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4:白騎士の告白
しおりを挟む仮面の白騎士シルヴァンと、太刀を背負った修道女ミラリアは、首都ラクティの門をくぐった。
華美な建物が立ち並ぶ、城下町の大通りを通って、二人は「議長ルガート」のいるラクティ城に向かった。
頑強そうな城の入り口に着くと、シルヴァンは仮面を外した。仮面を外すと、金髪碧眼のハンサムな、やや色白である男の一面を見せる。そして、槍を構える門衛に一言。
「ルガート議長にお会いしたい。エルバドルの第三王子ウェインが来たと取り次いで欲しい」
門衛は「はい。ウェイン王子ですね。少々お待ちください」と言って、たちまち伝令が城内を駆ける。
ミラリアは、感心した面持ちで、ウェインと本名を明かしたシルヴァンをのぞき込むと、
「エルバドルの第三王子だったんだ。しかも仮面とると結構イケてるし。なんで隠してたの?」
ウェインはこれにこう答える。
「王子としてでは、目立ちすぎるからね。お忍びの時は仮面をつけて、シルヴァンの名を使っていたんだ」
ウェインは、今度はミラリアを指さして言葉を返すように言う。
「君こそ、転生者などとは聞いていなかったぞ。しかもヘルヴァルドといえば、ひとかどの将軍じゃないか。どうりで剣の腕が立つはずだ」
ミラリアはそれに対して、ふう、と息をついた。
「あの時は使ったけど、この事は内密にね。前世がソルドガルの将軍なんて知れたら、嫁の貰い手が無くなっちゃうわ」
ぼやくように言うミラリアに、ウェインは真顔で告げる。
「その時は私がもらってあげるよ」
「えっと、いきなりどうしたのよ?」
ミラリアは困惑したが、ウェインはミラリアの手を取って言う。
「結果的に私は、君のおかげで、ダミーの密書をもったままソルドガルの刺客の手で命を落とす運命から救われた。しかも、君は、隠していた過去までも明かしてだ。だから、私は天に誓ったんだ。今度は私が君を守って見せると」
ミラリアは、これには少しドン引きした。
「え~と、聞いてなかったかしら?私は前世がソルドガルの将軍で、今は神に仕える修道女なんだけど…」
しかし、ウェインはあくまで真摯な表情を崩さずに言い募る。
「たまたま記憶が残っているだけで、前世なんてだれにでもあるさ。だから今の君はミラリアだ。それに、神に仕える修道女だと君は言うが、君の剣の腕前は、戦神の加護を得た聖女のように私には見えた。是非とも私と付き合ってもらいたい」
シルヴァンの熱心な告白は、ミラリアには本気に見えた。しかし、黒衣の剣士ヘルヴァルドの記憶も浅からぬミラリアにとって、それは受け入れ難いものでもあった。
「とにかく、私はまだ16才なんだから、そういう話は早すぎるわ。年も離れているみたいだし、ウェインなら、もっといい相手がいくらでも見つかるわよ」
「生憎、今の私には君しか見えないけどね」ウェインも引かない。
話が平行線なので、ミラリアはこういうことにした。
「じゃあ、とりあえず同行者。つまり相棒って事でどう?シルヴァン、いやウェインの剣の腕は確かだし、私も気持ち自体は嬉しいから」
ウェインは、意を得たりとばかりに顔を輝かせて言う。
「分かった。当面それでいこう。これから、よろしくお願いする」
話がまとまったところで、横合いから、城の衛兵が口を挟む。
「いい所を申し訳ありませんが、ルガート議長がお待ちかねです。案内しますので、執務室までついてきてもらえますか?」
こうして、ミラリアはウェインと共に取次ぎを経て、現ラクティア議長、かつてヘルヴァルドであった自分を討ち取った、元ラクティア解放軍リーダーの剣士ルガートと、再び顔を合わせる事となった。
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