つれづれ司書ばなし

つづれ しういち

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76 選書 その2

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 こんにちは。
 今回もとある本の紹介を……と思っていたのですが、某SNSでちょっと気になることを言っている人がいたので、急遽変更して、今回はそれに関するお話を。

 簡単にご紹介すると、そのかた(仮にAさんとしましょう)は出版社の営業マンだそうで。Aさんは営業のために各地の図書館を回るお仕事のようなんですが、その際に

「生き物系の図鑑や写真集を司書のかたにお見せすると、『やだぁ、私こういうの苦手、ダメなの~』と言われるときがあります。そうして選書対象から外れることがしばしば」(コメントの内容は意訳です)とのこと。

 うーん。
 まあ恐らく、なんですけども。
 その「司書さん」とやらが本当に司書資格を持っているなら、こういう対応はよろしくない、ということぐらいは理解しているはずですよね。本当は。
 こちらは公共図書館の司書さんなんでしょうか。SNS上のコメントだけではそのあたりはよくわかりませんでしたが……。
 公共さんだろうと学校だろうと、とにかくあまりよいことでないのは確か。

 そうでなくても、放っておくとどうしても9類(文学)ばかりになりがちなんですし。
 小学校なら、特に図鑑なんて人気のあるものでしょうから、虫やなにかの図鑑などは積極的に入れていくものじゃないのでしょうか。いや、図鑑は大体が高価ですし大きさもあるので、すでに同じような本がある場合には入れない、という選択肢もあるでしょうけども。

 少なくとも学校図書館では、「9類多すぎ問題」に頭を悩ませている司書さんは多いのではないかなと。というか、そもそも児童生徒たちからくるリクエストだって基本的に9類ばかりですし。毎年の課題図書は9類を複数冊入れる学校がほとんどでしょうしね。
 だからこそ、自分が選書に関わるときには意識的に9類は外して、別のジャンルのものを選ぶのが基本になっています。
 きっとほかの学校の司書さんたちも同じではないかな~と。

 公益財団法人全国学校図書館協議会が2000年に出した「学校図書館メディア基準」によれば、蔵書全体に対する9類の比率は小学校で25%、中学校では23%となっています。
 ……笑っちゃいますよね?
 かく言う私も毎年の蔵書点検のときには苦笑しまくりです。頭痛がしますわ(苦笑)。
 こんな数字を達成している学校図書館、いったいどれぐらいあるんだろうかと。
 でもまあ、頑張っていますよ?
 なんとか4割ぐらいにはなるように、涙ぐましい努力を……!
 毎年、古くなって誰も手にとらなくなった9類の本はなるべく除籍して、新たな本としては9類はなるべく入れない。それでもなかなか、9類の比率は下がっていかないものですよね。
 9類は物語ばかりではなく、古典や詩歌、俳句なども9類ですし。
 
 選書の話から少しそれてしまいましたが、いろいろなジャンルから本を選んで蔵書を充実させていくことは司書の使命といってもいいでしょう。
 単なる自分の好みや「こういう本を見たくない」といったような個人の感覚で「こんな本はいれたくない」といったような判断は、普通に勉強して司書資格をとった司書ならしないと思われます。
 
 現在の日本では、国立国会図書館など特別なところ以外で、ジャンルに特化した専門司書を置いてはいません。
 人はだれも万能ではないので、どうしても得手不得手というものがあるもの。得意な分野がある一方で、そうでない分野がどうしてもあるものです。
 そのため現場の司書さんたちは、それぞれが忙しい中時間をみつけて勉強して、苦手な分野にもヌケがないように日々努力されていることでしょう。

 当該のSNSコメントに出てきたような司書がいることは残念でなりませんが、少しでも見識を改めていただけたらいいなあ……と、そんなことを思いました。
 ではでは、今回はこのあたりで。
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