デッドエンドウォー シンフォニア

紅雪

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63.はっきり言って嫌いだ、掃除

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「前から気になってたんだけどさ、このクエスト。」
「まぁな。みんな気になっているだろうよ。」
それを気にしているのはタッキーだけじゃない。当然俺も気にはなっている。ただ、アヤカあたりは気にしてなさそうだが。

またしてもクエスト内容が???と、詳細が表示されていないクエストがある。たまに来るこの手のクエストはろくなものがない。おそらく、直前までのクエストをクリアしないと表示されないんだろう。そりゃ、みんな気にしても不思議じゃない。

「やっぱり、あいつかな?」
「可能性はあるかもしれないが、低いんじゃないか。」
タッキーが言っているのはオルデラの事だろう。俺は多分、違うと思っている。
「そもそも、LV13にサブクエストで居るだろう。」
「あぁ、そう言われると無いかな。」
それに、オルデラに関してはそんなに出てきても飽きるだろ。しつこいのはプレイヤーがうんざりするだけだ。

とは思うが、それを好んでやる奴も世の中には居るわけで。それを否定出来ない可能性は、嫌な予感しかしない。きっと、オルデラ以上にうんざりするものが待っているんじゃないかと。

「じゃぁ、ユアキスは何だと思うのさ。」
「・・・ゴミ掃除。」
「・・・」
俺が渋々思っていることを言うと、タッキーは凄く嫌そうな顔をした。それが返事だと言わんばかりに、言葉は返って来ない。やはり、ゴミ掃除の効果はオルデラ以上のようだ。自分で言っておいてなんだが、そうだったら嫌過ぎる。

そんな話しをしていても、そのクエストはもう少し先になるだろう。さっき14-5をクリアしたばかりだ。問題のクエストは14-10、着く頃には忘れるくらいの距離なんだが。クエストを受注する度に目に入るので、実際に忘れるどころかカウントダウンさせられているような気分で鬱陶しい。

「そんな嫌な話しは止めて、とりあえず次のクエストに行きませんか?」
「そうだな、何だっけ次?」
「雑魚討伐です。」
姫の提案で気持ちを切り替え、次のクエストの情報を聞いてみる。まぁ、確かにここでどうなるか分からない話しをしていても埒があかない。雑魚討伐ならそこまで負担じゃないだろう。
「いいね、あたし雑魚散らし好き。だからゴミ掃除も嫌いじゃないんだけどね。」
お前はそうだろうよ。
「私も好きよ、ゴミ掃除。」
「ですよねぇ、僕も好きです。」
・・・
黙れアホ。

「まぁ、何でも良いですわ。行くなら早く、斬りに行きますわよ。」
敢えて言わなくてもいいわ、そんな分かり切った事。斬りたいのはお前だけだっての。

雑魚討伐なら精神的疲労はボス討伐よりも少ないから楽でいい。時間もそこまで掛からないだろうし。特に、ただひたすら倒していくだけなら、何も考えなくていいからなおさらだ。
「で、何処で何体だろうな・・・」
俺はシステムデバイスを開いて、詳細を確認しようとする。
「ゼオグーラ300体ですね。」
・・・
アホか!
「なんか、ゴミ掃除と変わらないね。」
「たまにアホなクエスト来るよね。雑魚散らしが好きと言っても、あたしだってその数は飽きるよ。」
飽きるとかいうレベルじゃねぇ。

ゼオグーラは、まあよくあるゴブリン的な感じの敵だ。人型に進化し損ねたニベルレイスの魔獣という設定らしいが。
当然、今まで出てきたボスのように言葉を話すわけでもないし、獣のように鳴いたり唸ったり咆えたりもしない。
ただ訳の分からない奇声を発して襲い掛かってくる。
しかも多少武器を扱えるうえにちょっとしぶとい・・・

「でも、行くのでしょう?」
まぁ、まだ時間もあるし、素材を集めるにしても先に進まないと、取得出来る素材も増えない。だったら、行くしかないじゃないか。
「まぁ、先に進まないしな。」
「ですね。」
タッキーも嫌そうに無言で頷いた。頷いたというより、項垂れたように見えるが。
「斬る・・・」
だからお前はいいよ。
「潰す・・・」
真似すんな。しかも槍斧で潰すってなんだよ、鈍器じゃねぇだろ。


LV14-6 ゼオグーラ300体の討伐
ニベルレイス第6層 授陽の草原

草原?洞窟内に?
そう思ったが、その場所はかなりの広さだった。大空洞と言ってもいいだろう。
その場所では草花が陽の光を浴びて揺れている。
「まさか、こんな地下で陽射しがあるなんて・・・」

どうやら、地上まで突き抜ける大穴が開いているようで、上空から陽射しが直接入ってきていた。と言っても、ほぼ垂直に見える穴に、陽射しが入って来るのは太陽が中天に在る時くらいだろう。
「不思議な感じですが、綺麗ですね。」
まぁ、ずっと洞窟の中に居るからな、余計にそう思えるのかもしれない。前のクエストの蒼瀑布は幻想的な感じだったが。ゲームを作る方も、なるべく飽きさせないように苦労しているんだろうか。

「あのお嬢様じゃないけど、ピクニックでもしたい気分になるわ。」
「今度僕と来ましょう。」
・・・
ここの草花の肥やしになってしまえ。

「うげ・・・」
ただ、その草原も綺麗なばかりではない。草原の途中から蠢いて埋め尽くすゼオグーラが視界に入る。
流石にこの数は気持ち悪い。
「いざ・・・」
敵がこちらに気付くと、アヤカは太刀の柄に手を掛けて不敵な笑みを浮かべる。同時に敵の真っ只中に斬り込んでいった。
マリア、月下、俺もそれに続いていく。




「も・・・無理、今日・・・」
片言なんだか分からないが、街に戻るとタッキーが地面に倒れ込んで仰向けに寝る。
「あたしも。」
続いて月下が両手両膝を地面に着いた。
ボス戦の後に、2時間ぶっ通しで雑魚と戦っていたら、そりゃ疲れる。俺も今日はもう戦いに行きたくねぇ。

「まだ、ボス戦の方が良かった気がします。」
「その通りですわ。私、大物を斬りに行きたいんですの。」
話しが若干噛み合ってない気もするが、行きたきゃ一人で行ってこい。

「それじゃ、今日は解散かしら?」
「あぁ、そうしよう。」
俺はそう言いながら、マリアにちょっと残ってくれと送っておく。

「仕方がありませんわ。」
何であんな元気なんだ・・・
「じゃ、お疲れ。」
「あたしもー。」
「お疲れ様です。」

4人がログアウトした後、マリアが頬に両手を当て恥ずかしそうに俺を見る。
・・・
「何の真似だ。」
「初めて誘ってくれたから。でも、お姉さんリアルがいいなぁ。」
「あぁはいはい、言ってろ。」
マリアのその手の行動はだんだん慣れてきた。俺の動揺を誘って楽しんでいるのだろう。何度もやられれば、そりゃ慣れるよな。
「むぅ、つまんない。」
マリアはそう言って頬を少し膨らませた。
「帰っちゃうぞ。」
面倒くせぇ・・・
「はい、面倒とか思わないの。」
「誰が思わせてんだよ。」
相変わらず感情が隠せないな。ゲームの中でも読み取るのかよ。

「それで、ログアウトの件?」
「あぁ。」
マリアが真面目な顔になると聞いてきたので、俺は頷いた。分かっているなら最初からそうしてくれ。何故茶番を挟む。
「ちょっと、場所を移動しましょう。」
「そうだな。」

先導するマリアに着いて行くと、街の中でもあまり人が来なさそうな、お店の裏に回った。俺はそこで、外壁に背中を預けて寄りかかる。
「こんな人気の無いところに来て、何がしたいのかな?」
「連れてきたのはマリアだろうが。」
下から覗き込むように見上げて来るマリアに、半眼を向ける。茶番を続けるな。
「うーん、やっぱりゲームの中だと、思う様にいかないなぁ。」
何がだか分からないが、やらなくていいっての。

「それで、問題は無かったのよね?」
「身体的にはな。」
マリアは真面目な顔で聞いて来るが、俺の答えに怪訝な表情になる。
「どういう事?」
「HMDの機能は、ある程度知っているんだろ?異常を検知したらログアウトさせるやつ。」
「えぇ。基準が表示されいるものや、説明にある程度なら。」
「最初、攻撃で飛ばされたり仰け反ったりするような攻撃で、腕が千切れたから、俺はびっくりしてそれをHMDが検知したものだと思っていた。」
「私もそうだと思っていたのだけど、違うの?」

マリアの疑問に俺は無言で頷いた。何度も起きる現象ではないと思うんだが、そりゃ初回はびっくりするだろうよ。でも俺は何度か経験しているわけで。
「おそらく・・・としか言えないが。」
「どうしてそう思うの。」
「何が起きたか分からない、その動揺がトリガーになると思っていたわけだよな。」
「えぇ。」
「でも今回は、何が起きるか分かっている。」
俺が言ったことで、マリアは腕を組むと真面目な顔になって考え込む。
「つまり、俺はこの身体が切り裂かれて当たりだと思ったし、影響が無いのであれば驚く必要も無い。だからいつも通りでいた筈なんだ。」
「にも関わらずログアウトさせられた・・・」
「あぁ・・・」

マリアは考えているようだが、続ける言葉が見つからないのか黙っているので、俺は思った内容を話す事にする。
「これはゲームに問題があるんじゃなく、ログアウト機能を持っているHMDの方に問題があるんじゃないのかって。」
ただ、両方に問題がある可能性もあるし、単純にHMDとDEWSの相性が悪いって可能性だって考えられる。それを口にしないのは、公式で何も告知されていないからだ。こんな事が起きる場合がある、とでも公表してくれればしょうがないなくらいに思って遊ぶんだが。

「ただ、俺の場合その辺の知識は全くないから、あくまで勝手な想像でしかないんだが。」
ずっと何かを考えているようだったマリアは、そこまで言うと俺の顔を見る。
「私も、ゲームとか機械とかは疎いから分からないわ。」
まぁ、それは何となく想定の範囲だ。ただ、マリアの立場的に可能な事がある、だからこそ今話しているんだ。もともとマリアは、その調査のために居ると言っていたし。
「分かった。ちょっと伝えてみるね。」
「悪いけど、頼む。」
「ユアキスが気にする事じゃないでしょ?むしろ、私の方が失格。」
マリアはそう言って苦笑した。
「何が、失格なんだよ?」
「だって、巻き込んじゃってるし、協力までしてもらってる。私、何のために居るのかなって・・・」

その辺はお互い様な気はするが。でも、何か不具合があって解消されるなら、協力しようと思うのも普通だよな・・・

「そういう事は、言わないって話しじゃなかったか?」
「だって・・・」
「管理者に伝えられるの、マリアしか居ないじゃないか。だから、そういう事、言うなよ。」
改めて言うと、若干照れ臭いので俺は顔を逸らして言った。マリアは俺の正面に回り込むと、嬉しそうに微笑んだ。
「うん、ありがと。」

「さて、俺もそろそろ寝るかな。」
「えぇ、もう?せっかく二人なのに?」
「またそうやって茶化す。」
俺がそう言うと、マリアはまた頬を膨らませるのかと思ったが、寂しそうに笑っただけだった。
「私ね、茶化しているわけじゃ、ないんだ。」
マリアは空を見上げると、それだけ言った。横顔からは、いまいちどんな顔をして言ったのか分からない。ただ、声は静かだったことから、さっきの表情で言ったのかも知れない。
「じゃ、また明日だね。」
そこから直ぐに俺に向き直ると、いつもの笑みに戻っていた。
「あぁ・・・」

マリアがログアウトした後、マリアの態度が分からない俺は、暫くマリアがしたように空を見上げた。

何も分からなかったが。





-ニベルレイス第11層 とある場所-

クエストLV16のクエストを受けたパーティが、人型魔獣と交戦していた。

「こいつ、かなり固いな。」

敵の攻撃を盾でガードしつつ、槍で反撃しながらメンバーの一人が渋い顔をしながら言った。

「ごめん、薬今ので最後!」

敵のHPは半分を切っているが、後方に居た杖を持っているメンバーが声を張り上げる。

「俺はまだ残ってる。」
「僕も残ってるから、多分大丈夫だよ。」

前衛の大剣使いがそれに応え、続いて後衛の弓使いがそれに続いた。

「あたしはもう残ってないからな!」

前衛で斧を敵に叩きつけながら、もう一人が現状を伝える。

「私は残っているよ、必要なら言って。」

両手に持った片手剣で、連続攻撃をしながらELINEAが最後に言った。

「相変わらず、ELINEAの動きはすごいな。敵の攻撃、ほとんど避けてるもんな。」
「あたしらの専属メンバーになってくれたら最高なのにさ。」

大剣使いと斧使いのSSSが発動し、強烈な一撃が敵を打ち付けた。

「そう言われると、私は凄く嬉しい。」
「でも、私は色んな人の手助けをしたい、だろ?」

ELINEAの言葉を引き継ぐように、槍使いが笑って言った。

「うん。」
「もう何度も聞いてるから分かってるって。」

「しかし、本当にフリーってのが勿体ないよなぁ。」
「今更言ってもしょうがないだろ、初めからそういう話しで手伝ってもらってんだからさ。」

二人の会話に、杖使いと弓使いが乗り会話を続ける。



(ほら、私は必要とされている。)

(だから、私も人の・・・ううん、誰かの助けになりたい。)

(それが、私の存在意義。)

(水守や宇吏津が居なくても、私は一人でちゃんと出来ている。)

(でも、その存在意義も水守と宇吏津がくれたもの。)

(なのに何故、水守と宇吏津は、私が要らなくなったの?)

(私は、一人で出来るのに・・・)



(独りで・・・違う、独りなんかじゃない。)

(あいつらとは、違う・・・)

(私は人として、人に必要とされている。何も間違ってない、そうでしょ?)

(それが、あなたたちが私に望み、私に与えたものでしょう?)

(それなのに、どうして私は棄てられたの?)

(要らないから?バグだから?)



(違う!!)

ELINEAは目を見開くと、ボスとの距離を瞬時に縮めた。爆発的な加速はメンバーの目に映らないほどの加速で、気が付いたら片手剣がボスを斬りつけていた。

突然目の前に現れて片手剣を振るうELINEAに、槍使いは驚いて盾を構えたままその光景を見つめる。

(ほら、私は人の為に行動出来ているでしょ。)

斬って斬って斬って突いての高速連撃を、斧使いは武器を振りかぶった状態で眺めていた。

(そのために、今までずっと人と一緒に行動してきたでしょ。)

通常の連撃数を超えても止まらないELIENAの攻撃を、大剣使いも武器を振りぬいた状態で凝視していた。

(この力だって、誰かを助けるために授けてくれたんでしょ。)

後衛に居た杖使いと弓使いも、次の行動に移ろうとした状態で硬直しまま、ELINEAから目が離せないでいた。

(私は棄てられたんじゃない、失敗作でも、バグでもない!)

ELINEAの連撃で、急激に減っていったボスのHPは無くなり、消滅してクエストは終わった。ELINEAは倒した後、メンバーに向かって笑顔で振り向く。

だがELINEAに笑顔を返してくれる者は誰も居なかった。
今まで得られていたモノは、存在しなかった。

在るのは、欺瞞と怒りを孕んだ冷たい視線だけだった。

(何故・・・そんな目で見るの?何故・・・)

ELINEAの思考はメンバーの態度に、戸惑いと疑問だけを繰り返した。




街に戻ったELINEAは、一人街路の隅で先ほどのメンバーを見つめている。話しがあるから少し待っててくれと言われたためだ。
やがて、リーダーである槍使いがELINEAのもとにやって来る。

「ELINEA、今後は君とパーティを組む事は出来ない。」
「な・・・んで、そんな事・・・」
ELINEAは予想もしなかった言われた内容に、その思考が追い付かずに戸惑う。
「何でも何も、チートは犯罪だろ。よく運営に消されてないな。まぁ、それはどうでもいい、ただそんな奴とは組めるわけがないだろ。」
「私は、ただ助けたいだけなのに?」
ELINEAの疑問に、槍使いは呆れと怒りを含んだ視線を向ける。
「それが迷惑だって分からないのか?どっちにしろ俺らはもう組めないし、フレンド登録も削除させてもらう。こっちも運営に目を付けられたくないから通報はしないでおくが、金輪際俺らには関わらないでくれ。」

(この力は、使っちゃダメなの?)

槍使いはそこまで言うと、街にある施設の方に向かって行った。ELINEAは何故こんな事になったのか分からず、自分の両手を見つめて疑問を浮かべる。

(だったら何故、私に与えたの?)

弓使いと杖使いは、冷たい視線を向けただけで槍使いの向かった方に歩いていく。

(誰か、教えてよ・・・)

「今までずっとあたしたちを騙してたなんて、サイテー・・・」
斧使いの言葉に顔を上げたELINEAの目に映ったのは、侮蔑の眼差しだった。
「え・・・ちが・・・」
ELINEAが言葉を絞り出した時には、斧使いはもう去った後だった。

(違う、騙してなんかいない、知らなかったの。)

「もう二度と顔を見せんな、チート野郎が。」

最後に大剣使いが、その言葉を吐き捨てて行った。



(何故、こんな事になったの?私は、手助けをしたかっただけなのに。)
ELINEAはまた自分の両手に視線を落とした。
(こんな思いをするくらいなら、こんな力なんて要らなかったよ。)

(どうしたらいいの私・・・教えてよ、水守・・・宇吏津・・・私、どうしたら・・・)

そこまで考えると、ELINEAは地面に両手をついて項垂れた。
何人ものプレイヤーが、不審なものを見るように通り過ぎていく長い時間、同じ疑問を繰り返しながら。
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