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14話
しおりを挟む イェシカと同じ赤色の髪に、蒼色の瞳が特徴的なロドニー。
大きな体躯に、捲ったシャツ袖からはたくましい筋肉が見える。
確か正騎士であっただろうから、腰には剣が差さっていた。
「イェシカから聞いています。廃妃となって出て行ったと……会えて良かった」
「ロドニーさん。なぜ、私に会いに?」
二歩下がり、警戒して問いかける。
呼応するように、護衛兵の皆が私の前に立つ。
なにせイェシカの兄が、このリエン地方にいきなりやって来た。
警戒せざるを得ないだろう。
「貴方にお会いする予定で探しておりました。まずはイェシカの件で謝罪をさせてもらうために」
「謝罪?」
「はい……妹が貴方から王妃という座を奪う形となった事を、心から謝罪します」
意外にも真摯な対応に驚くが、ロドニーが悪い訳ではない。
それに廃妃は私が望んだ事だから気にしないで欲しい。
と、伝えようとした時だった。
「しかし、やはり来て良かった。まさか廃妃になり乱心して、このような寂れた地方にて汚らしい仕事に従事なされていたなんて」
「汚い?」
「ええ、先程少し話が聞こえました。排泄物の処理方法など貴族令嬢がすべき事ではない。汚らわしい事はおやめください」
「民のため、自らのために街を綺麗にする事を汚らわしいと愚弄される覚えはないわ」
ロドニーの言葉は、街を綺麗にするために頑張った皆を馬鹿にされたようで不愉快だった。
しかし彼は私の言葉がおかしいとでも言いたげに、首を横に振る。
「おいたわしい。妃であったころの貴方はとても華やかでしたのに……やはり廃妃となった傷心で正常な判断ができていない」
「何を言っているの。私は––––」
「無理はする必要はありません。どうか今はその傷心を療養なさってください。俺もそのために来たのですから」
話を聞いてくれないとはこの事だ。
気遣いのつもりなのだろうが、自らの意見を曲げずに押し通せば迷惑なものだ。
「心配の気持ちは感謝しますが、貴方に私の事は関係ないわ」
「関係ない事などありません。俺は王命を受けて来たのですから」
「王命? なにを言って……」
「イェシカが申してきたんです、クドス陛下のご指示により……俺がラツィア様と、正式に婚約を結ぶ事が決められたと」
は……?
クドスが他家の婚約を勝手に決めた?
それも公爵家の令嬢との婚約を決めるなど、横暴どころの話ではない。
彼とて、そこまで傲慢ではなかったはずなのに。
「そのような王命、本当にクドスが?」
「えぇ、王妃となったイェシカから聞いております」
「……」
「今は家格に大きな溝がありますが、イェシカが王妃となった今。我が家は躍進するはずです。貴方の生家にも恩恵はあり、これは実りある結婚となるはずです」
「それを私が望んでいると?」
「どちらにせよ。王命もあるために貴方を俺の屋敷に連れ帰ります。再び傷つき、汚い環境にいるぐらいなら……俺の元で穏やかな日々を送りましょう」
背筋が凍える。
彼の態度に含まれた熱量、私に向けられる熱を帯びた瞳は異常だ。
「さぁ、ラツィア様。俺と共に来てください……やっと貴方と一緒になれる。ずっと望んでいた事が叶う」
「……」
「俺の元であれば、きっと幸せにしますか––––」
「無理。臭いのは勘弁だし、そんな王命を聞く気はないわ」
「は? え……くさ、なにを言って」
「あぁ、それ以上は近づかないで、お願いだから。本当に勘弁して」
ひとまずロドニーと距離をとる。
我慢していたが限界だ。
「貴方との婚約は必要ない。王命については父を通じて正式に抗議します」
「ラツィア様……俺に臭いだなんて。やはり貴方は乱心してしまったのか、そうだ……そうに決まっている。直ぐに俺が癒してさしあげますから安心してくださいね」
断る私に追い縋るように、手を伸ばしてくる。
それを見て護衛兵が即座に止めるが、ロドニーはこちらへと言葉を続ける。
「貴方のような美しき女性が、このようなみすぼらしい事をなさっていては駄目です」
「みすぼらしい?」
「王に捨てられた女性など惨めでしょう? せめて俺の元で安息をーー」
そんな言葉をロドニーが吐いた時だった。
ドンっと、ロドニーを突き飛ばすように小さな影が割り込む。
「取り消せよ、姉さんがやっている事がみすぼらしいはずがない」
「っ!! レルク」
なんとレルクが、ロドニーと私の間に割り込んだのだ。
「っと。弟君までいたのか。今は大人同士で話をしているから、君は向こうにいなさい」
「取り消せ。姉さんがやっている事が、あんたにみすぼらしいなんて言われていいはずがない!」
「レルク……」
「……姉さんを二度と馬鹿になんて、させない」
レルクの言葉に対して、ロドニーは子供を馬鹿にするように鼻で笑う。
そしてこの子を見もせずに私を見つめた。
「見てください、こんな幼い子供にまで……勘違いさせてしまっている。みすぼらしい行為を正当化させる程にね」
「レルクを馬鹿にしないで。この子が言っている事は正しいわ……貴方の侮辱はもう、これ以上許せません」
「……怒りを鎮めてください。やはり廃妃にされた貴方は乱心してしまったのですね。イェシカが言っていた通りに、俺の元でその心を取り戻すべきだ」
再び私へと手を伸ばすロドニーの手を、レルクがジャンプして振り払う。
その仕草が腹立たしかったのか、ロドニーはようやくこの子を見つめた。
「邪魔をしないでほしい。俺は君の姉君と……正式な婚約を結ぶのは決定事項だ」
「姉さんが断っているだろ。しつこいんだよ、あんた」
「邪魔だと言っている。子供がでしゃばらずに、家に帰って母親にでも甘えてろ」
プチンと、何かが切れた気がした。
まるで話も聞かずに、レルクさえ馬鹿にしたロドニー。
加えて今も私を連れて行こうとする凶行。
もういいや、こんな人をわざわざ丁寧に応対する必要もないか。
「いい加減にしなさい。ロドニー」
私は護衛兵達を見つめ、小さく頷く。
途端に彼らは理解したのか、私とレルクを守る陣形から、ロドニーへと向かい出す。
「王命など関係ない。私はリエン地方領主代理として権限を行使する」
「なにをっ……」
「護衛のみなさん。我が弟を侮辱し、加えてリエン地方の復興を阻害する彼の拘束を命じます」
「承りました。お嬢様!」
「やっと命令してくださりましたな」
護衛兵達が待ってましたとばかりに、ロドニーへと迫る。
彼はうろたえ、護衛兵達へと叫んだ。
「下がれ、君たちは俺が……王妃となったイェシカの兄であり、王命の下での行為だと知って止める気かい?」
「関係ないな。我らが主君はラツィア様と、レルク様だけだ」
護衛兵達は止まらない。
私達を守るため、自らの責務を全うするために動きだす。
そんな彼らにロドニーは、腰に差した剣を抜き払って叫んだ。
「俺が正騎士である事も知らないのか? 一介の雇われ兵ごときに止められるとでもーー」
「うるせぇ。黙ってろ」
「な……あぐっ!」
言いかけたロドニーの剣を手で掴み、血を流しながらも護衛兵が拳を振り抜く。
硬い拳が彼の頬を打ち砕き、怯む間もなく頭を掴んで膝蹴りへと移行した。
勝負はその一瞬で終わってロドニーは気絶したが……護衛兵は無表情で淡々と拳を振り抜く。
「はい、止めて。拘束しておきなさい」
「わかりました、お嬢様」
勝負は一瞬だったが、この結果は当然でもある。
ロドニーは訓練された軍の一員である正騎士だが、私達の護衛達は公爵家が自ら私財を投じて雇う傭兵でもある。
戦場を渡り歩き、自らの実力を見込まれて特別に雇われた兵。
加えて彼らは、私の幼少期から今もずっと雇われている程に信頼されている実力者達。
たった一人の騎士相手に対して、それほど苦労はしない。
「ではお嬢様! この男は拘束しておきますね!」
「ええ、ありがとう」
普段は笑みを携えて、忠誠を誓って、明るい彼ら。
でも……ひとたび戦えと命じれば。
彼らは解き放たれた野犬となって、こちらが止めるまで噛み続ける。
恐ろしくも、頼りで信頼できる護衛兵。
そんな彼らが居る今、ロドニーを止める事など苦労はしない。
大きな体躯に、捲ったシャツ袖からはたくましい筋肉が見える。
確か正騎士であっただろうから、腰には剣が差さっていた。
「イェシカから聞いています。廃妃となって出て行ったと……会えて良かった」
「ロドニーさん。なぜ、私に会いに?」
二歩下がり、警戒して問いかける。
呼応するように、護衛兵の皆が私の前に立つ。
なにせイェシカの兄が、このリエン地方にいきなりやって来た。
警戒せざるを得ないだろう。
「貴方にお会いする予定で探しておりました。まずはイェシカの件で謝罪をさせてもらうために」
「謝罪?」
「はい……妹が貴方から王妃という座を奪う形となった事を、心から謝罪します」
意外にも真摯な対応に驚くが、ロドニーが悪い訳ではない。
それに廃妃は私が望んだ事だから気にしないで欲しい。
と、伝えようとした時だった。
「しかし、やはり来て良かった。まさか廃妃になり乱心して、このような寂れた地方にて汚らしい仕事に従事なされていたなんて」
「汚い?」
「ええ、先程少し話が聞こえました。排泄物の処理方法など貴族令嬢がすべき事ではない。汚らわしい事はおやめください」
「民のため、自らのために街を綺麗にする事を汚らわしいと愚弄される覚えはないわ」
ロドニーの言葉は、街を綺麗にするために頑張った皆を馬鹿にされたようで不愉快だった。
しかし彼は私の言葉がおかしいとでも言いたげに、首を横に振る。
「おいたわしい。妃であったころの貴方はとても華やかでしたのに……やはり廃妃となった傷心で正常な判断ができていない」
「何を言っているの。私は––––」
「無理はする必要はありません。どうか今はその傷心を療養なさってください。俺もそのために来たのですから」
話を聞いてくれないとはこの事だ。
気遣いのつもりなのだろうが、自らの意見を曲げずに押し通せば迷惑なものだ。
「心配の気持ちは感謝しますが、貴方に私の事は関係ないわ」
「関係ない事などありません。俺は王命を受けて来たのですから」
「王命? なにを言って……」
「イェシカが申してきたんです、クドス陛下のご指示により……俺がラツィア様と、正式に婚約を結ぶ事が決められたと」
は……?
クドスが他家の婚約を勝手に決めた?
それも公爵家の令嬢との婚約を決めるなど、横暴どころの話ではない。
彼とて、そこまで傲慢ではなかったはずなのに。
「そのような王命、本当にクドスが?」
「えぇ、王妃となったイェシカから聞いております」
「……」
「今は家格に大きな溝がありますが、イェシカが王妃となった今。我が家は躍進するはずです。貴方の生家にも恩恵はあり、これは実りある結婚となるはずです」
「それを私が望んでいると?」
「どちらにせよ。王命もあるために貴方を俺の屋敷に連れ帰ります。再び傷つき、汚い環境にいるぐらいなら……俺の元で穏やかな日々を送りましょう」
背筋が凍える。
彼の態度に含まれた熱量、私に向けられる熱を帯びた瞳は異常だ。
「さぁ、ラツィア様。俺と共に来てください……やっと貴方と一緒になれる。ずっと望んでいた事が叶う」
「……」
「俺の元であれば、きっと幸せにしますか––––」
「無理。臭いのは勘弁だし、そんな王命を聞く気はないわ」
「は? え……くさ、なにを言って」
「あぁ、それ以上は近づかないで、お願いだから。本当に勘弁して」
ひとまずロドニーと距離をとる。
我慢していたが限界だ。
「貴方との婚約は必要ない。王命については父を通じて正式に抗議します」
「ラツィア様……俺に臭いだなんて。やはり貴方は乱心してしまったのか、そうだ……そうに決まっている。直ぐに俺が癒してさしあげますから安心してくださいね」
断る私に追い縋るように、手を伸ばしてくる。
それを見て護衛兵が即座に止めるが、ロドニーはこちらへと言葉を続ける。
「貴方のような美しき女性が、このようなみすぼらしい事をなさっていては駄目です」
「みすぼらしい?」
「王に捨てられた女性など惨めでしょう? せめて俺の元で安息をーー」
そんな言葉をロドニーが吐いた時だった。
ドンっと、ロドニーを突き飛ばすように小さな影が割り込む。
「取り消せよ、姉さんがやっている事がみすぼらしいはずがない」
「っ!! レルク」
なんとレルクが、ロドニーと私の間に割り込んだのだ。
「っと。弟君までいたのか。今は大人同士で話をしているから、君は向こうにいなさい」
「取り消せ。姉さんがやっている事が、あんたにみすぼらしいなんて言われていいはずがない!」
「レルク……」
「……姉さんを二度と馬鹿になんて、させない」
レルクの言葉に対して、ロドニーは子供を馬鹿にするように鼻で笑う。
そしてこの子を見もせずに私を見つめた。
「見てください、こんな幼い子供にまで……勘違いさせてしまっている。みすぼらしい行為を正当化させる程にね」
「レルクを馬鹿にしないで。この子が言っている事は正しいわ……貴方の侮辱はもう、これ以上許せません」
「……怒りを鎮めてください。やはり廃妃にされた貴方は乱心してしまったのですね。イェシカが言っていた通りに、俺の元でその心を取り戻すべきだ」
再び私へと手を伸ばすロドニーの手を、レルクがジャンプして振り払う。
その仕草が腹立たしかったのか、ロドニーはようやくこの子を見つめた。
「邪魔をしないでほしい。俺は君の姉君と……正式な婚約を結ぶのは決定事項だ」
「姉さんが断っているだろ。しつこいんだよ、あんた」
「邪魔だと言っている。子供がでしゃばらずに、家に帰って母親にでも甘えてろ」
プチンと、何かが切れた気がした。
まるで話も聞かずに、レルクさえ馬鹿にしたロドニー。
加えて今も私を連れて行こうとする凶行。
もういいや、こんな人をわざわざ丁寧に応対する必要もないか。
「いい加減にしなさい。ロドニー」
私は護衛兵達を見つめ、小さく頷く。
途端に彼らは理解したのか、私とレルクを守る陣形から、ロドニーへと向かい出す。
「王命など関係ない。私はリエン地方領主代理として権限を行使する」
「なにをっ……」
「護衛のみなさん。我が弟を侮辱し、加えてリエン地方の復興を阻害する彼の拘束を命じます」
「承りました。お嬢様!」
「やっと命令してくださりましたな」
護衛兵達が待ってましたとばかりに、ロドニーへと迫る。
彼はうろたえ、護衛兵達へと叫んだ。
「下がれ、君たちは俺が……王妃となったイェシカの兄であり、王命の下での行為だと知って止める気かい?」
「関係ないな。我らが主君はラツィア様と、レルク様だけだ」
護衛兵達は止まらない。
私達を守るため、自らの責務を全うするために動きだす。
そんな彼らにロドニーは、腰に差した剣を抜き払って叫んだ。
「俺が正騎士である事も知らないのか? 一介の雇われ兵ごときに止められるとでもーー」
「うるせぇ。黙ってろ」
「な……あぐっ!」
言いかけたロドニーの剣を手で掴み、血を流しながらも護衛兵が拳を振り抜く。
硬い拳が彼の頬を打ち砕き、怯む間もなく頭を掴んで膝蹴りへと移行した。
勝負はその一瞬で終わってロドニーは気絶したが……護衛兵は無表情で淡々と拳を振り抜く。
「はい、止めて。拘束しておきなさい」
「わかりました、お嬢様」
勝負は一瞬だったが、この結果は当然でもある。
ロドニーは訓練された軍の一員である正騎士だが、私達の護衛達は公爵家が自ら私財を投じて雇う傭兵でもある。
戦場を渡り歩き、自らの実力を見込まれて特別に雇われた兵。
加えて彼らは、私の幼少期から今もずっと雇われている程に信頼されている実力者達。
たった一人の騎士相手に対して、それほど苦労はしない。
「ではお嬢様! この男は拘束しておきますね!」
「ええ、ありがとう」
普段は笑みを携えて、忠誠を誓って、明るい彼ら。
でも……ひとたび戦えと命じれば。
彼らは解き放たれた野犬となって、こちらが止めるまで噛み続ける。
恐ろしくも、頼りで信頼できる護衛兵。
そんな彼らが居る今、ロドニーを止める事など苦労はしない。
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