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第六十三話
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シェザンヌは朝起きると、大きく背伸びをしてからヒルデレートに言った。
「ねぇヒルデレート?あのお茶を入れてくれる?」
その言葉を聞いたヒルデレートは笑顔でうなずいた。
「もちろんでございます。では、朝食後にご用意いたしますね。」
「ええ。今日は皆で朝食でしょう?さあ、支度をしなくては。」
シェザンヌは昨日の事など一日たてばすぐに忘れてしまったかのように笑顔である。
切り替え上手なシェザンヌであった。
顔を洗い着替えを済ませたシェザンヌは広間へと進み、皆にあいさつを済ませた。
アマリーの母は昨日から急遽仕事が入ったとのことで領を離れており、その為、エリックが主となってシェザンヌををもてなす準備をしていた。
朝食は領の特産を生かしたものばかりであり、シェザンヌの口に会えばいいがとエリックは思っていた。
アマリーはそんな張り切る弟の姿を見て、微笑ましく思っていた。
「どの料理も美味しいですよ。お口に会えばいいのですが。」
エリックがそう言うと、シェザンヌは昨日の事などなかったかのようににこにこと笑い、ぱくぱくと美味しそうに料理を口に運んでいた。
その食べっぷりにエリックはにこりと笑みを深め、テイラーやルルドも微笑ましく思っていた。
食事が終わった後、ヒルデレートはシェザンヌに言われたとおりにシェザンヌの好きなお茶の準備をしていたのだが、その香りが香った瞬間、テイラーははっと顔を上げ、ヒルデレートに言った。
「このお茶は?」
「シェザンヌお嬢様のお気に入りのお茶にございます。よろしければ皆様も召し上がりますか?」
その言葉を聞き、テイラーは立ち上がると茶葉の入った缶を開け、中の匂いを嗅いだ。
そして一瞬眉間にしわを寄せると、ルルドが立ち上がりヒルデレートに尋ねた。
「この茶葉はどこで?」
「こちらは私が調合したものにございます。知り合いの薬師に調合を教えてもらい、体調がよくなると聞きまして、昔からずっとシェザンヌ様のお気に入りでございます。」
ルルドはアマリーへ視線を向け、アマリーは立ち上がるとルルドから茶葉を見せてもらう。
ヒルデレートはその様子に首を傾げ、シェザンヌもどこか緊張感のある空気に驚いていたのだがエリックの言葉でシェザンヌは笑みを浮かべた。
「僕はお茶には詳しくはないから、話には加われないな。よければシェザンヌ様、一緒に庭へと散歩へ行きませんか?」
「良いですよ。シェザンヌはお散歩も好きです。」
「では参りましょう。」
エリックはアマリーに目配せをするとシェザンヌを連れて庭へと出た。
その様子を見ていたヒルデレートは焦ったように言う。
「あ、あの、申し訳ございませんが、お嬢様をおひとりにするわけにはございません。体調が悪くなってしまっては大変でございます。」
テイラーはその言葉に少し悲しげに目を伏せると、息を吐いてからヒルデレートに言った。
「それはできない。」
「何故でございます?私はお嬢様付の侍女でございます。」
アマリーはその様子に、ヒルデレートは分かっていないのだと悟ると、ルルドと目配せをして頷きあうと、ヒルデレートに尋ねた。
「この茶葉の調合はいつから?」
「これでございますか?えっと、お嬢様が六歳の頃より、、、ですが、毎年調合があっているかは薬師に尋ねております。」
その言葉を聞いたテイラーはゆっくりとした口調で言った。
「その薬師とは?」
「え?えっと、公爵家に出入りしておりますベイド・カーネリアンという王宮にも出入りしている者でございますが。」
その名を聞き、アマリーは眉間にしわを寄せた。
「ベイド・カーネリアン。」
「アマリーも知っているか?確かに王宮にも出入りはしているな。」
テイラーも同意するように頷いたのちに、ため息をつきながら言った。
「そして彼は、元々はエミリアーデ様付の薬師でもあった。」
「え?」
アマリーは驚きテイラーを見ると、テイラーは口元に手を置き、そして言った。
「関係あるかは分からないが、、、元々ハンス陛下の母君の妹であるシェザンヌの母はハンス陛下の母君が亡くなられてから、亡くなったのはエミリアーデのせいだと言っていたと聞いている。あと一つ、ブルドア家は第一王子派筆頭でもあった。」
アマリー、ルルド、テイラーは静かに顔を見合わせた。
ヒルデレートだけは蚊帳の外であり、早くシェザンヌを追っていきたいという雰囲気が感じ取れるがそれを良しと三人は言えなかった。
ヒルデレートの様子から、何も知らなかったことは明確である。
テイラーはアマリーとルルドに目配せをし、二人はその場から離れた。
ヒルデレートは、茶葉を見つめ、それからテイラーへと視線を移した。
「何なのですか?」
テイラーは、静かな口調で言った。
「昨日の晩、ルルド様に頼み、ヒルデレートからする香りについて教えてもらった。だが、現物を確かめるまでは俺も、確証はなかった。だが、、、。」
「この茶葉が、、、何か、なのですか?」
次第に、ヒルデレートの顔色が悪くなる。
「こ、これはシェザンヌ様のお気に入りの茶葉で、これを飲むと体が軽くなると、、、。」
「だが、これを飲んでからしばらくしてから体調が悪くなる。違うか?」
「え?」
ヒルデレートはそう言われ、過去を振り返る。
どうだった?
シェザンヌは、好んでこの茶を飲んだ。
いつも元気になると言っていた。
薬師に頼んだから、体にいいのだろうと信じていた。
ヒルデレートの顔色がどんどんと悪くなり、そして、ヒルデレートは体から力が抜けるようにすとんとその場にへたり込んだ。
そしてうつろな瞳でテイラーを見上げる。
「これは、、、、何なのですか?」
続く言葉を、テイラーはヒルデレートの絶望を移した瞳を見て言えなくなった。
「ねぇヒルデレート?あのお茶を入れてくれる?」
その言葉を聞いたヒルデレートは笑顔でうなずいた。
「もちろんでございます。では、朝食後にご用意いたしますね。」
「ええ。今日は皆で朝食でしょう?さあ、支度をしなくては。」
シェザンヌは昨日の事など一日たてばすぐに忘れてしまったかのように笑顔である。
切り替え上手なシェザンヌであった。
顔を洗い着替えを済ませたシェザンヌは広間へと進み、皆にあいさつを済ませた。
アマリーの母は昨日から急遽仕事が入ったとのことで領を離れており、その為、エリックが主となってシェザンヌををもてなす準備をしていた。
朝食は領の特産を生かしたものばかりであり、シェザンヌの口に会えばいいがとエリックは思っていた。
アマリーはそんな張り切る弟の姿を見て、微笑ましく思っていた。
「どの料理も美味しいですよ。お口に会えばいいのですが。」
エリックがそう言うと、シェザンヌは昨日の事などなかったかのようににこにこと笑い、ぱくぱくと美味しそうに料理を口に運んでいた。
その食べっぷりにエリックはにこりと笑みを深め、テイラーやルルドも微笑ましく思っていた。
食事が終わった後、ヒルデレートはシェザンヌに言われたとおりにシェザンヌの好きなお茶の準備をしていたのだが、その香りが香った瞬間、テイラーははっと顔を上げ、ヒルデレートに言った。
「このお茶は?」
「シェザンヌお嬢様のお気に入りのお茶にございます。よろしければ皆様も召し上がりますか?」
その言葉を聞き、テイラーは立ち上がると茶葉の入った缶を開け、中の匂いを嗅いだ。
そして一瞬眉間にしわを寄せると、ルルドが立ち上がりヒルデレートに尋ねた。
「この茶葉はどこで?」
「こちらは私が調合したものにございます。知り合いの薬師に調合を教えてもらい、体調がよくなると聞きまして、昔からずっとシェザンヌ様のお気に入りでございます。」
ルルドはアマリーへ視線を向け、アマリーは立ち上がるとルルドから茶葉を見せてもらう。
ヒルデレートはその様子に首を傾げ、シェザンヌもどこか緊張感のある空気に驚いていたのだがエリックの言葉でシェザンヌは笑みを浮かべた。
「僕はお茶には詳しくはないから、話には加われないな。よければシェザンヌ様、一緒に庭へと散歩へ行きませんか?」
「良いですよ。シェザンヌはお散歩も好きです。」
「では参りましょう。」
エリックはアマリーに目配せをするとシェザンヌを連れて庭へと出た。
その様子を見ていたヒルデレートは焦ったように言う。
「あ、あの、申し訳ございませんが、お嬢様をおひとりにするわけにはございません。体調が悪くなってしまっては大変でございます。」
テイラーはその言葉に少し悲しげに目を伏せると、息を吐いてからヒルデレートに言った。
「それはできない。」
「何故でございます?私はお嬢様付の侍女でございます。」
アマリーはその様子に、ヒルデレートは分かっていないのだと悟ると、ルルドと目配せをして頷きあうと、ヒルデレートに尋ねた。
「この茶葉の調合はいつから?」
「これでございますか?えっと、お嬢様が六歳の頃より、、、ですが、毎年調合があっているかは薬師に尋ねております。」
その言葉を聞いたテイラーはゆっくりとした口調で言った。
「その薬師とは?」
「え?えっと、公爵家に出入りしておりますベイド・カーネリアンという王宮にも出入りしている者でございますが。」
その名を聞き、アマリーは眉間にしわを寄せた。
「ベイド・カーネリアン。」
「アマリーも知っているか?確かに王宮にも出入りはしているな。」
テイラーも同意するように頷いたのちに、ため息をつきながら言った。
「そして彼は、元々はエミリアーデ様付の薬師でもあった。」
「え?」
アマリーは驚きテイラーを見ると、テイラーは口元に手を置き、そして言った。
「関係あるかは分からないが、、、元々ハンス陛下の母君の妹であるシェザンヌの母はハンス陛下の母君が亡くなられてから、亡くなったのはエミリアーデのせいだと言っていたと聞いている。あと一つ、ブルドア家は第一王子派筆頭でもあった。」
アマリー、ルルド、テイラーは静かに顔を見合わせた。
ヒルデレートだけは蚊帳の外であり、早くシェザンヌを追っていきたいという雰囲気が感じ取れるがそれを良しと三人は言えなかった。
ヒルデレートの様子から、何も知らなかったことは明確である。
テイラーはアマリーとルルドに目配せをし、二人はその場から離れた。
ヒルデレートは、茶葉を見つめ、それからテイラーへと視線を移した。
「何なのですか?」
テイラーは、静かな口調で言った。
「昨日の晩、ルルド様に頼み、ヒルデレートからする香りについて教えてもらった。だが、現物を確かめるまでは俺も、確証はなかった。だが、、、。」
「この茶葉が、、、何か、なのですか?」
次第に、ヒルデレートの顔色が悪くなる。
「こ、これはシェザンヌ様のお気に入りの茶葉で、これを飲むと体が軽くなると、、、。」
「だが、これを飲んでからしばらくしてから体調が悪くなる。違うか?」
「え?」
ヒルデレートはそう言われ、過去を振り返る。
どうだった?
シェザンヌは、好んでこの茶を飲んだ。
いつも元気になると言っていた。
薬師に頼んだから、体にいいのだろうと信じていた。
ヒルデレートの顔色がどんどんと悪くなり、そして、ヒルデレートは体から力が抜けるようにすとんとその場にへたり込んだ。
そしてうつろな瞳でテイラーを見上げる。
「これは、、、、何なのですか?」
続く言葉を、テイラーはヒルデレートの絶望を移した瞳を見て言えなくなった。
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