異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
62 / 216
第一章 異世界転移、村ごと!

俺、子供二人とおいちいドリンク

しおりを挟む
 壁時計を見るとまだ午前十時過ぎ。

「二人とも、少し休憩しないか。村の湧き水を採ってきたんだ、飲み物を用意するよ」

 台所のばあちゃんに声をかけると、昼飯の準備中だったので要らないという。俺は三人分のグラスと、ボトリングしてきた湧水は飲む分を水差しに移し替え、あと冷蔵庫からとあるボトルを取り出しお盆に乗せて二人のいる居間に戻った。

「ユウキさん。それは?」

 ユキりんが警戒している。思うんだが……ユキりんは元家猫の保護猫みあるな。ピナレラちゃんとばあちゃんにはとっくに態度を軟化させてるのに俺にだけシャーッと毛を逆立ててる感が半端ない。なぜ俺だけ。
 しかも絶対俺を「ユキ兄ちゃん」とは呼んでくれない。一回頼んでみたらすごい嫌そうな顔で断られてしまった。美少年が俺にだけ塩対応すぎる。
 やはり最初に美少女に間違えたのがあかんかったか。すまぬ。

「日本の有名な健康飲料だ。水で薄めて飲む」

 白地に青い水玉模様の乳酸菌飲料のボトルだ。濃縮タイプなので水や炭酸水で薄めて飲む。
 適当に白い原液をグラスに注ぎ、湧き水を注いで出来上がり。
 ユキりんがやっぱり警戒していたので、まず俺が最初にグラスから一口飲んだ。甘さと酸味の絶妙なバランス。日本が誇る乳酸菌飲料だ、間違いない。

「うん、美味い」
「いただきましゅ」

 好奇心旺盛な四歳児ピナレラちゃんも続いた。ぐびっと。するとただでさえ元気いっぱいのピナレラちゃんの柘榴色のお目々が輝いた。

「お、おいちい~!」
「ささ、ユキりんも」
「……いただきます」

 だから毒なんて入れでねって!
 恐る恐るグラスから飲んだユキりんのアメジストの目がカッと見開かれた。よし!

「おにいちゃ。これしゅごくおいちい」
「そうか。まだまだたくさんあるから、どんどん飲んでくれ」

『まだまだたくさんある』
 まだ異世界転移して間もなかったが、俺はこの村に来てもう何度も口にしている。多分まだしばらくは言い続けるだろう。

「あとで男爵のところや村の人たちにもお裾分けに行かなきゃ」
「こんなに美味しい飲み物、自分たちだけでこっそり飲めばよかったんじゃないですか?」
「ユキりん。それは素人の考えだ。……田舎を舐めるな」

 そこから俺は苦々しく解説した。
 いくら過疎った僻村でも、田舎特有の付き合いがあるものだ。たとえばあちゃんが既に年金暮らしで、じいちゃんが生きてた頃ほど付き合いがなくても、盆暮れのお中元やお歳暮は欠かせないものだ。

 そして俺たちには、もなか村だけでなく隣のもなか町にも親戚や友人知人がいた。冠婚葬祭の引き出物や香典返しでひたすら積み重なる緑茶。焼き海苔。干し椎茸や昆布などの乾物。
 自分ちだけじゃ消費しきれないものは、お裾分けすることになる。自分たちからも、相手からも。その繰り返し。
 ばあちゃんちの倉庫や家の押し入れの中には、そういったものが大量に押し込まれている。まずはこっちを消費しないとなあ。
 こういう事情だから、ばあちゃんは味噌汁や煮物にも市販の顆粒だしは滅多に使わない。便利なのはわかってるが使ってしまうと出汁用の乾物が減らないからだ。

「この乳酸菌飲料の原液も、五本入りが毎年何箱も」
「え」
「缶入りのジュースなんかも同じく」

 俺は居間の戸棚を開いた。ほらな、まだ何箱も何箱もぎっしり詰まってる。俺がまだ東京にいたときは、ばあちゃんが送ってくれてたっけ。

「おにいちゃ、もういっぱい! のみたい!」
「ははは。ユキりんは?」
「……お願いします」

 そっと空になったグラスを差し出してきたユキりん。まだまだデレには程遠いが少しずつ距離が近づいているのを感じる。

 ピナレラちゃんみたいにその柔らかなショコラブラウンの髪を撫で撫でさせてくれるまで、俺は頑張るっぺ!


しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...