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道中は危険に溢れている!

道中は危険に溢れている!③

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 誰かの鼻歌と煙臭さが気になり、目を開ける。部屋の中は朝の光に満ち、夜中の怪しい雰囲気が嘘のようだ。
 毛布の中から顔を出して周囲を見回すと、向かい側のソファに巨体な人物が座っていた。
 葉巻をくわえながら、ジッとこちらを見ているのは、ポピーだ。慌てて身を起こす。

「わわ!? ポピー様!」

「起きたか」

「すいません! 息子さんを閉じ込めて、逃げてしまって……」

 言葉が足りなすぎて色々勘違いされてしまいそうだが、彼女は「クックック……」と笑っただけだった。

「元々はアレがお前を監禁していたと聞く。アヤツがやっていた事がその身に跳ね返っただけのことだ。気にするな」

「……はい」

 元来ポピーとジョシュアは上司と部下といった感じの親子なので、何が起こっても適当な感情で済ますのかもしれない。
 それにしても、彼女がここに居るのは何故なのか。
 どう問おうか迷っているうちに、ポピーの方から話してくれた。

「レイチェルに、お前を帝国に連れて行くと知らされてな。見送りに来たのだ。これを持って行け」

 差し出されたのは、真っ白な封筒だ。ステラはそれを受け取り、首を傾げる。
 何が入っているのだろうか。

「ミクトラン帝国のリスバイ公爵に紹介状を書いた。皇族に会いたいのならば、まずはそのカントリーハウスに行き、便宜を図ってもらえ」

「有難うございます! 帝国に知人が居ないので、助かります! でも、いいんですか?」

「ああ。自由に生きよ。お前が調香したフレグランスを初めて嗅いだ時、自由への渇望を感じ取れた。見聞を広め、可能ならまた戻って来い」

「ポピー様……。何とお礼を言っていいか……」

「それから、向こうに住む事になったら、ウチのバカ息子は忘れてくれていい。手に入り辛いモノを欲しがるのは、昔からの悪癖だ」

「えぇと……。そうですよね。彼にはもっとお似合いの女性が居るのかなって、思っています」

 思わず苦笑してしまった。
 ポピーはたぶん、ジョシュアに心が捕われてしまわないように、わざと愛想がつきそうな事を言っている。
 それらは全て、ステラを想っての言葉なのだ。
 フラーゼ家の人達と家族になれたらと思った時もあったけど、ステラにはその資格が無いと思わずにいられない。
 大人しく守られている事すら出来ないなら、きっと誰も幸せになんか出来ない。

「でも、お礼を言っていたと伝えてほしいです。ずっと憧れてた言葉を貰っちゃいましたので」

「……伝えておこう」

 バンッと勢い良くドアが開き、レイチェルが入って来た。
 その手に持つトレーには、野菜や肉、パンが大盛りの皿がたくさん乗っている。

「朝食作ったから食べよー! ポピー様はブランデーを飲んで行ってくださいね」

 スクランブルエッグの香ばしい香りが漂い、少しだけ凹んだ気持ちが浮上した。
 
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