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第一章 異世界転移、村ごと!
その頃、日本では~side元後輩、ファミレスオフにお社長来たる
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ども、御米田先輩のかわいい後輩の鈴木っス。
先日、イタリアン系のファミレスオフしてたオレたち社内の御米田派閥メンバー。
そこに乗り込んできたのは、ユウキ先輩が担当してた取引先の化粧品会社の社長だった。
男物の白スーツに、長めのスポーツ刈りを金髪に染めてツンツンにおっ立てた演歌歌手にいそうな小太りの六十代のオッサン……どちらかといえば小汚い感じの……
ヤバいっスよ、この人財界の有名人らしくて日本だけじゃなく海外にも顔がきくんだから。なんでこんなフットワーク軽くファミレスに来ちゃうかな。
「ファミレスを馬鹿にすんでねえ! チェーン店がどんだけ勉強になるか、あんだだちも学びんしゃい!」
「「「「はーい」」」」」
オレたちは良い子のお返事一択だ。基本このお方には逆らっちゃなんねえと、ユウキ先輩からもくどくどと姑が嫁に言い聞かすよりしつこくいい含められていたものだ。
というか、オレが去年新卒で入社して営業部に配属され、最初に担当させられたのがこの米俵みどり社長の会社だったのだ。
ひでえ……新卒のフレッシュなオレにこんなゲテモノ担当させやがった部長は鬼だ。悪魔だ。
無理だろ、そもそも東京生まれ東京育ちのオレはこの人のズーズー弁が全然聞き取れなかった。そのせいで始終イラっとしてたからか、発注ミスを何度も繰り返して「土下座しに来んかい!」とうちの社長宛の直通電話で怒鳴られて会社をクビになるところだった。
ゆとり世代でマイペースなオレもあの剣幕にはビビりまくって足がすくんだ。もうそのまま退職代行使って会社辞めちまおうと思いましたもんね。
そこを助けてくれたのが同じ営業部の御米田先輩だ。一緒にみどり社長に謝罪に行って頭を下げてくれて、今後は自分がオレを指導するからって許しを貰ったんだ。
あれからオレはずっと御米田派だ。今日ファミレスに集まった他の三人も多かれ少なかれ先輩に助けられた連中なのだ。
「んで? あちしのユウキ君が辞めだのはどゆこと?」
「それはですねえ……」
まずは駆けつけ三杯の勢いでデカンタのフレッシュワイン赤をがぶ飲みしたみどり社長に詰め寄られ、オレは困った。
ゆとり世代とはいえオレも会社員なんスよ。コンプライアンス遵守精神はユウキ先輩から叩き込まれている。このお人は取引先だがどこまで話してよいものやら。
困ってたオレの代わりに説明を買って出てくれたのは、今回のオフ唯一の女性の先輩だった。ユウキ先輩の元カノの友達で、先輩とも親しかった人だ。
「米俵社長、実は……」
上手いこと社外秘情報をボカして、ユウキ先輩が退職するまでの経緯を説明してくれた。
「はーん? コンペ企画と女盗られただあ!? で泣き寝入り退職……ああああ、ユウキ君……その前にあちしに相談してほしがっだあ!」
甲高いのにダミ声の大声で嘆くみどり社長に他の客たちの視線が集中する。オレたちは周りにすいませんと頭を下げたが、お社長本人は気にした素振りもない。こういう図太さがないとお社長なんてやってられないらしいっスよー。
「その八十神って奴ぁどいつだ!」
「ユウキ先輩の後を引き継いで、みどり社長のとこの担当になるそうです。近いうちに挨拶に行くと思いますよ」
八十神が先輩の後を引き継ぐと聞いて、まさか企画部から営業部に移って来るのか、遠慮なくイビってやるぜえ! とワクワクしてたんスけどね。
残念、企画部のままだそうだ。
「そういえば聞いたことなかったですけど。お社長、なんでそんなにユウキ先輩好きなんスか?」
オレが知る限り、みどり社長は最初から先輩に好意的だった。
仕事のミスやらかしたオレに血管切れそうなほど怒ってたのに、ユウキ先輩と一緒に謝りに行ったら即機嫌直してお菓子くれたしな。東北の有名なピーナッツ菓子をくれたぐらい。好きなんスね山形銘菓。
「あん子いい男じゃろ? まあ昔からの顔見知りだあ。んでもいちばんのお目当てはあん子のパパしゃん!」
「ユウキ先輩のお父さんって確か、早期リタイヤしてタイに移住した?」
「それ! あちしの人生で知る限り、いっちばんのええ男だ。あ~あ、あんだだちの会社のタイ支部設立に協力しだら、ユウキ君通じてゲンキ君と仲良ぐなれると思っだのにい!」
……ユウキ先輩のパパさん逃げて。超逃げて。って先輩のパパさんゲンキさんっていうのか。初情報ゲットだぜ。
それから小エビの入ったサラダとイカ墨のスパゲッティをフレッシュワインと一緒に次々平らげながら、お社長はユウキ先輩とそのパパさんへの愛を語り続けた。
すごいモテ男で、ヤベェくらい色気のあるイケオジだそうだ。確か外資のバイヤーやってたと聞いたことがある。
オレはお社長がその白いスーツにイカ墨を飛ばさないか気になって仕方なかったんだが、意外にもお社長の食い方はマナーが良くてソース跳ねナシ。
このお人は見た目で判断しちゃなんねえとは、ユウキ先輩の教えだ。
「話はわがった。ちょうどあんだだちの会社から会食の打診があっだとこだあ。あちしのユウキ君をいぢめた奴のツラァ拝んだるべ!」
で最後に追加でグラスワイン赤を更に一杯ぐびっと一気飲みしたのちに、オレたちが飲み食いした伝票ごと精算してくれて、そのまま帰っていかれたのだった……お社長大好きっス!
うわ、駐車場に停まってるの真っ赤なフェラーリじゃん。やっぱ稼いでるお社長は違うっスね。
「す、すごいオジサンだったね……」
「あ、それアウト。間違い」
「へ?」
そう、皆初めてのときはそこで間違う。
「オジサンじゃない。あれ、オバサンだから」
「はー!?」
「本人は『マニッシュスタイルだべ』って言い張ってるけど、メンズ風ファッション通り越してオッサン演歌歌手になっちまったやつ」
マニッシュはフランス語マスキュリンの英訳で、〝男性的な〟という意味のファッションスタイルのことだ。
……なんか違うよなあって、お社長と会うたびに思う。
「あ、メッセージ打っておこ。『みどり社長、ごちそうさまでした! 八十神の接待受けるならその後どうなったか教えてくださいね!』と」
ピコン!
『わがった。またファミレスで待ち合わせだべ、報告してやるっぺ!』
わあ、楽しみだなあ~!
今から期待で待ちきれない!
先日、イタリアン系のファミレスオフしてたオレたち社内の御米田派閥メンバー。
そこに乗り込んできたのは、ユウキ先輩が担当してた取引先の化粧品会社の社長だった。
男物の白スーツに、長めのスポーツ刈りを金髪に染めてツンツンにおっ立てた演歌歌手にいそうな小太りの六十代のオッサン……どちらかといえば小汚い感じの……
ヤバいっスよ、この人財界の有名人らしくて日本だけじゃなく海外にも顔がきくんだから。なんでこんなフットワーク軽くファミレスに来ちゃうかな。
「ファミレスを馬鹿にすんでねえ! チェーン店がどんだけ勉強になるか、あんだだちも学びんしゃい!」
「「「「はーい」」」」」
オレたちは良い子のお返事一択だ。基本このお方には逆らっちゃなんねえと、ユウキ先輩からもくどくどと姑が嫁に言い聞かすよりしつこくいい含められていたものだ。
というか、オレが去年新卒で入社して営業部に配属され、最初に担当させられたのがこの米俵みどり社長の会社だったのだ。
ひでえ……新卒のフレッシュなオレにこんなゲテモノ担当させやがった部長は鬼だ。悪魔だ。
無理だろ、そもそも東京生まれ東京育ちのオレはこの人のズーズー弁が全然聞き取れなかった。そのせいで始終イラっとしてたからか、発注ミスを何度も繰り返して「土下座しに来んかい!」とうちの社長宛の直通電話で怒鳴られて会社をクビになるところだった。
ゆとり世代でマイペースなオレもあの剣幕にはビビりまくって足がすくんだ。もうそのまま退職代行使って会社辞めちまおうと思いましたもんね。
そこを助けてくれたのが同じ営業部の御米田先輩だ。一緒にみどり社長に謝罪に行って頭を下げてくれて、今後は自分がオレを指導するからって許しを貰ったんだ。
あれからオレはずっと御米田派だ。今日ファミレスに集まった他の三人も多かれ少なかれ先輩に助けられた連中なのだ。
「んで? あちしのユウキ君が辞めだのはどゆこと?」
「それはですねえ……」
まずは駆けつけ三杯の勢いでデカンタのフレッシュワイン赤をがぶ飲みしたみどり社長に詰め寄られ、オレは困った。
ゆとり世代とはいえオレも会社員なんスよ。コンプライアンス遵守精神はユウキ先輩から叩き込まれている。このお人は取引先だがどこまで話してよいものやら。
困ってたオレの代わりに説明を買って出てくれたのは、今回のオフ唯一の女性の先輩だった。ユウキ先輩の元カノの友達で、先輩とも親しかった人だ。
「米俵社長、実は……」
上手いこと社外秘情報をボカして、ユウキ先輩が退職するまでの経緯を説明してくれた。
「はーん? コンペ企画と女盗られただあ!? で泣き寝入り退職……ああああ、ユウキ君……その前にあちしに相談してほしがっだあ!」
甲高いのにダミ声の大声で嘆くみどり社長に他の客たちの視線が集中する。オレたちは周りにすいませんと頭を下げたが、お社長本人は気にした素振りもない。こういう図太さがないとお社長なんてやってられないらしいっスよー。
「その八十神って奴ぁどいつだ!」
「ユウキ先輩の後を引き継いで、みどり社長のとこの担当になるそうです。近いうちに挨拶に行くと思いますよ」
八十神が先輩の後を引き継ぐと聞いて、まさか企画部から営業部に移って来るのか、遠慮なくイビってやるぜえ! とワクワクしてたんスけどね。
残念、企画部のままだそうだ。
「そういえば聞いたことなかったですけど。お社長、なんでそんなにユウキ先輩好きなんスか?」
オレが知る限り、みどり社長は最初から先輩に好意的だった。
仕事のミスやらかしたオレに血管切れそうなほど怒ってたのに、ユウキ先輩と一緒に謝りに行ったら即機嫌直してお菓子くれたしな。東北の有名なピーナッツ菓子をくれたぐらい。好きなんスね山形銘菓。
「あん子いい男じゃろ? まあ昔からの顔見知りだあ。んでもいちばんのお目当てはあん子のパパしゃん!」
「ユウキ先輩のお父さんって確か、早期リタイヤしてタイに移住した?」
「それ! あちしの人生で知る限り、いっちばんのええ男だ。あ~あ、あんだだちの会社のタイ支部設立に協力しだら、ユウキ君通じてゲンキ君と仲良ぐなれると思っだのにい!」
……ユウキ先輩のパパさん逃げて。超逃げて。って先輩のパパさんゲンキさんっていうのか。初情報ゲットだぜ。
それから小エビの入ったサラダとイカ墨のスパゲッティをフレッシュワインと一緒に次々平らげながら、お社長はユウキ先輩とそのパパさんへの愛を語り続けた。
すごいモテ男で、ヤベェくらい色気のあるイケオジだそうだ。確か外資のバイヤーやってたと聞いたことがある。
オレはお社長がその白いスーツにイカ墨を飛ばさないか気になって仕方なかったんだが、意外にもお社長の食い方はマナーが良くてソース跳ねナシ。
このお人は見た目で判断しちゃなんねえとは、ユウキ先輩の教えだ。
「話はわがった。ちょうどあんだだちの会社から会食の打診があっだとこだあ。あちしのユウキ君をいぢめた奴のツラァ拝んだるべ!」
で最後に追加でグラスワイン赤を更に一杯ぐびっと一気飲みしたのちに、オレたちが飲み食いした伝票ごと精算してくれて、そのまま帰っていかれたのだった……お社長大好きっス!
うわ、駐車場に停まってるの真っ赤なフェラーリじゃん。やっぱ稼いでるお社長は違うっスね。
「す、すごいオジサンだったね……」
「あ、それアウト。間違い」
「へ?」
そう、皆初めてのときはそこで間違う。
「オジサンじゃない。あれ、オバサンだから」
「はー!?」
「本人は『マニッシュスタイルだべ』って言い張ってるけど、メンズ風ファッション通り越してオッサン演歌歌手になっちまったやつ」
マニッシュはフランス語マスキュリンの英訳で、〝男性的な〟という意味のファッションスタイルのことだ。
……なんか違うよなあって、お社長と会うたびに思う。
「あ、メッセージ打っておこ。『みどり社長、ごちそうさまでした! 八十神の接待受けるならその後どうなったか教えてくださいね!』と」
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