パステル

ちょこ

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第1章:始まり

7話

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「皆んな、心配させてごめん」

陽葵
「氷鷹君、良かった…(泣」

知沙喜
「陽葵、良かったね」

陽葵
「うん…!」

彼女の可愛らしい顔から涙を流させてしまった。
今後はこんな事にならないように気を付けようと思う。


結衣
「未来、話があるの」

未来
「話って?」

結衣
「私、パステルなの」

未来
「え?」

結衣がパステルなんて知らなかった。
分からなかった。
知りたくも無かったのかも。

未来
「本当なの?」

結衣
「うん」

未来
「・・・」

結衣
「ごめんね」

未来
「他の人には?」

結衣
「言ってないよ」

結衣
「でも、音鉄先生には言ったよ」

結衣が真っ直ぐの瞳で私を見てくる。
私は、どうしたら良いのか分からない。
私の家は他の家と同様に昔からパステル退治を専門にしていた家系だ。
そんな家系出身の私がパステルの結衣と仲良くなってるのがバレると結衣が危険な目に合うと思う。

涼真
「なぁ、虹崎」

綾香
「何?涼真」

涼真
「パステルって人とかになったりすると思う?」

綾香
「うーん。どうだろう…?まぁ、そういうのは私のお父さんの研究で分かると思う」

涼真
「そうか。それは、良かった」

綾香
「どうして急にこんな事を聞き始めたの?」

涼真
「桜宮優って同級生が」

綾香
「そういう話はしない方が良いと思うよ」

涼真
「そ、そうか。ごめん」

綾香
「大丈夫だよ」

ガラガラと教室の扉を開ける。
色さんと目が合った。
色さんは少し心配そうにこんな事を
聞いて来た。

南乃花
「水野君、大丈夫?」

涼真
「だ、大丈夫だよ」

南乃花
「そう?」

水野君の顔が少し暗かったような気がしたけど、気のせいだったみたい。
でも、あまり元気なようには見えなかったような気がする。

音鉄先生
「よーし、じゃあ…今日から体術と能力エネルギーの使い方を教えてくれる
田村正鶴(たむらまさづる)さんと
富岡優子(とみおかゆうこ)さんだ」

正鶴
「田村正鶴だ。宜しく頼む。びしばし
しごいていくからな」

優子
「私は富岡優子です。宜しくお願いします。私は女子を担当します」

田村さんは如何にも歴戦の猛者という風格があるおじさんで富岡さんは優しそうで穏やかそうな綺麗な女の人だ。

正鶴
「じゃあ、まずは1人ずつ名前を言っていけ。言っとくが、俺は手加減は一切しない主義の人間だからな」

正鶴
「最初はお前さんだ」

明紀
「俺ですか?」

正鶴
「あぁ」

この子供は、恐らく二重スパイと言われる子供だろう。
俺は子供を処刑するのはナシだと個人的に思っている。
だって、まだ高校生なのだから処刑する必要は無いだろう。

正鶴
「お前さんの名前は?」

明紀
「雷明紀です」

正鶴
「そうか。能力エネルギーは雷だな。
雷は一度雷を落とす必要があるな」

明紀
「え?」

ゴロゴロと雷が雷君に直接落ちて来た。
咄嗟に雷が雷君に落ちて来たから皆んなも動けなかったし、無論、俺も動けなかった。

明紀
「・・・」

林太郎
「雷君…大丈夫?」

僕は雷君の事が心配になって雷君に聞いてみた。
雷君は何も言わず黙ったままだ。
雷君の肩に触れようとすると田村さんに止められた。

正鶴
「今は触ってはいけないぞ」

林太郎
「え?」

正鶴
「雷君は雷を纏っているからな。
他の能力者が触っては能力の放出の妨げになってしまうから。触ってはいけないんだ」

林太郎
「そうなんですか。分かりました。
雷君に触れないようにします」

他の能力者が触れると能力の放出の妨げになるというのは初めて知った。
こういう事もこれから勉強していくのだろう。

正鶴
「分かったのなら宜しい」

正鶴
「次はお前さんだな」

林太郎
「僕ですか?」

正鶴
「あぁ」

林太郎
「糸田林太郎って言います。宜しくお願いします」

正鶴
「あぁ、宜しく」

正鶴
「この糸の巻という特別な道具を使う」

林太郎
「これから、糸を出すんですか?」

正鶴
「そうだ」

この糸の巻という、よく分からない物から糸を出すのはチャンチャラおかしいなと思ってしまう。
これを使わなくても自分の指から糸を出す事が出来るというのは自分がよく知っている。

正鶴
「糸田君、最初はコレを使わないと能力エネルギーのコントロールが上手く出来ないんだ」

林太郎
「そ、そうなんですか」

正鶴
「大丈夫だぞ。お前さんはこの中では
いち早く能力エネルギーのコントロールが上手くなる子供だからな」

林太郎
「わ、分かりました。すみません。
貴方の教えて下さる通りに従います」

正鶴
「分かったのなら良いんだ」

そう言って目を細めて僕に向かって笑いかけた。
村田さんの優しい笑顔が素敵だと思った。
僕のお爺ちゃんとは大違いだ。

正鶴
「次は目付きが悪そうなお前さんだな」

颯太
「・・・風早颯太だ」

正鶴
「颯太か…」

颯太
「何だよ。何か、文句でもあんのか?」

正鶴
「良い名前だと思う」

颯太
「・・・」

正鶴
「まぁ、笑顔は大事だな。多分、お前さんは楽しかったら笑う事が出来るタイプなのだろう」

颯太
「そうかよ…」

正鶴
「じゃあ、息を吹きなさい。
次は息を吸ったり吐いたりを繰り返しなさい。大丈夫だ。お前さんは大風(だいふう)を引き起こせるまで才能が伸びる」

颯太
「本当かよ…」

正鶴
「本当だ」

そう言って水野の方に向かった。
息を吸う。息を吐く。それを繰り返す。
そして何回も繰り返す内に扇風機の弱くらいの風を吹く事が出来るようになった。
田村さんの言った通りに上手く出来て
妙にむず痒く感じた。

正鶴
「次はお前さんだ」

涼真
「あ、はい」

正鶴
「このペットボトルを使いなさい」

ポイっと俺に向かって田村さんが俺にペットボトルを投げて来た。
ペットボトルを落とさないように何とかキャッチする事が出来た。

正鶴
「このペットボトルに水を溜めなさい」

涼真
「それだけですか?」

正鶴
「あぁ、それだけだ」

涼真
「・・・」

正鶴
「聞き忘れておったわい」

正鶴
「お前さんの名前は?」

涼真
「水野涼真」

正鶴
「そうか」

正鶴
「じゃあな」

トコトコトコと不知火君の方に歩いて行った。
俺の修行は本当にペットボトルに水を溜めるだけらしい。
何という腑抜けた修行なのだろうと思った。
とりあえず、水をペットボトルの中に溜めるようにイメージしてみる事にする。

正鶴
「次はお前さんだな。お前は火だな」

剛志
「はい。俺の能力は火です」

正鶴
「やっぱりな。火という能力は昔から
あるからな。火の能力は修行が大変だからしっかり指導するぞ」

剛志
「ありがとうございます」

正鶴
「目を閉じて、火を自分の体から出すイメージをする。そして、掌を広げる。
そうすると、火が簡単に出せるぞ」

剛志
「やってみます」

田村さんに言われた通りに目を閉じる。
火を自分の体から出すイメージをする。
そして、掌を広げる。
掌が仄かに熱を帯びたような気がした。
目を開けると自分の掌で火がユラユラと揺れていた。

剛志
「火が出ました」

正鶴
「よし、それで良いぞ。その火は出したまま…待っておけ」

剛志
「は、はい」

火が自分の掌でユラユラ揺れているのが自分自身で凄いと思った。
気分が高揚しているのが分かった。
これが自分の能力の出し方というのが分かって嬉しかった。

村田
「最後はお前さんだな」


「氷鷹湊って言います。宜しくお願いします」

冷気が彼自身の体から溢れている。
何という肌寒い冷気だ。
これが氷鷹湊という子供の氷の能力。
こんな子供の修行相手は初めてだ。


「あの」

村田
「あぁ、すまんな」


「俺の修行は」

村田
「そのまま氷を出せるだろう。
お前さんは天才タイプだ。全く、氷の能力者は天賦の才ばかりだ」


「え?このままですか?」

村田
「あぁ、そのままだな。というか、余計な事を言ったらお前さんの意識が他の所に逸れるだろ?」


「はい」

村田
「それなら、良い。集中しておけ」

そう言って村田さんは他の人の所に言ってしまった。
俺には修行をしないと言うのか。
よく分からない人だなと思った。

音鉄先生
「湊」


「何ですか?」

ギュッ

音鉄先生
「大丈夫か?」


「あ、あの…冷気が…」

音鉄先生
「そりゃあ…お前のその冷気じゃ、幾ら
村田さんでも修行は行えないだろう」

音鉄先生の優しく強い手に包まれて腕で囲まれているのが一番安心出来る。
何処からかの視線を感じた。
視線の方向を見ると花園さんが俺の事を見ていた。
花園さんと目が合ってしまった。
花園さんは頬を赤らめて俺から目線を逸らした。

音鉄先生
「湊。もう、大丈夫か?」


「はい。ありがとうございます」

涼真
「なぁ、氷鷹君」


「何?」

水野君が話しかけて来た。
水野君の手には空のペットボトルが握られていた。
どうして空のペットボトルを握っているのか聞いてみる事にした。


「ねぇ、水野君」

涼真
「何?」


「そのペットボトルどうしたの?」

涼真
「氷鷹君、よくぞ聞いてくれた。
俺さ、村田さんにペットボトルに水を溜めろって言われて」


「へー」

涼真
「え?興味ない?」


「いや、どうして…空のペットボトルを持っているのか気になってただけだから」

涼真
「そうなんだ」


「うん」

涼真
「どうしてさっき音鉄先生に抱き締められてたんだ?」


「俺、直ぐに冷気が出るから…その、音の分解が使えるんだ。それで、うん…」

涼真
「あー、理解したよ」


「良かった」

整った顔をしている氷鷹君。
安心した表情も何か良いなって思ってしまった。
いや、相手は男だ。
でも、整った顔だと性別って関係ないよなって思った。

ナレーション)時間は遡り、富岡優子による女子生徒達への修行が行われていた。

富岡
「じゃあ、はーい!これから、始めますね」

富岡
「まずは、貴女から自己紹介と能力エネルギーの出し方を教えてね」

結衣
「私は草並結衣って言います。
宜しくお願いします。私の能力は…草が浮かび上がって…えーっと…その…」

富岡
「そういう感じね。大体分かったわ。
貴女の能力は草。草はね、何処からか吹いて来るのよね」

結衣
「は、はい。どうして、分かったんですか?」

富岡
「緑の葉の包みで包まれているからね。
能力が葉の能力者はいつも葉っぱで包まれている状態になってるから」

結衣
「・・・」

緑の葉の包みで包まれている。
その言葉が私には理解できなかった。
でも、何となくの感覚で分かったような気がする。

未来
「私は鈴代未来って言います。
宜しくお願いします。私の能力は鈴です。この鈴を使って鈴の能力を使う事が出来ます」

富岡
「おー、なるほどぉ?ふむふむ、うん。
分からないや!」

未来
「え?」

富岡
「いやぁ…ね。鈴を使う能力者には会った事ないのよぉ~。ごめんなさいね!
でもね。これだけは言える。鈴を使う時は真っ直ぐな心を持って鈴を振いなさい。大丈夫。貴女は強い子だから」

未来
「そ、そうなんですか…分かりました」

真っ直ぐな心を持って鈴を振る。
そうか、そういう事か。
そう、私は強い子。
強い子というのは精神的な意味で強いっていう意味なんだ。

綾香
「私は虹崎綾香って言います。
宜しくお願いします。私の能力は虹です。私と私自身から作り出せる虹は一心同体なんです。そう、虹の神様…七色様に夢の中で言われました」

富岡
「・・・」

富岡さんが黙る。
もしかして、言ってはいけない事でも言ってしまったのかもと不安になる。
暫くして富岡さんが口を開ける。

富岡
「七色様の話は村田さんには禁止ね。
七色様は…その…うーん…いや、何も言わないわ。言ったら…貴女が傷付いてしまう」

綾香
「え?あ、はい…分かりました」

どうして七色様の話は村田さんには禁止なのだろう。
後から、もう1回富岡さんに聞いてみようと思う。
でも、聞いたら怒られるのかな。

南乃花
「私は色南乃花って言います!
宜しくお願いします!私の能力は色です!えーっと…この特別な筆で色の能力を使います!!」

富岡
「うん。有能。大丈夫だね。貴女は卒なく熟せるタイプだと思うから。ただ…
集中して、色の量を調整してみてね。
そこを気を付ければどうにかなるから」

私は卒なく熟せるタイプらしい。
自分では分かっていなかったけど、
集中して色の量を調整してそこを気を付ければ何とかなるらしい。
うん。分からないや。

知沙喜
「私は白雪知沙喜って言います。
宜しくお願いします。雪は自らの体温調節で出す事が可能です。それと、3回だけ広範囲で雪の小さな剣を生み出す事が出来ます」

富岡
「本当に貴女は凄いのね。集中して雪を立体的に作り出せたら…大体、大丈夫よ」

知沙喜
「アドバイスを下さりありがとうございます」

頭を下げる。
誰かに頭を撫でられる。
顔を少し上げると富岡さんが優しそうな笑顔を浮かべていた。

富岡
「白雪さんは私のお友達に似てる」

知沙喜
「え?あ、そうなんですか」

富岡
「ごめんなさい。私のお友達に似てるって理由で貴女の頭を撫でてしまって」

知沙喜
「大丈夫です」

富岡
「そう…それなら良かったわ」

富岡さんの顔は微笑んでいるけど、少し寂しそうな表情を浮かべているのが印象に残った。
富岡さんのお友達はどうなったのだろう。
でも、富岡さんの寂しそうな表情を見たら聞けそうにない。


陽葵
「私は花園陽葵って言います。
宜しくお願いします。私の能力は花です。私が歩いたり動いたりするだけで
花が咲きます。そして、私の足元では花が咲き乱れます」

富岡
「凄いわねぇ~」

陽葵
「御華様です」

富岡
「うーん…?」

陽葵
「将来的にこの高校で結婚相手が見つかったら良いなって思っています」

富岡
「あ…そうなのねぇ…?」

陽葵
「ごめんなさい」

富岡
「大丈夫よ」

陽葵
「御華様が居ると、その…何だか安心出来るんです。理由は分かりませんが…」

富岡
「その御華様と花園さんの相性は良い感じなのね。そういうのが憑いていると大体相性が悪いのよ。あと、自分自身を苦しめるし、能力者自身の能力エネルギーの放出が失敗するの。だから、貴女は恵まれてるの」

陽葵
「そうなんですか」

私が御華様と相性が良くて本当に良かったと心から思った。
というか、能力者自身の能力エネルギーの放出が失敗するのは怖いなって思った。

富岡
「うーん、じゃあ」

音鉄先生
「富岡さん、どうですか?生徒達は」

富岡
「えー?音鉄先生ですか。そうですね…
女子の皆んなは優秀なタイプが多いですよぉ?でも、精神的にはどうなのだろうって子も居て…その、この話はこの訓練が終わってからでも良いですよね?」

音鉄先生
「あー、そうですね」

女子生徒達との能力エネルギーの使い方が違うから分からない。
でも、富岡さんが女子生徒達の訓練の指導をしてくれて非常に助かった。

                続く

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