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ドアが閉まると、重苦しい空気がこの病室に広がるような気がした。

「どうした。こっちに来なさい」

えぇ‥。やだなぁ。

何故か睨まれている俺はゆっくりと近づいて行く。
俺の顔をジロリと睨み「何しに来た」と聞いてきた。

「えっと、俺、頼まれて」

「誰に」

「誰にと言われれば‥、綾瀬さんと、日高さんです」

「何を」

「えっと‥おじいさんに会ってほしいと」

「何故」

知るかよ。俺が知りたいくらいだ。

ふん、と鼻を鳴らされ「相変わらずだな」としゃがれた声で言われた。

相変わらず?どう言うことだ。

「軽率で、深く考えず。理由を他人に求める。流石、あの父の子だ」

「待ってください、何の話です」

「何の話?」

ふんっ、と鼻を鳴らし目を一旦逸らす。
大きく咳払いを四度ほどし、ベッドが大きく揺れる。
俺が「大丈夫ですか?」と近づくとそれを手で制した。

「会って、何をしてほしいと?」

「それは、その」

何て切り出したらいいのか分からず、俺は固まる。
いや、余計な一言を言わなくてもいい。このまま何も言わなかったらそれで終わるんだ。

「ある意味、これも罰か‥」

ごほっごほっ、とまた咳払いをした。
罰?さっきから、何を言ってるんだ。

「君は、頼まれた事を叶えないといけない。君の、ためにも」

「あの、すみません。話が見えないんですですけど」

「何を、頼まれたんだ」

怒気を含んだ声で言われる。

だから何で俺がこんなに怒られないと‥段々と腹が立ってきた。

「どうした。君は、何をしにきたんだ。暇つぶしなら、帰れ」

「あなたの秘密を聞きにきたんですよ!」

俺は感情のまま声を大にして言った。

「私の、秘密?」

話す度に咳き込む老人を見て俺はしまった、と後悔をする。

「いや、その‥」

「ハッキリ、いいたまえ」

ここまで来たら誤魔化すことは出来ない。なにより、この老人が納得しないだろう。
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