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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
ピアディの友認定
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ともあれ、さっそく聖剣の試し切りだ。
幸いここは海上神殿。海から食用の魚をいくらでも調達できる。
「カズン様、こちらをどうぞ」
ささっと素早くヨシュアが、ピチピチ跳ねる銀色の魚を差し出してきた。話の流れからすぐ海に走って手頃な魚を獲って来たようだ。
「お、アジか」
カズンが魚を受け取るや否や、ヨシュアは瞬時に魔法樹脂で台を作り、同じく魔法樹脂でまな板代わりのボードを設えて簡易作業台を完成させた。
しかも傍らには海水を汲んだバケツ型の魔法樹脂の容器まである。
「相変わらず手際が良いな。ヨシュア」
「ふふ。カズン様の調理の手伝いするの、久し振りですね」
楽しそうに作業する二人に、ついでだからとアイシャとルシウスは簡単な火おこしの準備を始めた。調味料や食器類ならば環内のアイテムボックスに常備してある。
捌くのは魚とはいえ生き物だ。包丁を入れる前に軽く手を合わせて祈ってから、カズンはいざ聖剣・魚切り包丁で切り分けていった。
「どうですか? やっぱり普通の包丁とは違いますか」
「うーん……普通の包丁だな。切れ味は良いが」
アジを〆てから三枚おろしにして血を洗い流し、皮を剥いだ後、刺身で食べやすいよう細めの薄切りにしていった。
研ぎたての刃物らしく、するっするっと滑らかに身が切れていく。
「ここまで切れ味が良いなら、味や歯応えも良いんじゃないか? アジだけに」
「ぷぅ(われ知ってる。そういうのオヤジギャグというのだ)」
「お?」
気づけばサラマンダーのピアディが作業台の上にいた。興味深そうにアジの切り身をウルトラマリンの瞳で見つめている。
「君は魚人なのだろう? ピアディ。魚は大丈夫なのか?」
「ぷぅ(偉大なるわれに食されるならお魚さんも本望であろう!)」
あーん、と大きく口を開けたのでカズンは切り分けた刺身を口に放り込んでやった。
「ぷぅ!?(こ、これは!)」
つぶらな目をカッと更に大きく見開いて、切り身をもぐもぐしたピアディは、次々と自分と同じぐらいの大きさだったアジの身を食べ尽くした。
と思ったら、小さな半透明の身体から、虹色を帯びたネオンイエローの魔力が四方八方のイルミネーションのように放射されている。
「ぷぅ!(すごい、すごいぞこれは! お魚さんが美味なのは当然として魔力がふえふえ!)」
「カズンの料理は元から魔力の増強効果があったわ」
「うん。食べると元気になったよね」
かつて、過酷な魔物の大侵攻の直後、極度に消耗したまま追放されたアイシャはカズンの作る食事で短期間に回復を遂げている。
「この聖剣、どうやら素材の魔力を引き出すタイプの効果と見た」
「すごいわ、カズンにぴったり!」
「だ、だが今のカズンは魔術師なのだろう? 何だか微妙な効果の気が……」
そもそも、それは聖剣の効果として如何なものか。
トオンやアイシャ、ユーグレンがあれこれ意見交換している横では。
けぷっと小さなゲップをして、ピアディが目をキラキラ輝かせてカズンを見つめている。
「お。ピアディ、もしかして鮭の人だけでなく」
「カズンも?」
〝さいあい〟認定するのかなーと周りが見守っていると、何と。
「ぷぅ!(とも! そなたはわがとも!)」
「ははっ、光栄だ、神人ピアディ。僕はカズンという。ヨシュアともども、よろしくな」
お互いに指を伸ばして、ちょん、と指先を合わせた。
この瞬間、二人の間で何かが通じ合ったようだ。
※さいあい認定してたら鮭の人に笑顔でキュッと〆られてた可能性……w
幸いここは海上神殿。海から食用の魚をいくらでも調達できる。
「カズン様、こちらをどうぞ」
ささっと素早くヨシュアが、ピチピチ跳ねる銀色の魚を差し出してきた。話の流れからすぐ海に走って手頃な魚を獲って来たようだ。
「お、アジか」
カズンが魚を受け取るや否や、ヨシュアは瞬時に魔法樹脂で台を作り、同じく魔法樹脂でまな板代わりのボードを設えて簡易作業台を完成させた。
しかも傍らには海水を汲んだバケツ型の魔法樹脂の容器まである。
「相変わらず手際が良いな。ヨシュア」
「ふふ。カズン様の調理の手伝いするの、久し振りですね」
楽しそうに作業する二人に、ついでだからとアイシャとルシウスは簡単な火おこしの準備を始めた。調味料や食器類ならば環内のアイテムボックスに常備してある。
捌くのは魚とはいえ生き物だ。包丁を入れる前に軽く手を合わせて祈ってから、カズンはいざ聖剣・魚切り包丁で切り分けていった。
「どうですか? やっぱり普通の包丁とは違いますか」
「うーん……普通の包丁だな。切れ味は良いが」
アジを〆てから三枚おろしにして血を洗い流し、皮を剥いだ後、刺身で食べやすいよう細めの薄切りにしていった。
研ぎたての刃物らしく、するっするっと滑らかに身が切れていく。
「ここまで切れ味が良いなら、味や歯応えも良いんじゃないか? アジだけに」
「ぷぅ(われ知ってる。そういうのオヤジギャグというのだ)」
「お?」
気づけばサラマンダーのピアディが作業台の上にいた。興味深そうにアジの切り身をウルトラマリンの瞳で見つめている。
「君は魚人なのだろう? ピアディ。魚は大丈夫なのか?」
「ぷぅ(偉大なるわれに食されるならお魚さんも本望であろう!)」
あーん、と大きく口を開けたのでカズンは切り分けた刺身を口に放り込んでやった。
「ぷぅ!?(こ、これは!)」
つぶらな目をカッと更に大きく見開いて、切り身をもぐもぐしたピアディは、次々と自分と同じぐらいの大きさだったアジの身を食べ尽くした。
と思ったら、小さな半透明の身体から、虹色を帯びたネオンイエローの魔力が四方八方のイルミネーションのように放射されている。
「ぷぅ!(すごい、すごいぞこれは! お魚さんが美味なのは当然として魔力がふえふえ!)」
「カズンの料理は元から魔力の増強効果があったわ」
「うん。食べると元気になったよね」
かつて、過酷な魔物の大侵攻の直後、極度に消耗したまま追放されたアイシャはカズンの作る食事で短期間に回復を遂げている。
「この聖剣、どうやら素材の魔力を引き出すタイプの効果と見た」
「すごいわ、カズンにぴったり!」
「だ、だが今のカズンは魔術師なのだろう? 何だか微妙な効果の気が……」
そもそも、それは聖剣の効果として如何なものか。
トオンやアイシャ、ユーグレンがあれこれ意見交換している横では。
けぷっと小さなゲップをして、ピアディが目をキラキラ輝かせてカズンを見つめている。
「お。ピアディ、もしかして鮭の人だけでなく」
「カズンも?」
〝さいあい〟認定するのかなーと周りが見守っていると、何と。
「ぷぅ!(とも! そなたはわがとも!)」
「ははっ、光栄だ、神人ピアディ。僕はカズンという。ヨシュアともども、よろしくな」
お互いに指を伸ばして、ちょん、と指先を合わせた。
この瞬間、二人の間で何かが通じ合ったようだ。
※さいあい認定してたら鮭の人に笑顔でキュッと〆られてた可能性……w
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