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第二章

6 とろける叱責 *

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 そのキスは、永遠に続くんじゃないかって思えた──。

 エリーはその肉厚の舌で俺を蕩けさせながら、俺を子供みたいに抱き上げた。俺もエリーの両頬を包み込みながら夢中でキスに応えていく。
 そのまま俺はバスルームに連れてこられ、脱衣室の白い石造りの手水台に座らされた。


「エリー、今日は酷くして……ねぇ、お願い……。」


 自分でもおかしいと思いながら、俺はエリーに征服されたくてどうしようもなかったんだ。


「ハヤト、そんなことを言ってはいけないよ。」


 その琥珀の双眸に宿る劣情は隠しきれず熱く熱くほとばしっているのに、エリーの手は優しく俺の服を脱がせていく。


「身体を繋げ合うのは、罰ではないだろう?」


 俺のしるしにかかる吐息に、ぶるりと身体が震えた。


「あ、でも、でも……俺……。」
「ハヤトは、なんでそんなに叱って欲しいんだい?」
「わかんない、わかんないけど……。」


 エリーが服を脱ぎ捨てる。次第に顕になる彼の身体……。しなやかな筋肉を纏う俺だけを征服するその身体を感じたい……。


「ハヤトはもしかして、この身体に私だけを刻みたいんじゃないかい?」


 エリーは俺の腰を少し持ち上げ残った服を全部脱がすと、俺の膝を大きく割り開きその間で膝を付いた。ゆっくりと内腿を這いあがる舌先の感触。


「ひゃっ、あ、んんっ……。」
「ハヤト?」
「あ、あ、エリー……。」


 彼の目の前で、自分の熱が芯を持ち反り立って行くのが、恥ずかしくて逃げたくなる。


「ハヤトの大切な存在がどれだけいようと、私は特別になれる?」


 エリーは立ち上がると、焦らすように腹に手を置き、臍の周りで指を遊ばせ始めた。


「ハヤトの特別に、してくれるかい?」


 直接の刺激はなにもない。なにもないのに、じわじわと快感が身体を支配してきて、俺は涙目になっていた。


「ハヤト?」
「するっ!もう、エリーだけ……。エリーだけなの……ッ!」


 その答えが合図だった。エリーは軽々とまた俺を抱き上げ、浴室へと歩き出す。


「それじゃ、今日は全部、口に出して教えて。嫌なこと、怖いこと、して欲しいこと……。」
「ぜ、んぶ?」
「そう……感じることも、全て……。それが、ハヤトへの罰だよ。」


 ヴェントナスの浴室には、天井にパイプが這わせてあって、そこから雨のようにお湯が降り注ぐ。エリーが調整した霧雨の降る下で俺の幸せな罰は始まった。
 俺をおろしたエリーがジッと見つめて言葉を促す。


「エリー、キスして……。うんと、激しく……。」
「激しく?」
「うん。」
「こう、かな?」


 いつも優しいエリーに、俺だけへの激しさを見せて欲しい。
 彼は蠱惑的に口元をゆるめると、俺の呼吸すら奪うくらいに唇を塞ぎ舌を吸い上げてきた。俺の身体を壁に押し付け腕をおろしたまま指を絡めてそこに貼り付ける。
 身体の力が全部甘い痺れに変わってしまうと、キスは唇を離れ首筋に痕を残した。鎖骨を啄み胸へと下りてくる熱い熱い吐息。


「あ、あ、気持ち、いい……。」
「そう、教えて。これは?」


 咥えられ口の中で弄ばれる小さな突起。エリーの手に包まれた俺の昂りは、その尖端をクニクニと指で捏ねられていた。


「んんっ、あっ、両方、いいっ!気持ちいいの……エリー……あ、あ、………あぁん!」


 まだ柔い刺激だけなのに、俺は耐えきれず一気に達してしまったんだ。


「こら、勝手にイったの?」
「あ、あ、ごめ……ごめんな、さい……。エリー……。」


 今までに感じたことのない、長い絶頂の余韻。


「ハヤト?次はどうして欲しい?」


 耳を喰まれ、低く色香に満ちた声を注ぎ込まれれば、もう俺の考える力などとろけきってしまった。


「……エリー、もう好きに……エリーの好きに、して……?」
「それが、ハヤトの願いなら。思う存分乱れてもらおうか……。」
「え?……あ、あぁ、んぅっ!」


 エリーの欲望が堰を切ったこのあと、俺はまともなことを口にしただろうか?
 好きとか、気持ちいいとか、喘ぎ声のはざまで言った気もする。
 エリーの指がクパクパと拡げた蕾は、彼の剛直を悦び受け入れ、熱の往復にうねり続けた。
 壁に手を付いていても、エリーの楔が突き上げる快感に膝が抜けそうになってしまう。


「あぁん!そんな、そんな刮げちゃ……あ、あ、そこ、ダメぇ……。」
「なんで?よくない?」
「よすぎちゃうのっ!あん、あん、エリー……!ひゃ、また、おっきく……あぁっ!」


 俺の胎内なかに与えられたエリーの欲がグチュグチュと掻き回されて淫美な音を響かせる。


「ハヤト、イく?」
「あ、あ、イくっ、イかせて……もう、……ん、あんっ。」
「あぁ、可愛い。あ、あ、一緒に、イこう……。」


 エリーは俺の腰をがっしりと掴み逃げ場を奪うと、ぐぷりとその長大な楔を押し込み俺の最奥をこじ開けた。
 今までに何度か教えこまれていたそこは、堪らない苦しさの後、終わらない絶頂を呼び込んでいく。


「ハヤト、ハヤト、私だけ、受け取ってくれっ!!」
「───っ!!」


 こんなはらの奥の奥を、差し出せるのはエリーだけ……。こんなに乱してくれるのも、愛で満たしてくれるのも……。


「……エリーだけだよ……。」
「……ああ。愛してる、ハヤト……。」


 まだくすぶる熱を分け合う優しいキスを交わし、俺たちはフッと笑い合う。
 エリーは腰が立たなくなった俺を全部綺麗にして、柔らかなローブで包みベッドに寝かせてくれた。


「俺、エリーにもらってばっかり……。」
「ハヤト?本気でそう思っているなら、私は怒るぞ。」


 俺の愛しい人は、優しすぎる眼差しでそう言った。


「……エリーに怒られるのは、しばらくいいや。」
「そうかい?それは残念だ。」


 朝方まで愛し合っていて昼過ぎにやっと起き出した俺たち。
 その日、王妃宮に呼び出された俺とエリーは、婚姻前に控えの間で堂々と致してしまったことを、ルートヴェート殿下にそれはそれは叱られたのだった……。









 
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