? それに、聖女や聖者に好意的な善い人間が幸運に恵まれる理由も同じなんだ。聖なる魔力の持ち主は、世界の理の擬人化の側面があるからね」
世界そのものに肯定される。故に能力値アップや幸運の形で恩恵があるそうだ。
「へえ。ならトオン君、アイシャ様とベッドインするようになったら……むぐっ」
「こら、ヨシュア! 不躾だぞ!」
遠慮のないコメントをしかけたヨシュアを、その幼馴染みカズンが慌てて口を塞いで止めていた。
もうトオンもアイシャも恥ずかしくて、ルドラクシャを拾う手が止まってしまっている。
「叔父様はどうだったんです?」
「私か? 私の場合は……」
甥のヨシュアに訊かれてルシウスが思案げな表情になる。これまでの過去の己の遍歴を思い返しているようだ。
「言われてみれば、関係を持った相手は今、それぞれの場所で成功者になっているような……。親しかった友人たちも皆、それなりの地位や財を築いている」
おおお、と驚きの声が上がった。
だが今のルシウスに伴侶や恋人はいない。もっと詳しく聞いてみたかったが、下手すると藪蛇になりかねなかったため、何となくこの話題は尻すぼみになってしまった。
海上神殿はひとまずカーナ姫が結界を張って、許可なく近くの船で人が侵入できないよう措置を施した。
では王都に戻ろう、とまた空を飛ぼうとしたところで待ったがかかった。
目の前にカーナ姫が自分の虹色を帯びた真珠色の魔力の塊を作った。その中に片手を突っ込んで、取り出したのは革の鞘入りの細長い武器だった。
「わあ、それアイテムボックスですか、カーナ様!?」
「そう、環使いたちと仕組みは同じだ。自分の魔力を媒介にして異次元空間に物品を収納している」
「勇者の末裔のカレイド王家から聖剣を預かってきてたんだ。ルシウス君に渡すつもりだったが、既に聖剣持ちの彼には不要。さてどうするか」
カーナ姫が一同を見回し、黒髪の青年二人のところで視線を止めた。
二人いるうち、背が低いほうを見ている。
「ヴァシレウス大王の息子カズン。邪悪を追う君に託そう」
「僕にですか!? 有り難く存じます!」
革製の肩提げタイプの鞘を差し出してきた。
「出して見てごらん」
言われるままに取り出すと、それはホーリーバイソンなる黒い聖牛の角の柄に嵌まった魚切り包丁だった。
いわゆる柳刃包丁だ。細長く、魚を刺身で切り分けるのに適した形状である。
形状はともかく、持ったときに感じる魔力の質に驚いた。
「これ、聖剣……ですか?」
「そうだ、聖剣打ちのハイドワーフが打った包丁でね。聖剣と材料から製法からぜーんぶ同じ。カレイド王国の王家に伝わる秘宝なんだが、今の女王からカーナ王国の異変に役立ててほしいと預かってきたんだよ」
カーナ姫とカズンがやり取りしているのを見て、アイシャはちらっとルシウスと視線を交わして彼らに近寄った。
「カーナ様。その聖剣に聖女の私から祝福を贈らせてください」
「ええ、聖者の私からも是非」
カズンに一度聖剣を鞘に収め直させて、上からアイシャとルシウスは二人、聖剣を横からぎゅっと両手で握り締めた。
アイシャからはネオングリーンに輝く魔力が。
先日、神人に覚醒したばかりのルシウスからは虹色の煌めきを帯びたネオンブルーの魔力が吹き出して、細い聖剣へと吸い込まれていった。
「私からの祝福は既に込めてある。何せ私が守護していたカレイド王国の宝物だからね。ピアディ、お前も」
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