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記憶 ー最期と誇りー
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翌日、昼過ぎ。
御子が階段を下って部屋にやってきた。
『お三方。時間です』
いよいよか。
あたしたち3人は顔を見合わせ、頷く。
代表してリリーが口を開く。
『はい。決戦の準備に入ります。
まずはマシロ様の冷凍、ですね』
『お願い、します。』
マシロは緊張した様子で答え、ベッドに横たわる。
リリーがマシロに向けて両手をかざす。
『ね、あのさ』
あたしは自分でも気が付かないうちに口を開いていた。
別れを少しでも先延ばしにしたくなったのかもしれない。
恰好悪いわね、あたし。でも変な意地を張って後悔したくない。
『リリー、中断させちゃってごめんなさい。ちょっとだけ待って』
『はい。問題ありません』
普段は感情表現の薄いリリーだが、
子に向けるような暖かい目であたしを見る。
首をかしげているマシロに向き合って、言う。
『マシロの歌、聞きたい。初めて会った時の』
『ふふ。アリアは甘えんぼさんですね。
お別れが寂しくなっちゃいましたか?』
『それは、まあ。そうよ。で、でも違うからね?
あたしがこんな風になるのはあなたたち二人に対してだけなんだから』
何を言っているのか自分でもわからなくなってきた。
『あら、それは光栄です』
リリーがこれまた珍しく意地の悪い笑みを浮かべて言う。
むぅ。
くすくすと笑いながらマシロが身を起こし、目蓋を閉じる。
すーっ。
~~~♪
目を閉じて堪能している―――
ふりをしてあたしは涙を隠した。
そのあとは特に言葉を交わさずにマシロの冷凍は終わった。
冷凍を終えてすぐ。
リリーがあたしに向き合って言った。
『アリア様。実は…』
と言葉を止める。
リリーはちゃんと考えて話す子。
だからあたしは口を挟まない。
話しやすいように軽く微笑みながら次の言葉を待つ。
『この古城を離れます。
世界がこうなってしまった原因を探して滅びを止めます。
可能性が極めて低いのは承知の上です』
『なら、あたしも―――』
リリーが首を横に振る。
『状況が変わってマシロ達を早めに解凍する場合も考えられますし、
【巫女】である我々2人ともがここを離れるのは戦力が心配です。
グレイ様もここを離れるそうですし。
ですから、その…』
リリーが視線を斜め下にさまよわせる。
この表情、知ってる。
彼女が口を開く前にあえて口をはさむ。
『謝らないで。要は分担よね!
あたしがここを守って、破滅の原因をリリーが解決してくれる。
いいじゃない!
あたしたちは離れた場所で一緒に戦ってるの。
だから、あたしは頑張れるわ』
ここの防衛をあたしに押し付けてしまうのが申し訳ない、とこの子なら考える。
だから少し話を先回りさせてもらった。
緊張と罪悪感で固くなっていたリリーの顔が緩む。
『…くすっ。ありがとうございます。
本当に、あなたと友達になれてよかった』
今度は決意で表情を引き締め、リリーは言葉を続ける。
『ここの戦闘が始まると出発も難しいので、そろそろ行きます。
またお会いしましょう。アリア様。グレイ様』
リリーは薄く微笑み、身を翻す。
青髪がふわりと広がり、またすぐに戻る。
彼女は振り返ることもなく部屋を去った。
彼女らしい、淡々とした別れ。
翌日の再会を信じ切った学園の放課後のように。
ふと心細くなる。
ついさっきまで一緒にいた2人はもうここにはいない。
また会えるかもわからない。
心が不安で揺れ、不快感が胸の中を転がる。
…ううん。
あたしはアリア。
誇り高きレオンハート家の人間で、マシロとリリーの大事な友人。
深呼吸し、心を静める。
自分で言ったじゃないの。
離れた場所で、違う時間で一緒に戦うんだ。
ひとりじゃない。
よし。
今度はあたしの番。
眠っているようにしか見えないマシロの頬を軽く撫でてから、術式の準備を始めた。
御子に教えられた手順通り、まずは燭台に蝋燭を設置。
次に炎の力を部屋の各所に込めて、と。
…
終わった、かしら?
御子に顔を向ける。
『お疲れ様です。アリア様。
マシロ様が無事に解凍される未来が見えました』
予知はそういう風にも使えるのね。便利そう。
『これでこの役目は終わり、でいいのよね?』
『いいえ。もう一人、護衛の方にもお願いします』
忘れていた。あの死神ちゃんか。
『そうだったわね。行きましょう。』
階段を上り、黒い女性の部屋へ。
同じような流れだったこともあり、マシロの時よりも早く作業が終わる。
『どう?』
御子に振り返って訊く。
『はい。問題ありません。お疲れさまでした』
さて、あとは。
『決戦か』
小さくつぶやく。
御子に、グレイに振り向いて問う。
『グレイさん。あなたはどうするの?
やることがあるって言ってたけど』
『はい。僕もそろそろ出発します』
平坦な声色での返答。
『そっか。理由を聞いても?』
答えてくれなさそうだけど一応訊いてみる。
『リリー様の逆、とでも言っておきましょうか。
どちらが本当に世界のためなのか、まだ迷っていますが』
グレイは遠い目をして言う。
何を言っているかよくわからない、が。
『…リリーに何かしたら命はないと思いなさい』
これだけは釘を刺しておく。
『わかりました。約束しましょう。
間接的・直接的を問わず、リリー様に害をなすことはしません』
あっさりと約束され、拍子抜けする。
『そう。じゃあ、あなたも頑張りなさい』
『はい。アリア様もご武運を』
慇懃に礼をしたのち、グレイは去っていった。
掴みどころのない男だったけど、悪人には見えなかったわね。
さて、あたしも行くとしましょうか。
数歩進み、ふと思い立って振り返る。
黒い女性に向かって言う。
『あんたの出番がないように全力は尽くすけど…
もしもの時はあの子をよろしくね、死神さん』
当然返事はない。
でも、なぜか彼女に届いた気がした。
居住区の一室で仮眠をとったのち、地上に出る。
特に騒がしいわけでもないが、
小さな音の数々は地下がどれほど無音だったか教えてくれる。
近くで槍の手入れをしていた兵士に声をかける。
『お疲れ様。この様子だと敵影はまだ確認できていないのよね?』
『はい。そろそろ偵察隊が戻るので彼らの報告を待っている所で――』
『敵影を確認!総員、戦闘準備!』
『…始まるようです。ご武運を』
『ええ。あなたもね』
数時間後、古城中庭。
戦線はいとも簡単に突破され、ここまで撤退。
アンデッドの海に味方は飲まれて消えた。
『ぐっ、は』
兵士が倒れる。これで味方は全滅。
敵軍の数は予想以上だった。
彼を沈めたアンデッドの頭に火球をぶつける。
火球がアンデッドの頭を吹き飛ばし、後方のアンデッドもろとも爆発する。
あたしも無傷ではない。
身に着けていた軽鎧は原形をとどめていないし、左腕の出血が止まらない。
…あたしの命はここまで、かな。
みんなにまた会いたかったけど、仕方ないか。
軽鎧の残骸を脱ぎ捨てる。
『不死鳥の加護を。尽きぬ闘志と誇りを』
詠唱し、残った肌着に炎の力を付与。
肌着は真っ赤なドレスに姿を変える。
…この術式、上手くいくといいけど。
さらに目を閉じ、集中。力をためる。
アンデッドの爪が皮膚を裂く。無視。
目を開け、力を放つ。
視界が真っ赤に染まる。
あたしを中心とした爆発が周囲の敵を吹き飛ばす。
だが、その一撃すらも大量のアンデッドの一部を吹き飛ばしたにすぎない。
爆発による空白地帯はすぐに消えていく。
あたしは戦う。
最後まで。いや、最後が来ようとも。
信じてくれた友を守るために。
―――アリア・レオンハートの名にかけて。
左手に火球を発生させつつ駆ける。
白い光が消えていく。
周囲にアンデッドの姿はない。
「終わった、のかな」
今までになくはっきりとした記憶。
ふと左の手の平を見ると小さな炎が揺らめいている。
なんとなしに手を振った。
火球が発生し、前方へ。
彼女―――アリアさんから吸収した力だろう。
とても有用だが、喜ぶ気分にはなれなかった。
祈りが終わったにも関わらずそのままの体勢を取っているシロナ…彼女のもとへ。
「さっきの。思い出の歌だったんだね」
なんと声をかけていいかわからず、本題からややそれた話をする。
「はい。何の力も込められていない、ただの歌です。
クロハが奇襲をかけようとしていたので相手の注意を引こうと思って」
ただの歌。でも黒獅子の動きは止まった。
あの記憶から察するに、そういうこと。
「そっか。私も好きだよ、その歌。
気が向いたらまた歌ってほしいな」
「ありがとうございます。今度、ちゃんとお聞かせしますね」
沈黙。
こんな時になんと声をかければよいのか。
私にはわからなかった。
言葉をあきらめ、彼女の横に座り込む。
彼女の背をさすりながら、ぼーっと残り火を眺めていた。
…
その状態でしばらくして。
「さて、行きましょうか」
彼女が口を開いた。
「もういいの?」
「はい。お別れはしました」
そう言って、彼女はたたたっ、と数歩分を走る。
「少し待ってて」
彼女に伝え、アリアさんの骨へ跪く。
記憶の中の3人を思う。
とても暖かい、幸せな夢。
「人のことを死神とは随分な言い草じゃない」
彼女たちの打ち解けた会話がうらやましくて、こんな軽口を口にしていた。
言葉のトーンが思うようにいかず、その言葉は軽口よりも重い何かになった。
3人の輪に入ったような気分にはなれなかった。
頭をかすかに振って、気持ちを切り替える。
届かないとわかっていても、伝えたかった。
「ありがとう」
私達を、あの子を守ってくれて。
「任せて」
あなたの分まであの子は守るから。
「安らかに眠れ」
誇り高き巫女、アリア。
立ち上がり、残り火に背を向けて歩き出す。
御子が階段を下って部屋にやってきた。
『お三方。時間です』
いよいよか。
あたしたち3人は顔を見合わせ、頷く。
代表してリリーが口を開く。
『はい。決戦の準備に入ります。
まずはマシロ様の冷凍、ですね』
『お願い、します。』
マシロは緊張した様子で答え、ベッドに横たわる。
リリーがマシロに向けて両手をかざす。
『ね、あのさ』
あたしは自分でも気が付かないうちに口を開いていた。
別れを少しでも先延ばしにしたくなったのかもしれない。
恰好悪いわね、あたし。でも変な意地を張って後悔したくない。
『リリー、中断させちゃってごめんなさい。ちょっとだけ待って』
『はい。問題ありません』
普段は感情表現の薄いリリーだが、
子に向けるような暖かい目であたしを見る。
首をかしげているマシロに向き合って、言う。
『マシロの歌、聞きたい。初めて会った時の』
『ふふ。アリアは甘えんぼさんですね。
お別れが寂しくなっちゃいましたか?』
『それは、まあ。そうよ。で、でも違うからね?
あたしがこんな風になるのはあなたたち二人に対してだけなんだから』
何を言っているのか自分でもわからなくなってきた。
『あら、それは光栄です』
リリーがこれまた珍しく意地の悪い笑みを浮かべて言う。
むぅ。
くすくすと笑いながらマシロが身を起こし、目蓋を閉じる。
すーっ。
~~~♪
目を閉じて堪能している―――
ふりをしてあたしは涙を隠した。
そのあとは特に言葉を交わさずにマシロの冷凍は終わった。
冷凍を終えてすぐ。
リリーがあたしに向き合って言った。
『アリア様。実は…』
と言葉を止める。
リリーはちゃんと考えて話す子。
だからあたしは口を挟まない。
話しやすいように軽く微笑みながら次の言葉を待つ。
『この古城を離れます。
世界がこうなってしまった原因を探して滅びを止めます。
可能性が極めて低いのは承知の上です』
『なら、あたしも―――』
リリーが首を横に振る。
『状況が変わってマシロ達を早めに解凍する場合も考えられますし、
【巫女】である我々2人ともがここを離れるのは戦力が心配です。
グレイ様もここを離れるそうですし。
ですから、その…』
リリーが視線を斜め下にさまよわせる。
この表情、知ってる。
彼女が口を開く前にあえて口をはさむ。
『謝らないで。要は分担よね!
あたしがここを守って、破滅の原因をリリーが解決してくれる。
いいじゃない!
あたしたちは離れた場所で一緒に戦ってるの。
だから、あたしは頑張れるわ』
ここの防衛をあたしに押し付けてしまうのが申し訳ない、とこの子なら考える。
だから少し話を先回りさせてもらった。
緊張と罪悪感で固くなっていたリリーの顔が緩む。
『…くすっ。ありがとうございます。
本当に、あなたと友達になれてよかった』
今度は決意で表情を引き締め、リリーは言葉を続ける。
『ここの戦闘が始まると出発も難しいので、そろそろ行きます。
またお会いしましょう。アリア様。グレイ様』
リリーは薄く微笑み、身を翻す。
青髪がふわりと広がり、またすぐに戻る。
彼女は振り返ることもなく部屋を去った。
彼女らしい、淡々とした別れ。
翌日の再会を信じ切った学園の放課後のように。
ふと心細くなる。
ついさっきまで一緒にいた2人はもうここにはいない。
また会えるかもわからない。
心が不安で揺れ、不快感が胸の中を転がる。
…ううん。
あたしはアリア。
誇り高きレオンハート家の人間で、マシロとリリーの大事な友人。
深呼吸し、心を静める。
自分で言ったじゃないの。
離れた場所で、違う時間で一緒に戦うんだ。
ひとりじゃない。
よし。
今度はあたしの番。
眠っているようにしか見えないマシロの頬を軽く撫でてから、術式の準備を始めた。
御子に教えられた手順通り、まずは燭台に蝋燭を設置。
次に炎の力を部屋の各所に込めて、と。
…
終わった、かしら?
御子に顔を向ける。
『お疲れ様です。アリア様。
マシロ様が無事に解凍される未来が見えました』
予知はそういう風にも使えるのね。便利そう。
『これでこの役目は終わり、でいいのよね?』
『いいえ。もう一人、護衛の方にもお願いします』
忘れていた。あの死神ちゃんか。
『そうだったわね。行きましょう。』
階段を上り、黒い女性の部屋へ。
同じような流れだったこともあり、マシロの時よりも早く作業が終わる。
『どう?』
御子に振り返って訊く。
『はい。問題ありません。お疲れさまでした』
さて、あとは。
『決戦か』
小さくつぶやく。
御子に、グレイに振り向いて問う。
『グレイさん。あなたはどうするの?
やることがあるって言ってたけど』
『はい。僕もそろそろ出発します』
平坦な声色での返答。
『そっか。理由を聞いても?』
答えてくれなさそうだけど一応訊いてみる。
『リリー様の逆、とでも言っておきましょうか。
どちらが本当に世界のためなのか、まだ迷っていますが』
グレイは遠い目をして言う。
何を言っているかよくわからない、が。
『…リリーに何かしたら命はないと思いなさい』
これだけは釘を刺しておく。
『わかりました。約束しましょう。
間接的・直接的を問わず、リリー様に害をなすことはしません』
あっさりと約束され、拍子抜けする。
『そう。じゃあ、あなたも頑張りなさい』
『はい。アリア様もご武運を』
慇懃に礼をしたのち、グレイは去っていった。
掴みどころのない男だったけど、悪人には見えなかったわね。
さて、あたしも行くとしましょうか。
数歩進み、ふと思い立って振り返る。
黒い女性に向かって言う。
『あんたの出番がないように全力は尽くすけど…
もしもの時はあの子をよろしくね、死神さん』
当然返事はない。
でも、なぜか彼女に届いた気がした。
居住区の一室で仮眠をとったのち、地上に出る。
特に騒がしいわけでもないが、
小さな音の数々は地下がどれほど無音だったか教えてくれる。
近くで槍の手入れをしていた兵士に声をかける。
『お疲れ様。この様子だと敵影はまだ確認できていないのよね?』
『はい。そろそろ偵察隊が戻るので彼らの報告を待っている所で――』
『敵影を確認!総員、戦闘準備!』
『…始まるようです。ご武運を』
『ええ。あなたもね』
数時間後、古城中庭。
戦線はいとも簡単に突破され、ここまで撤退。
アンデッドの海に味方は飲まれて消えた。
『ぐっ、は』
兵士が倒れる。これで味方は全滅。
敵軍の数は予想以上だった。
彼を沈めたアンデッドの頭に火球をぶつける。
火球がアンデッドの頭を吹き飛ばし、後方のアンデッドもろとも爆発する。
あたしも無傷ではない。
身に着けていた軽鎧は原形をとどめていないし、左腕の出血が止まらない。
…あたしの命はここまで、かな。
みんなにまた会いたかったけど、仕方ないか。
軽鎧の残骸を脱ぎ捨てる。
『不死鳥の加護を。尽きぬ闘志と誇りを』
詠唱し、残った肌着に炎の力を付与。
肌着は真っ赤なドレスに姿を変える。
…この術式、上手くいくといいけど。
さらに目を閉じ、集中。力をためる。
アンデッドの爪が皮膚を裂く。無視。
目を開け、力を放つ。
視界が真っ赤に染まる。
あたしを中心とした爆発が周囲の敵を吹き飛ばす。
だが、その一撃すらも大量のアンデッドの一部を吹き飛ばしたにすぎない。
爆発による空白地帯はすぐに消えていく。
あたしは戦う。
最後まで。いや、最後が来ようとも。
信じてくれた友を守るために。
―――アリア・レオンハートの名にかけて。
左手に火球を発生させつつ駆ける。
白い光が消えていく。
周囲にアンデッドの姿はない。
「終わった、のかな」
今までになくはっきりとした記憶。
ふと左の手の平を見ると小さな炎が揺らめいている。
なんとなしに手を振った。
火球が発生し、前方へ。
彼女―――アリアさんから吸収した力だろう。
とても有用だが、喜ぶ気分にはなれなかった。
祈りが終わったにも関わらずそのままの体勢を取っているシロナ…彼女のもとへ。
「さっきの。思い出の歌だったんだね」
なんと声をかけていいかわからず、本題からややそれた話をする。
「はい。何の力も込められていない、ただの歌です。
クロハが奇襲をかけようとしていたので相手の注意を引こうと思って」
ただの歌。でも黒獅子の動きは止まった。
あの記憶から察するに、そういうこと。
「そっか。私も好きだよ、その歌。
気が向いたらまた歌ってほしいな」
「ありがとうございます。今度、ちゃんとお聞かせしますね」
沈黙。
こんな時になんと声をかければよいのか。
私にはわからなかった。
言葉をあきらめ、彼女の横に座り込む。
彼女の背をさすりながら、ぼーっと残り火を眺めていた。
…
その状態でしばらくして。
「さて、行きましょうか」
彼女が口を開いた。
「もういいの?」
「はい。お別れはしました」
そう言って、彼女はたたたっ、と数歩分を走る。
「少し待ってて」
彼女に伝え、アリアさんの骨へ跪く。
記憶の中の3人を思う。
とても暖かい、幸せな夢。
「人のことを死神とは随分な言い草じゃない」
彼女たちの打ち解けた会話がうらやましくて、こんな軽口を口にしていた。
言葉のトーンが思うようにいかず、その言葉は軽口よりも重い何かになった。
3人の輪に入ったような気分にはなれなかった。
頭をかすかに振って、気持ちを切り替える。
届かないとわかっていても、伝えたかった。
「ありがとう」
私達を、あの子を守ってくれて。
「任せて」
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