2 / 18
2:窮地の白騎士
しおりを挟む旅に出たミラリアは、野宿を繰り返しつつ、首都ラクティへ向かっていた。
勿論、直行できるわけでもなく、合間にレダの街を挟む予定での行脚である。
街道の宿で食事をとり、しばらく歩いていたのだが、道を外れた草原から、聞きなれた剣戟の音がする。
何事だろうか、ミラリアは荷物を置くと、その剣戟の元に急行した。
☆
そこでは、白い革鎧を着て仮面をつけた金髪の男が長剣を振るい、黒装束の男たちと剣を交えてた。
仮面の男は3人相手に互角に渡り合っており、駆けつけたミラリアが見るには、かなりの腕だと思われた。
黒装束は無言で仮面の男に剣を振るっているが、こちらも手練れのようである。
ミラリアはどちらに味方するか迷ったが、白い革鎧の男の胸に、紅い盾の紋章を見つけて、この仮面の男に味方することにした。紅い盾の紋章は、中立国「エルバドル神聖国」のものであったからだ。
ミラリアは「そこの白騎士!加勢します」といい、背中から太刀を抜くと、黒装束の男たちに斬りかかった。
黒装束は、一人がミラリアに向かったが、その小刀はあっさりとかわされて、ミラリアの太刀での薙ぎの一閃で、胴斬りになり、上半身が、宙に舞い、地面に落ちた。どくどくと血が流れて、草原を赤く染める。
「なっ…」
黒装束も白騎士も、これに驚きを隠せずに驚愕の言葉をもらす。
ミラリアはさらに、もう一人の黒装束にも一合も許さず、袈裟斬りにしてのけたので、残った一人は、素早く逃げをうった。しかし、ミラリアは素早くこれに追いすがると、背中から容赦なく切り伏せた。
「大丈夫ですか?見ればエルバドルの方とお見受けします。私はミラリア。旅の者です」
白騎士はしばし茫然としていたが、やがて立ち直ると、ミラリアに礼を言う。
「私はエルバドルの白騎士シルヴァン。訳あって仮面は外せないが、助けてくれて礼を言う。見れば修道女のようだが、殺生などして、咎められないか?」
白騎士シルヴァンの言はもっともであり、ミラリアはこれに丁寧に返す。
「私は修道女ではありますが、同時に剣士の心得もあります。いざというとき、正しいと思われる時には、剣を振るうことにためらいはありません」
「それで私に味方してくれたのか、なら私も応えねばならないな。私は、ラクティアのルガート議長に話があって首都ラクティに向かっている。君さえよければ、同行してもらえないか?私には数人の供がいたが、ここに来るまでに全員がやられてしまった。勿論相応の礼はさせてもらう」
「どうやら何者かに狙われているようですね。心あたりはありませんか?」
ミラリアの問いに、白騎士シルヴァンはふう、とため息をついてこう説明した。
「私はラクティアへの密使だ。妨害しようとする者は少なからずいるだろう。北東のエクトール、北西のソルドガル、どこも野心がむき出しだ。私はその対策に駆り出されたとだけいっておこう。誓ってやましいところはないよ」
ミラリアにはこの言に嘘はないように見えた。そうして、こう返答した。
「私もラクティアのルガート議長に用があります。ついでに言えば路銀が少し心もとないのも事実。大枚は要りませんが、いくばくか都合していただけるなら、同行させて頂きます」
…こうして話はまとまり、ミラリアはシルヴァンから「これは少ないが前金だよ」と銀貨の袋を渡されて、街道に置いてきた荷物を回収すると、二人は、首都ラクティへの中継地点として、レダの街に向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる