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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
選べる三サイズ
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「さて、アイシャ様。どのサイズで罪人たちにトオン君のコーヒーを飲ませるか。ご選択を」
「え、選べと言われても……困ったわ」
今でこそ自分でも調理スキルを獲得して料理に困ることがなくなったアイシャだが、旧王城で受けた食の恨みは今でも覚えている。
ルシウスやゲンジのオヤジさん、カズン、それに近所のパン屋のミーシャおばさんなど飯ウマ持ちが作る料理や菓子の味を知っても、残念ながら記憶は薄れなかった。
多分、生きている限りあの辛かった日々の記憶は残り続けるだろうと思う。
(でもね、私はあの人たちとは違うわ。彼らを同じ目に遭わせても、きっと素直には喜べない)
アイシャは聖女であることを抜きにしても、善良な性質の人間だ。
鮭の人にも、まだ短い付き合いだったがわかっているはずだ。だからこそ、アイシャでは厳罰を下せないことも理解した上で、今回のような機会を作ってくれたのだと思う。
「虐げてきた人々にまだ恨みはあるの。でも、だからといってわざわざ苦しめたいとも思わないわ。だから」
小さなカップに伸ばしかけたアイシャの手は、だが途中で上から握られ、止められた。トオンの手だ。
「アイシャ。君が決めなくてもいいと思うよ」
「トオン?」
どういう意味だろう?
見ると、鮭の人だけでなくカズンやユーグレンも納得した顔になっている。
「罪を犯した彼ら自身に選ばせるんだ。君を虐げ、傷つけた償いとして、選ぶカップの大きさで誠意を見せてもらおうよ」
と言えば、もう選べるサイズは決まったも同然だ。
たとえ一番小さなカップに手を伸ばしたとしても、見守る周囲の視線がそれを許すことはないだろう。
「よし、決まりましたね。ではオレはこの後、叔父様に報告に行きます。でもその前に」
トン、と鮭の人がまた床付近を爪先で叩いた。
飛び出してきたのは、魔法樹脂で封入された白い箱だった。ケーキの箱だ。
箱にプリントされたロゴを見て、またカズンが黒い目をキラキラに輝かせている。
「こ、この箱は!」
「アケロニアのリースト家に頼んでた物資が届きまして。懐かしいですよねー、あの喫茶店のチョコレートケーキです」
パカっと蓋を開けると、中には四角くて表面がミルクチョコでコーティングされたチョコレートケーキがワンホール入っていた。
「何というか……地味だな?」
「おおおお! 店で食べるのと同じタイプじゃないか!」
首を傾げるユーグレンと、テンション上げ上げのカズンとが対照的だった。
「まだお昼前ですけど、皆で少しいただきませんか? コーヒーを淹れ直して。何ならトオン君挽きたてのそのコーヒーでも」
「トオンのコーヒー以外でお願いします!」
お約束のような流れだ。皆で笑って、チョコレートケーキをお供にコーヒーブレイクすることにした。
「え、選べと言われても……困ったわ」
今でこそ自分でも調理スキルを獲得して料理に困ることがなくなったアイシャだが、旧王城で受けた食の恨みは今でも覚えている。
ルシウスやゲンジのオヤジさん、カズン、それに近所のパン屋のミーシャおばさんなど飯ウマ持ちが作る料理や菓子の味を知っても、残念ながら記憶は薄れなかった。
多分、生きている限りあの辛かった日々の記憶は残り続けるだろうと思う。
(でもね、私はあの人たちとは違うわ。彼らを同じ目に遭わせても、きっと素直には喜べない)
アイシャは聖女であることを抜きにしても、善良な性質の人間だ。
鮭の人にも、まだ短い付き合いだったがわかっているはずだ。だからこそ、アイシャでは厳罰を下せないことも理解した上で、今回のような機会を作ってくれたのだと思う。
「虐げてきた人々にまだ恨みはあるの。でも、だからといってわざわざ苦しめたいとも思わないわ。だから」
小さなカップに伸ばしかけたアイシャの手は、だが途中で上から握られ、止められた。トオンの手だ。
「アイシャ。君が決めなくてもいいと思うよ」
「トオン?」
どういう意味だろう?
見ると、鮭の人だけでなくカズンやユーグレンも納得した顔になっている。
「罪を犯した彼ら自身に選ばせるんだ。君を虐げ、傷つけた償いとして、選ぶカップの大きさで誠意を見せてもらおうよ」
と言えば、もう選べるサイズは決まったも同然だ。
たとえ一番小さなカップに手を伸ばしたとしても、見守る周囲の視線がそれを許すことはないだろう。
「よし、決まりましたね。ではオレはこの後、叔父様に報告に行きます。でもその前に」
トン、と鮭の人がまた床付近を爪先で叩いた。
飛び出してきたのは、魔法樹脂で封入された白い箱だった。ケーキの箱だ。
箱にプリントされたロゴを見て、またカズンが黒い目をキラキラに輝かせている。
「こ、この箱は!」
「アケロニアのリースト家に頼んでた物資が届きまして。懐かしいですよねー、あの喫茶店のチョコレートケーキです」
パカっと蓋を開けると、中には四角くて表面がミルクチョコでコーティングされたチョコレートケーキがワンホール入っていた。
「何というか……地味だな?」
「おおおお! 店で食べるのと同じタイプじゃないか!」
首を傾げるユーグレンと、テンション上げ上げのカズンとが対照的だった。
「まだお昼前ですけど、皆で少しいただきませんか? コーヒーを淹れ直して。何ならトオン君挽きたてのそのコーヒーでも」
「トオンのコーヒー以外でお願いします!」
お約束のような流れだ。皆で笑って、チョコレートケーキをお供にコーヒーブレイクすることにした。
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