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第62章:酒呑童子が酔い覚めデス

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 「出ろ。ケルベロス。」

 「「「キャン!!」」」

 我輩の命に従い、ケルベロスが影よりいでる。

 「此奴が我が力の秘密だ。
 なぁ?ケルベロスよ。」

 「「「キャン!!!」」」

 「三つ首の魔犬…!?
 なんと奇怪な…!!」

 「ちいちゃくてかわいいネ!」

 「か…わ…い…い…」

 「…!」

 「ケルベロスちゃんの…?」

 「おお!あの犬かー!」

 皆各々の反応を示している。

 理由はこれで十分だろう。

 従魔師は魔物の加護を受けると高女に教授されたからな。

 今朝方、教師の契約を結んだ際に、それだけは聞いておいたのだ。

 「犬っころぉ…?」

 「あらそうなん?
 ウチ、あの魔獣にビビったん?」

 姉や酒臭女、扉は妙な表情を浮かべていたが、まぁ気にするまい。

 「こんなことよりもダンジョンだろう?兄よ。我輩は合格したと言っていたはずだが?」

 「そうだった!師匠!!
 エウレスは…」

 「まあ、合格だろうなあ。
 いいぜ。持ってけよ!」

 酒臭女は何か札を3つ投げて寄越してきた。

 鉄製の板か…

 特殊な力を放っている。

 「ダンジョンの入り口の門はうちの扉と同じだぜ。
 その板かざしゃあ通してくれらぁ。
 …ただ、忠告だあ。くれぐれも気は抜くなよお?」

 「ふん…魔力が覆う空間なのだろう?何が起きてもおかしくはなかろう。」

 「その通りだぜ婿殿…あそこは異世界だあ…この世の理は通じねえからなあ…」

 「異世界か…」

 我輩は板を兄と姉にそれぞれ投げ渡し、我輩の分を懐にしまう。

 「僕にとってはこの世の全てが異なる物だ…」

 「ああ…?」

 「忠告はしかと聞き受けたぞ酒女。
 安心するが良い。
 我が兄も姉も、僕がきっちり生かしておく…ケルベロス、大。」

 「「「ガルバウギャルルルルルルルルルルルル!!!」」」

 ケルベロスを巨体化させ、兄姉を咥えさせ、我輩は背に跨る。

 「はははっ…!!こいつはすげえやあ…!!魔獣は嫌いなんだが…こいつは神々しい…!!」

 「ではさらばだ。」

 バウッ!!

 ケルベロスは地を蹴り空を蹴り、舞い上がる。

 酒女どもは一瞬で見えなくなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「師よ、謝罪を。我々全員、手も足も出ませんでした。」

 「だろおなあ。酒の入ぇった俺でも相手にならなかったんだらあよ。」

 俺はドアランに出させた酒樽を一気に煽り、酔いを戻す。

 あのガキ…飄々と嘘つき、俺を睨んで
笑いやがった。

 "嘘だと分かっても、貴様には何も出来まい?小娘。"…

 あの野郎…俺を小娘扱いしやがった。

 …俺の酔いが覚めるなんざいつぶりだ。

 酒呑童子のシュルテン様が、聞いて呆れらあ…

 「師よ!師よ!!もうじき日が天上に昇ります!"団長会"の時です!!」

 「…ちっ。あの無意味な会議か…」

 俺は服を着て黒い羽織をかぶる。

 黒の憲兵団長として…

 ダメだあ。あいつが頭から離れねえ。
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